暗黒竜城にて
ここは、アナザーワールド三大大陸の一つ、ユニバス大陸。ワルド大陸の南に位置する荒廃した大陸で、人口は三大陸で最低、住んでいる人種も、生まれついて強靭な肉体を有する魔族が大半という過酷な大陸である。
そんなユニバス大陸の中央にある山に、禍々しい城がある。ここが、ヤミーの拠点、暗黒竜城である。元々はヤミーを封じる神殿があったが、邪教徒により制圧され、ヤミーの城に改造されてしまったのだ。
その暗黒竜城の最奥、玉座の間にヤミーはいた。ヤミーは立派な玉座に座り、下に控える四人の人間を見下ろしていた。その中には、アロンの姿があった。
「・・・この度の失態・・・誠に申し訳ありません・・・。・・・どのような処分でも・・・。」
アロンは跪き、震えながら自身の失態を詫びていた。
『・・・アロン。お前の失態を咎める気はない。お前は我が復活に一番貢献した者。簡単に切り捨てるつもりはない。また別に挽回の機会を与える。』
「・・・はっ。」
アロンは恭しく頭を下げる。
『・・・ベルゼ、ベリアル、ダイオス。お前達の方は順調か?』
ヤミーは他の三人の人間達を見る。彼らは全員、フードを被り、顔が見えなかった。
「はっ。五大竜の神殿の捜索の件、光竜の神殿を発見し、光竜を確保しました。」
『でかしたぞ。光竜セイクは、我の天敵ともいえる竜。真っ先に捕らえることができたのは喜ばしいことだ。後で、我の力で手駒としてくれる。』
「・・・ですが、未だに火竜と土竜の神殿が見つかりません。風竜は・・・奴は神殿を持たないため、一番発見が困難な竜ですが。必ずや見つけ出し、ヤミー様の元に跪かせて見せましょう。」
『期待しているぞ。我が忠実なる四人の魔王、四天王よ。』
ヤミーは配下にそう告げると、玉座から立ち上がり、後ろの垂れ幕を持ち上げる。
なんと、玉座の背後には、さらに広い空間があり、そこには、一体の竜が眠っていた。竜は、全身真っ黒の禍々しい竜で、全身ボロボロで朽ちていた。それは、眠っているというよりも、死体というのが適切だった。そう、その竜は、死んでいたのだ。
『・・・我が肉体の再生。まだかかるな。』
「はっ。占領地域に住む者達の嘆き、苦しみを集めておりますが、未だに規定値に達しておりません。さらなる締め付けを行う予定です。」
『うむ。五大竜の捜索と並行し、我が肉体の再生のため、多くの住む者達の苦しみを集めよ。さすれば失われた我が肉体も蘇ろう。』
「はっ!」
残る三人も恭しく頭を下げる。
『・・・創造神を超え、我がこの世の全てを支配する。誰にも邪魔はさせぬ。ふふふ・・・ははははは!』
ヤミーは、今までの人形のような表情から一転、不気味に笑う。そんなヤミーの影は、少女の姿ではなく、先ほど見えた竜の姿であった。