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赤羽焔対守護者サラマンダー

 突進してくるサラマンダーを、焔は大剣で勢いよく切り付ける。大剣は、鈍い音を立てて弾かれる。

 「いって~・・・!なんつー固さだ!」

 『俺の身体は、岩より頑丈だ!人間の作った剣なんかじゃ切り裂けねーぞ!」

 サラマンダーは、勢いを殺すことなく、焔に突進する。焔は、ギリギリのところで回避する。サラマンダーは、そのまま壁に激突する。激突された壁は、音を立てて崩れてしまう。

 「・・・マジかよ・・・!なんてパワーだ・・・!」

 『・・・よく避けたな。褒めてやるぜ。』

 壁に激突したサラマンダーは、何事もなかったかのように焔の方を振り向く。

 「・・・なんて奴だ・・・!壁にぶつかっても全然平気かよ・・・!この石頭が!」

 あまりの頑丈さに、焔は悪態を吐く。

 『オラオラ!さっきまでの威勢はどこ行った!?』

 サラマンダーは、再び焔に向かって突進する。焔は、それをかわすので精一杯だった。

 「・・・焔じゃ勝てないね。」

 震は、焔がこのままでは敗北すると見ていた。溶岩を住処にするサラマンダーは、外皮がとても強靭で、あんな剣では傷一つ付けることもできない。おまけに、サラマンダーには、火の攻撃は効かない。つまり、火属性の使い手で、正面から敵を打ち倒す戦闘スタイルの焔と相性が最悪なのだ。

 「あの身体にダメージを与えられるとすれば、弱点である水属性の攻撃かな・・・。」

 『いや、生半可な水では効果はないぞ。』

 「?どういうことだい、イフリート?」

 『いかに属性が有利であろうとも、あまりに力に開きがあれば、無意味なのだ。溶岩に一滴水を垂らしたところで、何の意味もなさないであろう。それと同様だ。それに、サラマンダーは本気になれば、全身から灼熱の炎を生み出し身に纏う【火炎蜥蜴サラマンダーの鎧】を使う。そうなれば、大抵の生き物は近付くこともできずに焼き尽くされる。低級な水魔法くらいでは、蒸発して届くこともない。』

 「・・・その技を使わないということは、焔に対して手加減して戦っているこということか。」

 イフリートからの説明で、サラマンダーと焔の実力差を再確認し、震は焔の勝算がないことを改めて認識する。

 一方、焔の方も負けっぱなしではない。隙を見て大剣で切り付けてはみた。今度は、身体強化魔法を使い、筋力を強化して。だが、それでもサラマンダーの外皮を傷付けることは叶わない。結局は弾かれてしまう。

 (くそ!筋力強化しても駄目かよ!固すぎんだろ!・・・物理が駄目なら魔法を使うか?だが、俺の属性じゃ、こいつにダメージ与えるなんてできねーし・・・!ああ!どうすりゃいいんだよ!)

 焔も、自分の戦い方では駄目なのは分かっていた。だが、他の戦い方などできるはずがなかった。

 『はははは!どうしたどうした?』

 サラマンダーは、勝ち誇った様子で突撃を繰り返す。焔は、回避するだけでやっとである。

 (畜生!どこか・・・どこか弱点はねーのか!?)

 「・・・!そうだ!」

 焔は、何を思ったのかサラマンダーに向かっていく。

 「!?焔!?」

 「自棄になったのか!?」

 『お?特攻か?だが、容赦はしねーぞ!』

 サラマンダーはスピードを緩めることなく、突進する。だが、不意に焔の姿が消える。

 『!?消えた!?』

 「そこだ!」

 焔の声がしたと同時に、サラマンダーは、腹部に痛みを感じる。

 『!てめぇ!』

 なんと、焔はサラマンダーの下に潜り込んだのだ。背中や頭は頑丈でも、腹は柔らかいと思い、焔は腹を攻撃できるよう下に潜り込んだのだ。

 「予感的中だぜ!」

 焔は、続けざまに腹を攻撃し続ける。サラマンダーは逃れようとするが、焔は筋力強化して足を掴むと。そのまま食い下がる。

 「オラオラオラ!」

 『こいつ・・・調子に乗りやがって!』

 『!いかん!人間!離れよ!』

 突然、サラマンダーの赤い身体が、さらに赤くなると同時に、全身から凄まじい炎が噴き出す。

 「!?身体から炎が!?」

 『【火炎蜥蜴サラマンダーの鎧】を使いおったか!そんなことをすれば、あの人間は死ぬぞ!』

 イフリートの慌てた様子に、風太と震は青ざめる。

 「!焔!離れろ!死ぬぞ!」

 「無理だ!・・・手遅れだ!」

 「大丈夫!エリアスの守りがあるから!」

 『!?エリアス・・・だと!?』

 「あちちちち!」

 サラマンダーの攻撃の熱さに、焔は堪らずサラマンダーの下から転がるように出てきた。見た感じ、服が少し焦げ、若干火傷を負っていたものの、それほどダメージを受けてはいなかった。

 「!焔!」

 「い・・・生きていた・・・!?」

 「し・・・死ぬかと思ったぜ・・・!」

 『し・・・信じられん!あの炎を浴びて生きているなど・・・!』

 焔が熱がりながらも、大してダメージを受けていない様子を見、驚愕するイフリートと風太と震。当然である。サラマンダーの【火炎蜥蜴サラマンダーの鎧】は、単なる防御技ではなく、周囲の敵を瞬時に焼き尽くす攻防一体の技なのだ。人間がくらえば、消し炭どころか蒸発してしまうのだ。無事で済むはずがないのだ。

 「ね、風太。私の言ったとおりでしょ。エリアスの加護があるから大丈夫だって。」

 動揺する風太達とは対照的に、渚は当然のような顔をする。

 「エリアスの加護は、暑い所でも快適に過ごせるようにするものじゃないの。本来の効果は、火属性への耐性を与えるのよ。」

 「だから、焔はあの程度で済んだのか・・・。」

 『・・・汝に尋ねる。汝は先ほど、エリアスと言ったが・・・。まさか、水竜エリアスのことか?』

 イフリートは、今まで見せたことのない畏まった表情で、渚に尋ねてきた。

 「はい。私は、エリアスの契約者です。」

 『!まさか・・・五大竜と既に契約していたとは・・・!』

 イフリートは、深々と頭を下げ、跪く。

 『・・・竜の契約者に対して、あのような非礼を・・・申し訳ございません。』

 「そ・・・そんな!頭を上げてください!私、気にしていません!」

 『・・・サラマンダー、もういいだろう!その者の力は、十分に分かっただろう!』

 イフリートは、サラマンダーに戦いをやめるよう制する。サラマンダーを包む炎が、徐々に弱まり、最終的には消えた。

 『・・・まさか、俺にこの技を使わせるとはな・・・悔しいが、お前を認めてやるよ。』

 「はあ!はあ!・・・死ぬかと思ったぜ・・・。」

 「焔、大丈夫か?」

 「・・・なんとかな。この程度の火傷で済んでよかったぜ・・・。」

 焔は、やれやれといった様子で、駆け寄ってきた風太にニヤリと笑う。

 『サラマンダー。どうやら、彼の者達は十分に資格のある者達だったようだ。・・・彼らは、五大竜の契約者だ。』

 『何!?マジか!?』

 イフリートの言葉が信じられないといった様子で、サラマンダーは風太達を見る。

 「・・・ああいや、契約しているのは、俺と渚だけだ。焔と震は、まだ契約していない。」

 『・・・既に二体の竜と契約を・・・!』

 『すげーじゃねーか!やっぱただ者じゃなかったんだな!』

 先ほどまでの緊張感が嘘のように消えていた。二人の守護者は、興味と畏敬の念をもって風太達を見るのだった。

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