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敵拠点への強襲

 「さてと・・・今度はどの辺りを制圧するか?」

 焔は、地図を手に次の行き場所をどこにしようか考えていた。

 「そうだね・・・このビギの町って所はどうだろう。今も町があるとは思えないけど、あるとしたら、敵が拠点に使っているかもしれない。或いは、敵が捕らえた人間の収容所にしている可能性もある。ここを次の目標にしたらどうだろう。」

 震は、ビギと書かれている場所を指して提案する。

 「ここか。場所もここから近いな。それに、こいつらがタイミングよく現れたことを考えても、ここに行くべきだろうな。」

 「・・・君もこの襲撃が、敵の作戦だと考えていたのか。」

 「あんなのたまたまの遭遇にしちゃ準備よすぎだろーが。たまたま・・・・姿を消した将軍が、たまたま・・・・姿を消した兵士を引き連れて、たまたま・・・・魔物の群れと戦った俺達を襲撃すると思うか?」

 (・・・本当に戦いに関してだけは・・・頭が回るな・・・。)

 「・・・まあ、君の言う通りだね。おそらく、僕達が占領した地域を解放していることを知っての待ち伏せだ。・・・予想していたより情報が敵に知られているみたいだ。」

 「となると、早めに行動した方がよさそうだな。こんなに暴れちまったんだからな。」

 焔は、ブレイが焼け野原にした所を見、すぐに行くべきだと提案した。

 「それはいいけど・・・君の消耗も心配だ。少し休んだ方がいい。もし、そこが敵の拠点なら、魔将軍が何人出てくるか分からない。あいつより強い奴がいる可能性もある。回復してからの方が・・・。」

 『なら、俺に任せろって。俺が一っ飛びしてブレスで・・・。』

 「いや、ブレイは駄目だ。」

 『ああ!?どういうことだ!?』

 「そこにいるのが敵だけなら、君の力で一気に殲滅すればいい。けど、捕まっている人間がいたらどうする気だい?まさか、捕虜まで焼き殺す気かい?」

 『!?』

 「君の馬鹿火力は使えない。残念だけど、町への攻撃はブレイ抜きでやろう。」

 『・・・。』

 「・・・。」

 震の言葉に、動揺の色を見せるブレイ。その表情は、何か嫌なことを思い出したようである。だが、震はそれに気付かず、ブレイ抜きで作戦を立てようとする。そんな二人を見ていた焔だが、ふと、何かを思いついたのか、二人に告げる。

 「・・・ブレイ。お前は俺達が合図するまで、敵を威圧だけ・・してくれ。」

 『?・・・威圧だけ・・・・・だと?』

 「?焔?」

 「ようは、あそこに捕虜がいなけりゃいいんだろう?・・・なら、いい方法がある。」

 焔は、ニヤリと笑うと、震とブレイに自身の作戦を話す。それを聞いて、震は驚愕するのだった。


 「・・・ここがいいな。」

 焔と震は、ビギの町と呼ばれた町の外にいた。町の周囲は、高い城壁で囲まれ、中の様子は窺えなかった。だが、城壁の中からは夥しい声が聞こえていた。かなり混乱しているのは、見えなくても分かった。

 「・・・本当にやるのかい?リスクが高すぎる。せめて、もう少し休んだ方がいい。」

 「知ってるか?体力付けるためには、あえて自分の身体を追い込むんだぜ。・・・このくらいがいいんだよ。」

 「・・・体育会系の発想だ。そんな精神論、僕は容認できないね。」

 「・・・さて、やるか。【サモン・サラマンダー】!」

 焔は、サラマンダーを召喚する。

 『おお、俺の出番だな!何すりゃいい?』

 「この壁に穴開けて通れるようにしてくれ。中に捕まってる奴がいるか探しに行かないといけねーんだ。」

 『分かった。こんな壁、俺の身体で融かしてやるぜ!』

 「溶かした後は、適当に暴れまわってくれ。ただし、焼くなよ。あくまで肉弾戦だけで戦ってくれ。」

 『ブレスも【火炎蜥蜴サラマンダーの鎧】も使うな、か。』

 「できねーのか?」

 『できないだと?俺を誰だと思ってる?神の守護者だったんだぞ。できるに決まってる。』

 「じゃあ、頼むぜ。今からブレイに囮になってもらう。その隙にやってくれ。」

 『神を囮にするとは・・・お前本当に面白いな!気に入ったぜ!』

 サラマンダーは、城壁に向き合うと、口からブレスを吐いた。城壁は簡単に融けていき、向こう側に通じる穴が開いた。

 『開いたぞ。』

 「よし、乗り込むぞ!」

 「やれやれ。体育会系に付き合うのは大変だ。」

 二人は、サラマンダーの開けた穴から町に突入するのだった。


 「な・・・何だあれは!?」

 焔達が突入する少し前、ビギの町の警備を担当していた魔将軍は、突然の巨大な魔物の襲来に驚愕していた。その魔物は、全身が真っ赤なドラゴンで、炎がドラゴンの形をしているようだった。

 「・・・まさか・・・火竜ブレイか!?」

 「トーン様、何故、五大竜がこの拠点に!?」

 「・・・情報は正しかったようだ。既に、勇者共は火竜を従えていたのだ!」

 「・・・火竜がここにいるということは・・・先に出撃されたオーン様は・・・!」

 魔兵士は、少し前に勇者を迎撃すべく出撃した魔将軍とその軍勢のことを思い出す。トーンは、苦々しい面持ちで口を開く。

 「・・・死んだのだろう。でなければ、火竜がここに現れるはずがない!」

 「ど・・・どうするのですか!?五大竜を相手になどできません!」

 五大竜の襲来に焦る魔兵士。だが、トーンは冷静に指示を出す。

 「・・・捕虜を連れてこい。捕虜を盾にすれば、勇者も迂闊に攻撃はできまい。そもそも、火竜がすぐに攻撃してこない時点で、奴らは捕虜への攻撃を危惧しているのは明白だ。」

 「なるほど・・・!」

 「すぐに捕虜を城壁の上に並べろ。手向かえば、奴らの命はないとな。」

 「はっ!直ちに!」

 魔兵士はトーンの命を受け、捕虜を閉じ込めているの場所へと向かう。

 「・・・しかし、ここまで堂々と現れるとは・・・不敵な奴らだ。」

 トーンは、ブレイを忌々しそうに睨み付ける。一方のブレイは、退屈そうな様子で上空を飛行していた。

 それからしばらくして、トーンはブレイの動きが不自然であることに気付く。

 (・・・おかしい。何故、何もしてこない?捕虜を気にしているのなら、救出のために何かしら動きがあるはずだ。そもそも、ブレイの背には誰も乗っていない。勇者はどこに・・・?)

 「・・・!しまった!これは罠だ!」

 その時、町の中で声が上がる。それは、ブレイに困惑と恐怖するものとは違い、別の何かが襲撃したものであった。

 「・・・謀られた・・・!」

 敵の狙いに気付いたトーンは、怒りの形相で町へときびすを返すのだった。

一部修正しました。ブレイが人的被害を考慮するよう変更しました。

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