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最後の間

 『・・・風太。・・・本当に大丈夫かい?』

 自分の上で休む風太に、フィードは心配そうに声をかける。風太は、いつもは身体を起こしてフィードに乗っているが、今回は仰向けになっていたのだ。

 「・・・大丈夫だ。怪我はもう、回復魔法で治した。」

 『怪我だけじゃないよ。・・・魔力の回復が追い付くのかい?』

 「・・・大丈夫だ。今までもそうだったろう?」

 『・・・だといいけど。・・・とにかく、これ以上の消耗は避けるべきだ。魔王との戦いが、まだ残っているんだ。ブレイズレギナとは戦わないで、なんとか穏便に済ませよう。』

 「・・・分かってるさ。」

 風太は、フィードに対しては何ともないように装った。ラドンに対して使用した【ルドラ】は、想像以上に風太の魔力を消耗していた。風太の魔力の自然回復量を上回るほどだった。だが、フィードを心配させたくなかった風太は、それを黙っていた。まだ魔力が十分にあったのも、黙っていた理由だったが。

 (・・・疲れ自体はもうほとんど取れたし、魔力はまだ余裕がある。もう一回、【ルドラ】を使わなければ大丈夫だろう。とにかく今は、大人しくして魔力の回復に努めよう。・・・?)

 風太は、何か違和感を覚えると、身体を起こす。

 「・・・フィード。気のせいかな?何だか暑くないか?」

 『・・・気のせいじゃないよ。どんどん温度が上がっているよ。』

 『最後の王の間が近いからだ。最後の間は、溶岩があると言っただろう。近付けば、暑さを感じるのは当然だ。』

 (・・・そうだった。最後の部屋は、ブレイの神殿と同じだった。・・・待てよ?そうなると、このまま入るのは危険じゃないか?)

 今更ながら、最後の間に入る準備ができていなかったことに気付き、風太は考え込む。

 「・・・フィード。エリアスみたいに暑さを軽減できるか?そのまま入ると焼け死ぬかもしれない。」

 『・・・できなくはないけど、エリアスほどは無理だよ。そもそも、僕は暑いのが苦手なんだから。せいぜい、ちょっとマシ程度だよ。』

 「できるならやってくれ。ブレイの神殿みたいな場所を生身で通る勇気はない。」

 『・・・いいけど、そうなると風太の魔力を常時消費するよ?』

 「魔力を消費?エリアスの時は、そんなことなかったぞ?」

 『暑さの軽減なんて、本来の使い方とは違うことをするからね。』

 「・・・まだ余裕があるとはいえ、魔力を使いたくはないな。かといって、そのままで溶岩の中を突っ切るのは・・・。・・・!そうだ!【サモン・フロストスワン】!」

 風太は、フロストスワンを召喚する。

 『?・・・貴様?何故私を呼んだ?敵はどこにもいないぞ?』

 『フロストスワン。お前の力で、俺を冷やしてくれないか?これから俺達は、溶岩のエリアを通る。お前の力を貸してくれ。』

 『何だ?そんなことで私を呼んだのか?私は涼みの氷ではないのだぞ?』

 『お前の氷の力なら、溶岩にも対抗できるだろう?できないのか?』

 『!できるに決まっている!見るがいい!』

 フロストスワンは、自身の冷気を風太に纏わせる。風太は、今まで感じていた暑さを感じず、涼しさを感じた。

 『ありがとう。これで魔力を無駄にせずに済みそうだ。』

 『・・・複雑だ。』

 『・・・そんなに悪いことばかりじゃないと思うよ。フロストスワン。君は、近いうちに【進化】できるよ。』

 「え?」

 『!?本当ですか!?』

 『まあね。風太の力が増してるから。まずは、フェニックスかな?その次は、キングピーコックで、君は三番目かな?』

 『・・・ついに・・・私も【進化】を・・・!』

 フィードからの言葉に、フロストスワンは嬉しそうになる。一方、風太の方も、どんな姿になるか内心楽しみだった。

 『・・・もうすぐ最後の間だ!』

 ついに、風太は最後の王の間に到着する。そこは、まるでブレイの神殿と同様に、溶岩の海に、申し訳程度の岩の橋が立っているだけという場所だった。

 「・・・既視感があるな、ここ。」

 『だね。ほら、あそこ。ファイアバードが飛んでいるよ。』

 『・・・貴様。この場に長く留まるのは危険だぞ。私の力でも、これはキツイ。』

 『すぐは行けない。ここにいるはずのブレイズレギナって言うフェニックスと契約しないと。』

 『・・・ブレイズレギナ。どこにいる?俺だ。エンシェントベヒモスだ。』

 エンシェントベヒモスが呼びかけるが、何の反応もなかった。それを見たエンシェントベヒモスは、怒りを覚えたのか、語気を強める。

 『おい!聞いてるのか!?早く出てこい!主から持ち場を離れるなと命じられているだろうが!』

 『あなたこそ、持ち場を離れてどうしてここに?』

 「!?」

 上空から声が聞こえ、風太は上を向く、そこには、フェニックスより巨大で、激しく燃え上がっている火の鳥の姿があった。

 「・・・こいつがブレイズレギナか。」

 『お前・・・天井に隠れていたのか。』

 『エンシェントベヒモス。どうしてあなたがここにいるのです?自分の持ち場を離れるなど・・・。』

 『仕方ないだろう!こいつらを監視しなければならないからだ!』

 「・・・ブレイズレギナ。俺達のことは、ランドから聞いているか?」

 『存じています。ですが、エンシェントベヒモスがここにいるとは聞いていませんが。』

 『お前までそんな扱いするのかよ!』

 「なら、ここを通してくれ。魔王が来る前に、ランドの所に・・・。」

 『・・・残念ですが、その時間はありません。』

 「え?」

 『・・・来ます!』

 その時、部屋の壁である岩盤の一部が爆発し、穴が開く。

 「!?何だ!?」

 「・・・まさか、こんな場所を用意していたとはな。土竜の用心深さは想像以上だな。」

 「!」

 穴の中から、一人の男性が現れる。それは、ダンジョンに侵入した魔王ダイオスだった。

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