探し人
「ユナが倒したあの男大丈夫かな?」
食堂で昨日の荷物狩りの事を思い出したのでユナに聞いてみた。
「気絶させただけだから大丈夫」
「そう‥‥」
昨日の荷物だった女の子から電話が来た。そこの娘さんと仲良くなったらしい。そして汚れていたのは、花壇の掃除をしていたから‥‥とんだ勘違い。
「ふふっ」
「急に笑ってどうかした?」
私が笑いをこぼしたのでユナが驚いた表情をした。
「ううん、なんでもない」
私は、食事に集中する事にした。
食堂を出てから、ふと思い出す。そして後ろを歩いているユナの方へ振り向く。
「結局、謎の人は、来なかったね」
「そういえば‥‥」
ユナも今気づいたのか首を傾げて考え始めた。
「二人で何してるんだ?」
「あっノエル」
ノエル、首を傾げて考え込んでいるユナに目を向けた。
「こいつ、何を考え込んでるんだ?」
「さあ?」
ただ謎の人が来なかったねって言っただけなのに‥‥なんでそんなに考え込んでるの?
今日、一番初めの配達の時でも、まだユナは、考えていた。
「謎の人の事で何か気になる事でもあるの?」
「ああ、どうして彼女は、狙われなかったんだろう?」
確かに‥‥可能性が低くても狙われる事位あるだろう。
「この間、聞いたら彼女を配達した近くでまた狙われたらしい。やっぱり顔を見ただけで立ち去った。私達がいた方へ‥‥ね」
「え‥‥?」
それじゃあ‥‥どうして彼女は?
「おーい‥‥」
私達を呼び止めたのは、運び屋の男だった。
「新しい情報だ。謎の奴が襲う女性には、共通点があった。ショートヘアーと言う事だ」
「わざわざありがとうございました」
運び屋の男は、それだけ言って戻って行った。
「そういえば‥‥ユナもショートヘアーだね」
私は、腰辺りまである茶髪のロング。ユナは、薄茶の髪のショートヘアー。
「ユナも髪伸ばせば少しは、女の子らしく‥‥」
「‥‥女の子らしく‥‥何?」
「いえ、なんでもありません。ごめんなさい」
ユナに女の子らしくしなさいとか女の子らしくなるよ、なんて言葉は、禁句みたいです。
「それに‥‥なんか誰かと約束した気がするんだ。髪を伸ばさないって‥‥誰とかは、忘れたけど」
そう言って荷物を持ってユナが先を歩き出す。私もそれに続いた。
私は、知りたいと思った。ユナと約束した相手の事を‥‥。
今回、私達の運ぶ荷物は、動物だ。それも犬。
「私‥‥犬苦手‥‥」
「え?大好きそうに見えるけど」
それよく言われるんだよね。でも苦手な物は、苦手。
「そう言うユナは?」
「嫌い」
うわー。ずいぶんキッパリと‥‥。そこまでキッパリしてると逆に清々しい。
「どうして嫌いな犬を持ってくれるの?」
ユナは、振り向く。
「私は、嫌いなだけだけどミヨは、苦手だから」
そう言うとまた前に向き直る。
意外と気遣ってくれてるんだ‥‥。
しばらく歩いていると前方からノエルが来た。
「ノエルも配達?」
「その帰り、俺もいい?」
「もちろん」
ユナを見るとすごい睨んでたけどもういいって言っちゃったし‥‥。
それから少し、ユナは、不機嫌だった。
ユナが地図を広げて見ている隙に私は、ノエルに聞いて見た。
「どうしてユナに嫌われてるの?」
「さあ?俺が初めて会った時いつもの調子で声かけてからあんな感じだな」
「初めて会った時、いつもの調子で?」
私が初めてノエルと会って、声をかけられた時、古い少女漫画に出てくる王子様の言う台詞を言われた。詳しくは、恥ずかしくて思い出したくもないけれど、当時は、かなりのプレイボーイ。
今は、まだましになったけどあの時の台詞でユナが声をかけられたとしたら‥‥。
ユナがノエルを嫌い‥‥苦手になってもおかしくない。なんかユナは、プレイボーイとか苦手そうだし‥軽いから。
「ミヨ、どうかした?」
私がユナを見つめていたらしくてユナに心配されてしまった。
「なんでもないよ」
犬を届け終わってから、忘れかけてたあの問題。謎の人が探しているのは、誰?
今の所、女性・荷物となっているの女性限定・ショートヘアー。この三つしか分かっていない。
「そんなに気になるのか?」
ノエルに聞かれて私は、頷く。
「だって特定の何かを探している人なんて今までいなかった」
「確かにそうだな」
ノエルが納得する。私は、ユナに視線を移す。
「ユナは、どう?」
「特に私に危害がないから気にならない」
「私が心配性過ぎるのかな?」
そうだよ、と言うようにノエルもユナも笑った。私もつられて笑った。
私達は、まだ気づいていなかった。
分かっている三つの情報の中の一つを誤解している事になんて‥‥。




