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御徒町樹里の冒険(改)  作者: 神村 律子
悪魔ムツリ編
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悪魔ムツリの逆襲 最終章

 海の上でうごめくその五つの頭を持つ龍は、それぞれの口からブレスを吐いています。


「わはは! もう終わりだ! お前ら全員、死にくされ!」


 悪魔ムツリは口汚く罵ります。さすが悪魔です。


「来るぞ、樹里。もしもに備え、動けぬ者を結界で守る。其方そなたは龍を」


 コンラが囁きます。


「はい、お姉ちゃん」


 樹里は杖を振るうと、飛翔しました。


「こらこら! お前は魔法使いをやめたのではなかったのか!? 何故飛べる?」


 ムツリがすかさず突っ込みます。


「この物語のヒロインだからに決まってるだろう、バカヤロウ!」


 元勇者のユウが暴言を吐き、すぐさまカジューの陰に隠れます。


「何だとお!? そんなデタラメが通用するかあ!」


 ムツリが龍を動かします。


「あの女を焼き払え!」


 火の龍が動き、樹里に迫ります。


「がああああ!」


 火の龍が大きな口を開け、まさに火を噴こうとした時でした。


「待て!」


 樹里が命じます。火の龍は口を閉じ、樹里を見ます。


「何だとオオ!?」


 ムツリは仰天しました。


 更に樹里は禁じ手を使います。


「伏せ」


 火の龍は頭を下げ、まるで樹里に服従したかのようです。


「……」


 ムツリはもはや言葉もありません。


「叔父上、事前調査が足りぬな。樹里は魔界の生物の頂点に立つ者なのだ。たとえ龍と言えども、樹里を攻撃する事はできぬ」


 コンラがニヤリとして言います。


「ぐううう……」


 ムツリは歯軋りしてコンラと樹里を見ました。


「ならばこの私が!」


 ムツリが樹里を睨みます。


「死ねええ!」


 ムツリは右手の爪を鋭く伸ばし、樹里に襲い掛かりました。


「が?」


 龍がムツリを睨みます。


「え?」


 ムツリの前に龍が立ちはだかりました。


「お、おい、お前の主人はこの私だぞ? 何をする気だ?」


 その時すでに五つの口のブレスは吐き出される寸前でした。


「う、うわあああ!」


 五種類のブレス(内訳:火、水、溶岩、竜巻、弓矢)がムツリを襲いました。


「ギャーッ!」


 ムツリはブレスをまともに食らい、空の彼方に飛ばされてしまいました。


「ハウス」


 樹里の命令で、龍は静かに元いた場所に消えて行きました。


「さすが樹里ちゃん、デタラメに強い……」


 ユウは目を見開いて呟きました。


「ムツリは死んだのでしょうか?」


 カジューがコンラに尋ねます。


「いや。あの男はこの程度で死にはしない。しばらくは大人しくしてくれようが、また仕掛けて来る」


 何故かコンラは嬉しそうです。


「また楽しめるぞ、カジュー」


「はあ」


 カジューは溜息を吐きました。


 


 こうして、悪魔ムツリとの戦いは呆気なく終わり、樹里達は帰国の途に着きました。


「キサガーナ王国には、異国の技師がおる。其方もそこで直してもらうがいい」


 コンラはからくり人形のスザーに言いました。


「ありがとうございます、コンラ様」


 スザーは剣士ゴウンの手を借り、立ち上がりました。


「皆、世話になった。心ばかりのもてなしをするゆえ、我が屋敷に立ち寄るが良い」


 コンラは一同に言いました。カオリンとユカリンがニヤッとしてカジューを見ます。


 何か企んでいるのでしょうか?


 コンラは何故か顔を赤らめて、


「カジューは料理の腕も超一流だ」


 言われたカジューが一番驚いています。コンラが今まで料理を誉めてくれた事がなかったからです。


「コンラ様……」


 カジューは号泣しました。


 こうしてコンラ達はキサガーナ王国に戻り、留守を守っていたノーナ、リク、ネコにゃんも交え、うたげを催しました。


 しかし、カジューの料理はすっかりコンラ仕様になっており、コンラと樹里は何ともなかったのですが、他の人たちは、「地獄が見えた」と言うほど酷い目に遭ったそうです。


 


 めでたし、めでたし。

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