起源魔法ルドラ
「君達に、僕から特別な魔法を教えておこうと思う。」
グロバー大陸に行くための準備期間のある時、風太達は、ソウに呼ばれてモーゼの部屋に集まっていた。
「特別な魔法?この前、飛行魔法を教えてもらったばかりだぞ?」
「あれは、魔力がたくさん必要だけど、普通の魔法だよ。これは、僕自身が考えた、原始の魔法だよ。」
「原始の魔法?つまり、全ての魔法の起源ということかい?」
「その通り。まだ、この世界の神として存在していた時に考えた魔法だよ。今、この世界の人間が使っている魔法は、それを人間が使えるレベルに落とし込んだものなんだ。」
「なるほど。・・・!ちょっと待て。それじゃあ、お前が教える魔法は、人間が使えるものじゃないってことだろ?どうやって俺達が使うんだ?」
人間が使えない魔法を教えるという、ソウの矛盾した発言に、風太は困惑する。
「大丈夫。君達はこの世界の人間と違って、魔力が桁違いだからね。反動はあるだろうけど、使えると思うよ。」
(・・・本当に大丈夫なのか?)
「じゃあ、君達の属性に応じた魔法を教えるよ。まずは、風太から。君に教えるのは・・・。」
「・・・【ルドラ】!」
突如として、風太の周囲から、凄まじい風が吹き荒れる。風は、あっという間に暴風と化し、周囲を巻き恩で広がっていく。
『!?』
そのあまりの速さに、ラドンは逃れることができず、暴風に呑まれてしまう。だが、仮に逃げたとしても、意味はなかっただろう。暴風は、ラドンの呑み込んだだけでは飽き足らず、ラドンの間全体に広がっていく。地上にいたフィードとエンシェントベヒモスにも、それは迫ってきた。
『!?』
『大丈夫。僕の側にいれば、安心だよ。』
そう言うと、フィードは、エンシェントベヒモスを覆う。エンシェントベヒモスが覆い尽くされたと同時に、暴風がフィードを呑み込む。暴風はついに、ラドンの間を全て呑み込んでしまった。
「君に教える魔法は【ルドラ】。すべてを切り裂く暴風を巻き起こす魔法だよ。威力は上級どころか、超級すら超える桁違いな魔法だ。でも、威力が凄まじいということは、攻撃範囲も広大だ。下手をすると、王都なんて軽々呑み込んで粉々にしてしまう。だから、使う時は、仲間を巻き込まないよう気を付けないといけないよ。耐えられるとしたら、風を無力化できるフィードくらいだ。」
「・・・じゃあ、使い所を考えないと、敵を倒すどころか味方の被害の方が大きくなるのか。」
「そうだよ。だから、これはどうしようもない場合に使うんだ。それと、これは威力もそうだけど、魔力の消費量も今までの魔法の比じゃない。今の君でも、一日に使える回数は三回くらいだよ。それだけ使えば、君でも魔力切れを起こすよ。」
「三回か・・・。分かった。気を付けて使う。」
「まあ、できれば使われない方がいいね。本当なら、君達がもう一段階くらい強くなってから教えたかったんだけど、この間のヤミーを見たら、そうもいかなくなってね。」
「・・・ねえ、ソウ。君の考えた魔法は、既存の魔法とあまりに隔絶している。これは、もう別のクラスの魔法と言ってもいいと思うよ?」
「・・・そうか。じゃあ、新しいランクを付けてもいいか。じゃあ、創造神直伝魔法・・・。」
「「「「却下。」」」」
「だから、何で!?」
「・・・もう、魔法の起源だから、起源魔法でいいじゃねーか。」
「そうだね。じゃあ、これからそう言おう。」
「・・・酷い・・・。」
(・・・想像以上の威力だ・・・!確かに、魔力をたくさん食うが、それだけの強さの魔法だ!)
風太は、【ルドラ】の圧倒的な威力を前に、驚愕していた。
(・・・そろそろいいかな?)
風太は、魔法を解除する。ラドンの間は、全てがズタズタに切り裂かれていた。地上にあった岩山はなくなり、ただの平坦な部屋と化していた。
そして、その中心に、ボロボロになったラドンが落ちていた。既に、赤色化した身体は、元の黒ずんだ身体に戻っていた。
「・・・やった・・・!」
風太は、静かに地面に降りるとラドンの元に向かう。ラドンは、ピクリとも動かなかった。
「・・・生きているのか?・・・それとも、死んでいるのか?」
『・・・安心・・・しろ・・・。・・・まだ・・・死んでは・・・いない・・・。』
「・・・よかった。こいつは加減ができない魔法だからな。もしかしたら、殺してしまうかもしれなかったんだ。」
『・・・構わん。・・・そうでなければ・・・意味が・・・ない・・・。』
「・・・で、俺は合格か?」
『・・・合格・・・だ・・・。・・・通るが・・・いい・・・。』
「ありがとう。それと、お前と契約する。契約してサモンカードになれば、その怪我も治るはずだ。」
『・・・構わない・・・。・・・二言は・・・ない・・・。』
「じゃあ、契約だ。」
風太は、ラドンに魔力を流す。ラドンはサモンカードとなり、風太の手元に入る。
「・・・ふう。今回はさすがにキツかったな。」
『・・・嘘だろ!?・・・ラドンが・・負けた・・・!?』
ラドンと契約できたことに安堵する風太。一方、エンシェントベヒモスは、ラドンが敗北したことに驚愕していた。
『見たかい?あれが風太の実力だよ。あの時、僕が助けなくても、君程度、風太なら倒せたんだ。僕が助けたのは、君が殺されないようにするためだったんだよ。本気を出せば、君はラドンと同じかそれ以上に酷い状態になっていたよ。』
『・・・そうだったのか。・・・確かに、あの強さ、俺では歯が立たないな・・・。』
(・・・まあ、半分は嘘だけどね。彼に言うことを聞いてもらうには、これくらい言っておかないと。)
フィードは、エンシェントベヒモスをうまく言い包めると、風太の方に行く。風太は、さすがに【ルドラ】の反動で消耗したのか、地面にへたり込んでいた。
『大丈夫かい、風太?』
「・・・ああ、何とかな。・・・やっぱり起源魔法は強力だ。あんなに強いラドンがこうもアッサリと倒せるなんて・・・。」
『でも、乱発していい魔法じゃないよ。それだけは覚えておくんだ。』
「分かってる。ソウからも言われているからな。・・・さあ、進もう。次の間が最後だ。」
風太は、フィードに乗ると、最後の王の間に向かうのだった。




