二体の守護者
『お前らが、俺達を呼んだ人間か。・・・ん~?よく見るとガキじゃねーか。』
『童と思って侮るな、サラマンダー。ここまで来るということは、相応の力はあるのだろう。』
風太達を見る二体の守護者は、それぞれの考えを述べる。サラマンダーは、完全に風太達を子供だということで軽く見ているが、対してイフリートは、ここまで来た風太達に、彼なりに敬意を払っているかのように見えた。
『・・・で、何のために俺達を呼んだ?一応、フェニックスから聞いてはいるが、もう一度お前らの口から聞かせてくれねーか。』
「・・・俺達は、ヤミーと戦うために、五大竜の協力を得たいと考えている。そのために、お前達の神である、火竜ブレイの力が必要だ。」
「でもよ、ブレイの所に行く道がねーんだ。すると、近くの壁に、古代文字が彫られてたんだよ。」
「壁に掘られていた文字に、道は三体の守護者に守られていると書かれていて、守護者であるあなた達に会えば、通る方法が分かると思ったんです。」
「・・・君達がその方法を知っているなら、教えてほしい。」
サラマンダーに、風太達は守護者を求める理由を告げる。それを聞いて、先に口を開いたのは、イフリートだった。
『確かに、我らは神へと続く道を開けることができる。我ら三体の守護者に認められた者だけが、その道を開けることができるのだ。』
「じゃあ、お前達とフェニックスに認められれば、ブレイの所まで行けるんだな。」
『うむ。だが、簡単に認めることはできん。汝らは、竜の力をなんと心得ている?』
「・・・たった一つでも、世界を滅ぼしかねない凄まじい力だ。現に、ヤミーが暴れているだけで、この世界は無茶苦茶になっている。もし、本気で奴が動けば、確実に世界は終わる。」
『そうだ。五大竜の力は、世界を救うも滅ぼすも自在の力。確固たる意志と力に耐えうる強さを兼ね備えた者でなければ、力に溺れ、必ず世界に害をもたらす。意志薄弱な弱き者に渡すことなど誰ができよう。』
「・・・確かに。」
イフリートの言い分はよく分かる。世界を滅ぼしかねない力を、簡単に渡せばどうなるか。ロクでもない人間の手に渡れば、その人間が世界の脅威になるだろうことは火を見るよりも明らかだった。
『それによぉ、俺は、弱い奴に従う気はない。そんな奴に頭下げるなんて真っ平ごめんだ。神の力を使える以前の問題だぜ。そんな奴。』
イフリートの知的な理由とは逆の、実力主義を前面に押し出した理由を述べるサラマンダー。乱暴だが、神を守る守護者としては至極当然の発言である。風太は、彼らが単に嫌がらせで言っているのではないと感じた。
「でも、俺も真剣だ。俺は、ヤミーに自分の妹を攫われているんだ。助けるためには、五大竜の力がどうしても必要なんだ。・・・確かに、世界を救いたい気持ちはある。この世界の人達には、世話になった。でも、それ以前に、俺は、大事な家族を取り戻したい!そのためなら、俺は相手がヤミーだろうと、戦う!・・・あの時は、手も足も出せずに負けたけど、今度こそは!」
しっかりと二体を見る風太。臆することなく自分達に対して物言う彼の姿に、二体の守護者の雰囲気が変わる。
『・・・ヤミーに囚われた家族を取り戻す・・・。なるほど。漠然とした動機ではなく、自分の中に確固たる力を欲する動機があるのか。しかも、一度敗れてもなお諦めず挑むか。汝は期待できそうだ。』
『・・・それに、よーく見るとお前、相当強そうだな。属性は風か。俺達の方が有利だが、一対一ならお前は俺達に勝てるかもしれねーな。』
風太の決意に、イフリートは感心したのか、少しばかり表情が柔らかくなる。サラマンダーも同様に、風太の強さを感じ取ったのか、どこかウズウズした様子だった。だが、風太はサラマンダーの言葉に驚く。
「!俺の属性が分かるのか!?」
『ああ。俺は、サラマンダーでも特殊な個体だ。相手を見ると、そいつがどんな属性で、どんな戦い方が得意か、どれくらいつええかが、なんとなくだが分かんだよ。』
「それが、使徒の能力なのか?」
『ん~・・・分かんねーな。気が付いたら、この能力を持ってたからな。守護者になったからなのか、それとも生まれつきだったのか・・・。今となっちゃ分からねー。でも、イフリートもフェニックスも使えねーから、多分、生まれつきだったのかもな。』
サラマンダーは、自分のことを面白い話をするかのように話す。どうやら彼は、風太を気に入った様子である。
『では、他の者は何のため神の力を求める?単なる英雄願望か?それなら諦めよ。そのような浮ついた考えで戦い抜けるほど、戦いは甘くはない。それとも、この者同様、己の中に確固たる想いがあるのか?』
イフリートは、残る三人に、戦う動機を聞いてきた。
「私は、そんな願望ありません。それよりもっと、個人的な願望があるんです。・・・私は、私の大切な人の望みを叶えたいんです。」
『叶えたい?』
「私の大切な人は、苦しんでいます。大切な人がいなくなって。今の私は、それを埋めることなんてできません。・・・でも、私はそれでも彼を支えたい。できることなら、埋められる人間になりたい。」
『・・・その大切な人とは、汝の恋人か?』
「・・・まだ、恋人じゃありません。でも、絶対に恋人・・・いいえ、それより進んだ関係になるつもりです!」
『その者の名は?』
「そこにいる、緑川風太です。」
「ぶっ!?」
渚の大胆カミングアウトに、風太は思わずドキッとしてしまう。
「・・・渚・・・なんでこんなところでそんなこと言うんだ!?」
「え?どうして?イフリートが理由を聞いてきたから言ったんだけど?それに、私は、本気で風太の恋人になって、そのままゴールインする予定だから。」
「だから、ここで言うのか!?」
風太は、顔を真っ赤にし、渚に苦言を呈する。
『ははははは!惚れた男のためか!面白い理由だ!だが、浮ついた理由などではないな!汝の目には、何としても男をものにしたいという炎が見える!』
イフリートは、愉快なものを見たように笑う。厳格そうな表情が、完全に崩れていた。
『おうおう!頑張れよ、水使いの嬢ちゃん!そいつの伴侶になれるよう、俺も応援してるぜ!」
サラマンダーも、強さよりも渚の恋を応援する言葉を述べる。一方、風太の方は、赤らめた顔を伏せていた。
(・・・渚の奴・・・どんどん大胆で積極的になっているな・・・。・・・マジなんだろうな・・・ゴールインするってこと。)
『・・・次は汝だ。汝は何故力を欲する?』
イフリートは、さっきまでの破顔一笑から一転、厳格な表情に戻ると、今度は震に問いかける。
「僕は、この世界のことをもっと知りたいからだ。」
『この世界を知りたい?』
「僕達は、この世界の人間ではなく、異世界から来た。この世界には、僕の好奇心を刺激するものがいっぱいある。僕は、もっとこの世界のことを知りたい。でも、このままじゃヤミーとかいう奴に世界が壊されてしまう。そんなこと絶対に嫌だ。こんな面白い世界を壊されたくはない。」
『・・・この世界を面白い・・・。そんな風に言う者はおらんかったな。変わった男だ。』
イフリートは、興味深いものを見る目で震を見る。
『お前の属性は土か。お前は力より、魔法を使う戦いがうまそうだな。俺でも手こずりそうだ。』
サラマンダーも、震の強さに関しては、悪い印象を持たなかった。
『・・・さて、最後は汝だ。汝は何故力を求める?』
イフリートは、最後に残った焔に問いかける。
「ダチを助けるためだ。風太は俺のダチだ。そのダチが、妹を攫われて苦しんでいる。ダチが苦しんでいたら、支えるのがダチだ。それ以外に理由なんているか?」
『なんと単純な・・・。だが、真っ直ぐで曇りのない男だ。その言葉に一切の嘘偽りはないな。好感が持てる。』
イフリートは、単純だが、一切の曇りのない焔を気に入った様子で、好感が持てると告げる。
『・・・属性は、俺達と同じ火か。それなりに腕は立つみたいだが、強さは嬢ちゃんの未来の旦那の・・・風太だったか。そいつの方が強そうだな。』
一方のサラマンダーは、風太と比較して、焔の力量が心許ないと感じ、容赦なくそれを告げる。
「んだと!?勝手なこと言いやがって!弱いかどうか、自分で確かめりゃいいだろう!」
サラマンダーに子馬鹿にされた焔は、戦ってみなければ分からないと喧嘩腰で言う。
『・・・そうだな。やっぱやってみなけりゃ分からねーな!』
サラマンダーはそう言うと、溶岩から身体を完全に出す。
『イフリート。俺は俺で、勝手にやらせてもらうぜ。構わねーな?』
『好きにしろ。我の答えは既に出ている。』
『へへへ!それじゃあ行くぜ!死ぬんじゃねーぞ!』
イフリートから許可を得たサラマンダーは、焔に向かっていく。焔は、大剣を構える。
「焔!俺も手伝う・・・!」
加勢しようとする風太を、焔は制する。
「わりぃな。こいつは俺が直々に倒して認めさせてやるんだ。手を出すなよ・・・!」
焔は、風太の加勢を拒むと、サラマンダーに向かって行くのだった。
現段階での強さ
風太>渚=震>焔




