荷物狩り
「ねえ‥‥来るかな?」
「さっきも言ったけど、荷物を運んでる運び屋なんてまだこの辺りに多くいるからこの荷物が狙われる可能性なんて低い」
さっきから私は、ユナに6回も同じ質問をしている。その度、同じ返答をしてくれる。人間の荷物は、傷つけてはいけないので箱とかに入れる訳にもいかないので自分で歩かせる。荷物の手首には、赤いブレスレット。荷物には、どこかに必ず赤いブレスレットがある。人間・動物・物‥‥なんでもだ。
「可能性は、低くても0じゃないでしょ?」
「ミヨは、心配性なんだよ」
ユナは、そう言うけれど‥‥やっぱり怖い。度胸は、ある方だと思ったのにな‥‥。でも‥‥一番怖いのは、荷物のこの子だ。
茂みがガサガサと音を立てた。私達は、立ち止まる。ユナとノエルは、身構える。
「何かいる?」
「ずいぶん隠れるのが下手な奴だな」
「今回だけは、私も同感だ」
ノエルとユナは、犬猿の仲で普段は、こんなに意見が一致したりしない。それだけ真剣なんだ。
私は、荷物を守りつつ茂みを睨む。敵が出てきたのは、茂み‥‥‥ではなくて‥。
「ミヨ!!後ろ」
「え‥‥?」
ユナに叫ばれるまで気づかなかった。敵が出てきたのは‥‥私の後ろだ‥。
「伏せて!」
ユナに言われるままに私は、荷物と一緒に伏せた。
伏せたすぐ後に聞こえたのは、男の叫び声。
「大丈夫?」
ノエルが手を差し伸べてくれたので私は、その手を取る。私は、荷物を立たせた。
「今のは‥‥?」
荷物が怯えるようにユナに聞いた。
「荷物狩りをしている男だ。美人の荷物がいたから奪い取ろうと襲ったんだろうな‥‥あんなトラップまで仕掛けて」
ユナは、茂みの奥に手を突っ込む。そしてケージを取り出した。その中には、ネズミ。
「さっき奪った物で、使えると思ったんだろうな。トラップに」
「どうして荷物だと分かるんですか?」
また荷物は、ユナに聞いた。なんで私に聞いてくれないんだろう‥‥?
「その手首についてる赤のブレスレットは、荷物の証」
私もユナに言われるまで知らなかった。これが荷物の証。もしかして、この子私が知らないのを分かった上でユナに?‥‥エスパー?
「この辺りで休憩しよう」
ユナは、近くの岩の上に座った。私は、荷物の横に座る。ノエルは、食べ物を食べるのに夢中。
「荷物狩りってなんですか?」
またユナに聞くんだ‥‥そういえば荷物狩りって?
「荷物狩りって?キノコ狩りみたいな物?」
「ミヨは、ちょっと黙っていようか」
なんか知らないけど怒られた‥‥。
「荷物狩りって言うのは、その名の通り荷物を奪う事を言う。さっきの男みたいな者がやっていた事だ。荷物狩りをする奴でもっと厄介なのもいるけれどあなたは、心配しなくても大丈夫」
「そうですか‥‥」
ユナは、すごい。言葉で人を安心させる事が出来る。
「じゃあ出発しようか」
私がそう言って立ち上がるとユナやノエルも続いて立ち上がる。
村に着いて荷物を渡す。出てきたのは、太ったおじさんとヒステリックそうなおばさんと二人は、隠していたけれどもう一人‥‥‥‥
傷だらけの少女が光のない目でこちらを見ながら立っていた。
私達運び屋は‥‥届ける事しか出来ない‥‥。
帰る途中にユナが私の手を握ってきた。
「辛い?」
私は、頷いた。
「私達は‥‥届ける事しか出来ない‥‥」
涙声で私が言うとユナは、首を横に振った。
「私達は、届ける事が出来るんだよ」
その言葉に‥‥少なくとも私は‥‥‥救われた。
ユナの横顔を見ているともう片方の手をノエルに握られる。
「俺もいいだろ?」
「‥‥うん」
なんか‥‥顔が熱くなってきた‥‥。
「いい訳ないだろ‥‥男は、ミヨに簡単に触るなよ」
「ユナだって男みたいなもんだろ」
「お前のその根性ボコボコにしてやる」
ああ‥‥私の耳元で喧嘩しないでほしい。と言うか私のせいか?
「いい加減にしてーーーーーー!」
運び屋・拠点に戻るまでミヨの傍でずっとノエルとユナは、言い争っていたと言う‥‥。
帰りの道で私達は、言い合っていたので気づかなかった‥‥。
氷のように冷たい視線が、私達に向けられていたなんて‥‥。