Survey log 1 「太陽系第三惑星へ」
三十六と申します。よろしくお願いいたします。
26'11/1にはSurvey log 1 ~3までを公開。
11/2~11/7までは1話づつ公開いたします。
その後は毎週土曜日公開いたします。
《地球人の皆さんへ》
宇宙人達の使っている言語には日本語に訳せないものが多くあります。地球人の皆さんにわかりやすいように、固有名詞などは現代の日本語に直してあります。
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「なぁ、もうこれくらいでいいんじゃないか?」
「さっきラボ船から足りないって言われたばかりじゃないですか。ヴァインさんも一緒に聞いてましたよね?」
「わかってるけど、聞いてみたくなる量だろ?」
「わかりますけど、サンプルなんだから、最低でも1種につき5個体くらいは揃えてって言われたじゃないですか。」
「確か、全て採り尽くしてしまってはならぬのであったな?」
「はい、ガツェ隊長。群生を見つけても5株しかない場合は採取は・・・ええと、2株までに留めるんでしたっけ?この星の循環調和のためですよね?」
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僕たちは太陽系第三惑星の調査に来ていた。
今は植物のサンプルを採取しているところだ。
採取したサンプルはサンプルケースに丁寧に詰めていて、後ほどラボ船に送る手筈となっている。
ラボ船は、僕たち実働部隊が来る1年以上前から太陽系第三惑星に到着していて、衛星軌道上から第三惑星の観察を続けていた。
しかし、ラボ船の乗組員にはこの星への降下の権限は与えられていなかったので、実物を調査分析する機会をじりじりしながら待っていたらしい。
おかげで僕たちは太陽系第三惑星に降りたと同時にサンプル採取の作業を延々と繰り返すこととなった。
「これ、食えるの?」
「この星の生き物は食べるそうですよ。僕たちの消化器官では無理ですが」
「うまそうだけどなぁ」
「ははは。ヴァイン、せっかく採取したサンプルにお前の齧った跡が残っていたとしたら、ラボ船のやつらに何を言われるかわからんぞ。さぁ、もうひと踏ん張りだ」
「「はっ!」」
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僕たちの母星で宇宙航行が始まってから、かなりの時間が経過して、今では宇宙旅行は家族単位や個人でも行ける気軽なレジャーとなっていた。
宇宙船のニューモデルも各社が毎年競うように発売していた。
自分で操縦する楽しみ重視で、大気圏突入の際の操縦桿に一気に負荷がかかる感触が大人気のスポーツタイプから、ファミリー向けでフルオートクルーズの居住空間重視の物まで選択肢は幅広い。
まぁ、僕の給料では中古の汎用タイプにも手が届かないんだけどさ。
ヴァインさんは随分先輩だけど、今、給料いくらなんだろ?
「あ!ヴァインさん!今、僕の服で手を拭きませんでした?やめてくださいよ」
「はいはい、口うるさいんだよなぁ、ママは」
「まぁた、ヴァインさんはそういうことばっかり言うんだから!」
「私もお前が妻というのはどうかと思うぞ」
「ガツェ隊長まで・・・」
「ですよねぇ。妻っていうなら、もっとこう、まろやかな筋肉がいいっすよね」
「・・・ヴァインさん、その手の動きはやめてください」
僕たちの任務は太陽系第三惑星を母星の人達の新しい安全な旅行先として開拓することだ。
そのためには、
この星の環境が旅行に適しているか?
安全に滞在できるか?
食べられるものはあるか?
など調べることは山ほどあるが、
”家族連れの一般市民でも安全に旅行できるのか?”
という検証も大きな仕事の1つだった。
家族用の小型宇宙船に3人で乗り込んで、実際の旅行と同じように航行する検証が必要なのはわかるけど、僕たちにこの任務を説明した上官は
「ガツェ隊長がパパで、ヴァインはやんちゃな息子で、お前さんがママってことだな」
なんて笑いながら肩を叩いてきたんだ。
酷いよなぁ。
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そんなわけで、僕たち実働部隊は、わざわざ家族用の小型宇宙船で、ラボ船とは別にこの星までやって来ていた。
僕たちが出発したのはラボ船よりも1年近く後なので、ラボ船への差し入れも大量に積んでいった。
「ようこそ、太陽系第三惑星へ、ガツェ隊長殿。噂に違わぬ素晴らしい筋肉ですね」
「実際にお目にかかるのは初めてですな、ラヴェル殿。任務、ご苦労様です。故郷の味をお持ちしましたよ」
「おお!これは嬉しい。家族の顔や声は通信で何とでもなりますが、こればっかりは!」
「ははは!合成ではないプロテインは久しぶりでしょう。皆さんも、新鮮なうちにどうぞ」
ラボ長のラヴェルさんも、後ろにズラリと並んだラボ船の職員たちも、めちゃくちゃ笑顔だった。
あんなに喜んでくれると、40人分の荷物の積み込み作業も、やって良かったって思えるね。
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「ラインの出力、落ちてるんじゃないか?」
「そうですか?おかしいな、設定はいじってないんだけどな」
僕たちは、昼間に採取した各種サンプルを、ラボ船に送る作業をしていた。
僕たちの宇宙船とラボ船の間は光のラインでつながっていて、ラインにサンプルケースを押し付けるようにすると、サンプルケースはするするとラボ船に向かって進んでいく。
難しいことは僕にはわからないけれど、サンプルケースには反射膜とか光帆とかが付いていて、これがラインから推進力を得ているんだって。
頭のいい人の脳みそって、どうなってるんだろうな。
今日、採取したサンプルはかなりの量になったから、ラインで送るだけでも、かなりの時間がかかった。
サンプルが一斉に届いたら、ラボ船は調査や解析作業で一気に賑やかになるのだろう。
反対に、僕たちの今日の仕事は一段落となる。
ヴァインさんの僕を呼ぶ声が聞こえる。
「おおい!ロシェ!飯だぞー!」
しっかり食べて、今日は早く寝る予定だ。
明日からは一番大事な、この星の支配階級の者達を探して駆け回らなければならないんだから。
《地球人の皆さんへ》
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