真白、大地に立つ
渚達が魔王と戦う時間まで一旦戻します。
ガン〇ムみたいなタイトルになってしまいました。一応、ファンタジーものなのに・・・。
「・・・これを使う時が来ましたね。ソウさんの言った通りです。」
真白は、巨大な人型の物体の前に立っていた。その物体は、SFに出てくるロボットに似ていた。大きさは2mほどで、そこまで大きくはなく、武装の類は見受けられなかった。
「念のために用意したけど、役に立ってよかったよ。・・・いや、喜ばしいことじゃないか。」
「でも、これがあれば、私も戦えます。これで私も、光を攫った敵に一矢報いることができます。この、ロボットゴーレムで。」
真白は、目の前のロボットゴーレムで戦えることを喜ぶ。一方、ソウはこのゴーレムを使うことになったことを複雑に思っていた。あくまで用心のために作ったものであるし、そもそも、本来なら非戦闘員と言える彼女が戦うこと自体、異常なのである。
「・・・渚の所に行く前に、軽く試運転しておくといい。君にとって、初めての実戦だからね。」
「分かりました。【オープン】。」
真白の言葉と共に、ロボットゴーレムの前面が展開した。ゴーレム内部は、人一人が入れるくらいのスペースが空いていて、四肢の部分には小さな白い玉のようなものがセットされていた。真白はその中に入る。その姿はまるで、箱に入った人形のように見えた。
「【クローズ】。」
真白の言葉で、展開した前面が閉じた。
「開閉に関しては問題ないみたいだね。それじゃあ、動いてみるか。」
『はい。』
真白は、足元にある玉に意識を集中させる。特に、右足の部分に集中させた。
『・・・【歩け】。』
すると、ロボットゴーレムの右足が動いた。右足はゆっくりと上がると、しっかりと大地を踏み締める。すると、今度左足も同様に上がり、地面を踏み締めた。
「その調子だ。その調子で歩いてみるんだ。」
『・・・はい。』
ロボットゴーレムは、しばらく周囲を歩く。歩くたびに、地面はロボットゴーレムの重量で地響きが起こった。
「・・・問題ないみたいだね。それじゃあ、次は飛行だ。」
『はい。【フロート】。』
真白の言葉と共に、ロボットゴーレムは宙に浮く。そして、次第に高度が上がっていく。数分もせず、ロボットゴーレムはソウが豆粒に見える程の高度にいた。
(・・・飛行も問題なし。これなら・・・。)
『真白、聞こえるかい?』
真白の耳に、ソウの声が聞こえてきた。
「はい、聞こえます。どうやら、通信機能も問題ないみたいですね。」
『そうだね。・・・でも、まだ一番大事な試験が終わっていない。それは、実戦試験だ。実戦で使えるかどうかは分からない。』
「そうですね。でも、いきなり本番は難しいので、手頃なもので試してみようと思います。」
『なら、少し先に大きな岩があるから、それで試してみよう。』
「分かりました。」
真白は、ロボットゴーレムをソウの指定した場所に着陸させる。ソウの言った通り、そこにはロボットゴーレムより大きな岩があった。
『このロボットゴーレムには、武装の類はない。けれど、君の魔力を流すことで、魔力を帯びた打撃を繰り出すことが可能だ。あとは、単純に魔力を放つことかな。通称、魔力砲だよ。』
「では、最初は打撃から試してみます。」
真白は、右手にある玉に魔力を込める。すると、ロボットゴーレムの右腕が白い光に包まれていく。
「・・・いきます!」
真白は、ロボットゴーレムで岩を殴る。ロボットゴーレムの腕は、簡単に岩を貫き、ヒビが入っていく。そして、岩は轟音を上げて崩れ落ちた。
「!・・・凄い・・・!あんな大きな岩が、こんな簡単に・・・!」
『近接攻撃は問題なしだね。じゃあ、最後は魔力砲だ。北の上空に向けて撃ってみて。そこなら被害はない。』
「分かりました。」
真白は、両手の玉に魔力を込める。すると、今度は両腕が広い光に包まれていく。
『チャージが済んだら、両腕をくっ付けて放つイメージで撃つんだ。』
「はい。」
ロボットゴーレムは、両腕を付ける。そして、上空に腕を向ける。
「・・・魔力砲、発射!」
真白は、溜めた魔力を放つ。すると、溜まった魔力は、まるでビームのように上空に飛んでいく。上空には、暑い雪雲が浮かんでいたが、ロボットゴーレムのビームを受け、一瞬で晴らされ、青空に変わった。
「!!!なんて威力・・・!」
『成功だ。この威力なら、魔王にも通用する。』
「・・・それほど溜めてないのにこの威力・・・使い方を間違えれば、渚さんにも被害が及びますね。」
『確かにね。だから、魔力砲はよほどのことがない限り使わない方がいいね。使うにしても、魔力は溜めないで撃った方がいい。』
「・・・ですけど、これが備えられているということは、使わなければいけない状況もある、ということなんですね。」
『まあね。まあ、君が無理に戦わなくても、最悪、渚に守ってもらえばいい。戦闘経験で言えば、彼女の方が上だからね。』
「・・・それだけはしたくないですね。それって、全部渚さんに任せるということですから。」
『優しいね。』
「優しくなんてありません。・・・私自身、戦いたいと思っていましたから。」
『・・・そうだね。』
ソウがこのロボットゴーレムを作った理由。それは、真白の気持ちを考えたからだった。本来なら、真白も風太達同様、最前線で戦いたいと思っていた。大切な妹を理不尽に奪われたのだから、ヤミー達の勢力に対する恨みも相当だった。ただ、普段の態度からそれが窺えないだけである。だが、生産系の魔法使いでしかない彼女では、普通に戦うことができなかった。その問題を解消するために、ソウはこのロボットゴーレムを作ったのだ。彼女が恨みを晴らせるように。
「では、渚さんと合流しましょう。早く行かないと・・・。」
『焦らなくても大丈夫だよ。まだ、戦いは始まっていないし、ロボットゴーレムの飛行速度なら、十分間に合う。落ち着いて行こう。戦いにおいて、焦りは禁物だよ。』
「分かりました。」
真白は、渚と合流すべく、ロボットゴーレムを飛ばして彼女の許に向かうのだった。
ロボットと書いてありますが、どちらかといえばパワードスーツに近いです。