強敵!ジュエルゴーレム現る
「待っていたぞ、勇者共!」
魔将軍の一人が剣を抜き、不敵に告げる。
「随分と好き勝手暴れてくれたようだが、それもここまでだ!」
その隣の魔将軍が、手に持つ槍を構えて告げる。
「お前達の命、ヤミー様に献上する!大人しく殺されろ!」
最後の魔将軍が、大きな斧を振り回して告げる。
魔将軍達は、自分達が風太達を殺せると自信満々である。だが、風太は彼らの強さをおおよそ察していた。
「・・・ソウ。あいつらヴァサーゴより弱いよな。」
「うん。三人がかりでもヴァサーゴには勝てないよ。魔将軍は力の差が激しいからね。強いのは魔王に次ぐ実力者だけど、弱いのは君達でも簡単に倒せるよ。」
ソウも魔将軍達の強さを察しており、思わず苦笑する。
「そうか。・・・じゃあ、フェニックス達を使う必要はないな。」
風太は、ソード・オブ・フィードを構える。
『フェニックス。お前は待機だ。俺一人でやる。』
風太は【遠隔疎通】で、フェニックスに待機を命じる。
『了解した。』
「おお?武器出して何する気だ?まさか、俺達に挑もうって言う気じゃ・・・。」
馬鹿にする魔将軍達に対し、風太は一気に風魔法で加速して三人に接近する。
「!?」
「何!?」
「は・・・速い・・・!」
三人の魔将軍は、抵抗する間もなく首を切り落とされ、倒されていた。
「・・・。」
「・・・すごい!あっという間に三人も・・・!」
「・・・まあ、彼らはかませ犬だから当然だね。」
「?かませ犬って、どういう・・・?」
ソウの言葉に、渚は理解できないといった様子で首を傾げる。だが、風太は敵を片付けたというのに、警戒を解いていなかった。
「・・・おい、そこにいるんだろ。出てこい。」
風太はいきなり、誰もいない場所に声をかける。すると、いつからいたのか、そこには将軍がいたのだ。その魔将軍は、ヴァサーゴと同様の鎧を着、外見も彼と同じく角のない茶色の肌の人間の姿だった。見た目からして、先ほどの三人より格上であることが窺え知れた。
「!魔将軍!?いつからあそこに!?」
「隠蔽魔法で隠れていたんだよ。かなりうまくね。」
「・・・まさか気付くとはな。」
「こいつらを囮にして誤魔化したつもりだろうが、油断しすぎだろう。魔力が駄々漏れだ。」
「・・・魔力を流したのはついさっきだったんだが・・・それに気付くとはいい集中力だな!」
魔将軍は、嬉しそうな表情に変わると、剣を抜く。その剣は、刀身が真っ黒の禍々しいもので、一目で魔剣であると分かった。
「俺の名はオロバス。ヴァサーゴを倒したその力、俺に見せてみろ!」
オロバスは一気に風太に切りかかる。そのスピードに、風太は一瞬ギョッとするが、すぐにソード・オブ・フィードで防ぐ。
「・・・お前も俺と同じ風属性か・・・!」
「そうだ。しかし、あいつらをかませた時は驚いたぞ。お前も俺と同じ戦い方ができるとはな・・・!だが、お前と俺とは決定的な差がある!」
そう言うとオロバスは、剣に力を込めて押し始める。
「!」
「お前には経験が足りない!」
「ちぃ!」
風太は、一度距離を取ろうとするも、オロバスは、それを逃がさない。すぐにそれに反応して、風太を攻撃する。風太はソード・オブ・フィードで受け止め身を守るも、距離を取ることはできない。
「俺は、魔将軍になる前に様々な死線を潜り抜けてきた!己を鍛えるために幼い頃から鍛錬を積んできた!だが、お前にはそれがない!それがお前と俺の差だ!覆しようがないぞ!」
(・・・まずい・・・!基礎能力が違いすぎる!このままじゃ・・・やられる!)
「ソウ!風太を助けないと・・・!」
「駄目だ。」
風太の危機に、渚は魔法で援護しようとするもソウはそれを制する。
「どうして!?このままだと・・・!」
「君の魔法で援護しても、あいつの魔法でかき消されてしまうよ。君達二人がかりで戦ったとしても、勝てるかどうか分からない。あいつの強さは、ヴァサーゴより上だ。」
「・・・でも・・・!」
「まあ、風太に任せるんだ。君は、風太が指示を出した時に援護すればいい。」
「・・・。」
ソウの言葉に、渚は不満を覚えるものの、渋々従うのだった。
一方、風太の方は、相変わらず劣勢を強いられていた。ソード・オブ・フィードの力で身体能力は強化されているため、何とか攻撃をさばいてはいるものの、こちらからは一切攻撃はできなかった。
(・・・どうすればいい?・・・魔法を使うか?・・・駄目だ!そんな隙はない!・・・!そうだ!)
『フェニックス!ブレスで攻撃してくれ!』
風太は【遠隔疎通】で、フェニックスに攻撃を命じる。
『!危険だ!この距離で攻撃すれば、主も巻き込む!今まで攻撃しなかったのは、奴と近すぎるからだ!最悪、焼け死ぬ!』
『いいからやってくれ!』
『・・・了解した。火の鳥の息吹!』
フェニックスは、オロバスと風太に向けてブレスを放つ。
「!ちぃ!」
それを見たオロバスは、後ろに下がって回避する。風太の方も、後ろに下がってブレスを避ける。双方、ブレスによるダメージを受けることはなかった。
「・・・自分諸共攻撃させるとは・・・無茶苦茶な奴だな。」
「でも、お前でもフェニックスの炎は逃げるんだな。当然だよな。弱点なんだからな。フェニックス!奴を近付かせるな!焼き払え!」
『火の鳥の息吹!』
フェニックスは、オロバスにブレスを放つ。風太と距離が離れている今、躊躇う必要がないフェニックスは、一切加減のない攻撃を行う。オロバスは炎に呑み込まれ、姿が見えなくなった。
「やった!」
「凄い!やっぱり風太は・・・!」
「・・・いや、まだだよ。」
勝利を確信する風太と渚。だが、ソウはまだ決着がついていないことに気付いていた。
「甘いぞ、勇者!」
「!?」
なんと、炎の中からオロバスの声が聞こえてきた。
「あいつ・・・生きてるのか!?」
『あり得ない!これだけの炎を直撃して無事でいるわけが・・・!』
「テイマーが自分だけだと思うな!」
すると、炎を押しのけるように一体の魔物が姿を現す。それは、綺麗な赤色のゴーレムだった。
「!?何だあれは!?マグマゴーレムか!?」
『マグマゴーレム程度なら、私の炎で溶けるはず!あれは、マグマゴーレムではない!』
「・・・ジュエルゴーレムか。彼は、テイマーであると同時に、ゴーレム製作者のようだね。」
「・・・ソウ、あのゴーレムのことを知っているの?」
「ジュエルゴーレム。素材に宝石を使用して作られるゴーレムだよ。ランクはA。マグマゴーレムの比じゃない強力な魔物だよ。宝石に応じて、属性攻撃を無効化できるんだ。火属性を無効化しているから、素材はルビーを使っているね。」
「宝石もゴーレムになるのかよ!普通は銅とか鉄だろ!」
「ルビーゴーレムの前に、火属性の攻撃は通らない。いくらやっても無駄だ。」
「・・・フェニックス!一旦ブレスを止めろ!」
風太はブレスを止めるよう命じる。ブレスは止み、炎は消えた。
「渚!貫通力のある魔法で攻撃してくれ!水属性の魔法なら無効化できないはずだ!」
「分かった!」
渚は、オロバスに向けて魔法を放つ。
「【アクアレーザー】!」
中級の水属性魔法【アクアレーザー】。原理としては、水圧カッターのような魔法で、貫通力に優れており、固い岩でさえ貫いてしまうほどである。
【アクアレーザー】は、ルビーゴーレムに向かって一直線に飛んでいく。
「こいつでゴーレム諸共貫いてやる!」
「水か。ならこれだ!」
ルビーゴーレムに魔法が当たる直前、また一体のゴーレムが現れ、魔法を受け止めてしまう。そのゴーレムは、綺麗な青色の身体だった。
「受け止めた!?」
「・・・今度はサファイアゴーレムか。あれは水属性を無力化する。渚の魔法でも貫けない。」
「・・・なら、俺が砕いてやる!」
風太は、今度は自身の魔法を放つ。
「【エアロバースト】!」
【エアロバースト】が、サファイアゴーレムを砕かんと迫る。
「それにはこれだ!」
今度は、綺麗な緑色のゴーレムが現れ、魔法を遮ってしまう。
「おいおい・・・まだいるのかよ・・・!」
「エメラルドゴーレムか。風属性を無効化するゴーレムだよ。まさか、これほどまでジュエルゴーレムを使役しているなんてね。まるで宝石箱だね。」
「呑気なこと言ってる場合!?」
「・・・そうだね。ここは危ないね。」
「え?」
その時、渚とソウの目の前の地面から綺麗な黄色のゴーレムが飛び出し、二人に襲いかかる。
「!」
「おっと。」
ソウは渚を抱き寄せると、【短距離転移】を行い回避する。
「あ・・・ありがとう・・・。」
「どういたしまして。」
「渚!ソウ!大丈夫か!?」
「だ・・・大丈夫!」
「僕も平気だよ。この程度の【短距離転移】なら、そこまで疲れないから。」
「・・・でも、あのゴーレムは?」
「トパーズゴーレムだよ。土属性のジュエルゴーレムさ。」
「・・・くそ!これじゃあどの属性で攻めても防がれる!どうすればいい!」
さすがの風太も、属性無効化能力を持つ多様なジュエルゴーレムに、どうやって戦うべきか考えが浮かばない。
「ふふふ。では駄目押しだ!」
オロバスが手を上げると、地面からまた別のゴーレムが出てきた。今度出てきたゴーレムは、無色透明の光輝く身体をした、先ほどのゴーレム達よりも綺麗なゴーレムだった。
「・・・なんだ、あのゴーレムは・・・?」
「これぞ、最強のジュエルゴーレム、ダイヤモンドゴーレムだ!こいつは自体は光属性だが、四属性全ての攻撃を無力化し、物理攻撃にも高い耐性を持つ。お前でもどうしようもあるまい!」
「とうとうダイヤモンドかよ!宝石屋でもやってろ!」
「ははははは!これで終わりだ!全ゴーレム、奴らを始末しろ!」
オロバスの命令を受け、ジュエルゴーレム達は風太達へと迫っていく。風太達は、絶体絶命の危機に陥っていた。
こんなゴーレム実際に作るとしたら、いくらくらいになるでしょうか?