作戦
ユナに色々教えてもらったし‥‥後は、この条件に合う子を探せば‥‥。
「ミヨ」
「キャッ!なんだ‥‥局長」
運び屋の局長・メリルさんは、女性にしてかなりの実力者。だから局長になれた訳だけれど‥。
そんな局長がなぜ私に声をかけたんだろう?
ミヨが首を傾げていると局長が話し出した。
「最近、別の荷物が放ったらかしみたいだけど?」
「うっ‥‥」
そう言えば、最近あの謎の人に会ってみたくて他の荷物は、放ったらかし‥‥。
「あの噂が気になるのは、分かるけど‥‥あなたは、運び屋なんだから気をつけてよ」
「はい‥‥」
局長の言うとおり‥‥他の荷物が疎かになってたのは、事実。
しょうがない‥‥今日は、一旦止め‥‥‥ん?こっちに向かって来てるのは‥‥。
「局長の次は、ユナ?」
「人の話は、最後まで聞け」
「まだ続いてたんだ‥‥」
ため息を吐きつつミヨは、ユナの隣にいたノエルに視線を向けた。
「どうしてノエルまで?」
「私がミヨに言おうとした話の続きを話したんだ‥‥そしたら俺もって‥‥」
ユナは、うんざりした顔でノエルを見た。かなりしつこく頼まれたのだろう。
「それで、話の続きって?」
ミヨが聞くとユナは、周りを見回してから、
「ここじゃ人が多いから場所を移そう」
と言って先を歩く。
ノエルとミヨは、顔を見合わせてからユナについて行った。
ユナが二人を連れて着いたのは、ミヨの荷物がある倉庫だった。運び屋には、各自の荷物が仕舞える倉庫がある。ミヨが他の荷物を放って置いたのでギッシリ詰まっている。
「すごい量‥‥」
残っている荷物の量は、ノエルとユナを唖然とさせる程だった。
「とりあえずこれは、他の運び屋に頼もう‥‥じゃあ話の続きするけど」
「うん」
ユナは、一度咳払いをしてから立ったまま腕を組んだ。
「まず質問、ミヨは本当に謎の奴に会ってみたい?」
ミヨは、力強く頷く。それを見てユナは、続ける。
「じゃあ話を続ける。私も会って見たいからな‥‥だから作戦を考える事にした」
「作戦?」
ミヨが首を傾げる。ユナは、頷いてまた続けた。
「ああ、私の情報とミヨの社交性を使っての作戦」
「あれ?俺は?」
ノエルは、自分を指差す。
「特に役に立たないから別にいいよ」
――――ノエル‥‥なんか可哀想‥‥
心の中で同情するミヨ。でも言わない、ユナが怖いから。
「俺だって役に立つんだ!見てろよ!」
とノエルは、言ってどこかへと走って行った。ミヨは、呆然とその後姿を見つめていた。
ミヨとユナは、陰からノエルの様子を見ていた。ノエルは、運び屋(女性限定)にミヨの荷物を運んでくれるように頼んでいた。女性は、快く引き受けてくれた。やはり、ノエルの二枚目効果だろう。
「なんで見なきゃいけないんだ‥‥」
「だって、見てろよってノエルが‥‥」
ユナは、ため息を吐いてからノエルを見る。
「あれ、黙ってれば普通にかっこいいのにね」
「うん、基本ヘタレだし」
ノエル、二人にすごい言われよう。
「でも感謝しないとだね、おかげで荷物が減る」
「ミヨは、感謝するんだろうけど‥‥私には荷物を口実に話しかけてるとしか‥‥」
ユナに言われてミヨは、もう一度女性に話しかけているノエルを見た。
しばらく眺めていると荷物の事を頼んだ後にデートの約束までしていた。
それを見たユナは、呆れてため息を吐いた。
―――――あんな事してるからユナに苦手がられてるんだろうな
この時、ミヨは、心の中で確信した。
「作戦は、どういう順序でやるの?」
ミヨが質問したのでユナは、ホワイトボードにペンで何かを書く。
【一、さっき言った条件の子を荷物の中で捜す。
二、私が見つけ出した謎の奴に会いやすい道を通って配達する。
三、時間稼ぎをする為に出来るだけゆっくり進んで配達する。】
「これならかなりの確立で会えると思う‥‥でもいくら会ってみたいからって一人になるのだけは、避けて欲しい」
「うん、分かった」
そこへノエルが戻ってくる。ユナは、あからさまに嫌な顔をした。ノエルは、ホワイトボードの内容を見た。
「この順序で行くのか?」
「邪魔だけは、するなよ?」
「どれだけ俺は、トラブルメーカーなんだよ‥‥」
苦笑しながらユナに呟く。
「じゃあ‥‥この作戦を開始しよう!」
ミヨが言うとノエルもユナも頷いた。
一目でいい‥‥一目でいいから‥‥私は‥‥
あなたを見てみたい‥‥。