食料庫での騒動
「・・・確かに、これなら幾らでも置けそうだ。」
ウッド達に案内され、食料庫に到着した風太達は、何もないだだっ広い部屋に苦笑する。
「さて、どれから出していくか・・・。」
「・・・あの・・・風太殿。・・・あなた方が勇者であると、どうしてあの時言ってくれなかったのですか?」
「その通りだ。勇者であると言ってくれれば、あんな失礼な言動はせんかった。」
「何か理由があったのかしら?」
「・・・いや、言っても信じてくれなかったと思うので。」
「・・・あー・・・確かに。」
「でも、竜を見せてくれればすぐに信じることが・・・。」
「それは得策じゃない。フィードを出せば、敵にこちらの場所を気取られる恐れがあった。おそらく、僕達の侵入は既に知られている。だけど、余計な情報を与えたくはなかった。」
「・・・そうでしたか。確かに。」
震の言葉にウッドは納得する。だが、その言葉に渚は引っ掛かりを感じ、震に言う。
「あ、でも、そうなると私達が拠点を潰したのはまずかったんじゃ・・・?」
「あ・・・。」
渚の今更の指摘に、震は間の抜けた表情を見せる。
「まあいいじゃねーか。どうせ倒す予定だったんだ。それが少し早まっただけだろ。」
焔は、大して気にも留めていない様子で震を慰めるが、風太達の周囲に気まずい空気が漂う。
「・・・ま、まあ、それは置いておいて、早く獲ったものを出そう!そうしよう!」
気まずい空気を払うべく、風太は獲った獲物をアイテムボックスと化した革袋から出すことにした。
「ソウ。出すにはどうすればいいんだ?」
「口を開いて出したいものを思い浮かべればいいよ。」
「・・・分かった。」
風太は熊の死骸を思い浮かべて口を開くと、袋の中から熊の死骸が出てくる。
「!?本当に出た!」
ソウの言う通り、熊の死骸が袋から出てきた。しかも、一体だけではなかった。二体、三体、いや、際限なく出てきたのだ。
「!?」
どんどん死骸は袋から出、風太の目の前に山積みになる。
「風太!イメージを止めるか袋から手を離して!」
「!?そうか!」
風太は袋から手を離す。それと同時に、熊の死骸が出るのは止まった。
「ふう。驚いた。」
「ごめんごめん。止める方法教えるの忘れてた。」
「忘れんなよ、そんな大事なこと。」
思わず笑顔が零れる風太達。そんな様子を見ていたウッド達は、またもや困惑するのだった。
「勇者様!」
食料庫に獲物を入れ終わったその時、エルフの男性が慌てた様子で入ってきた。
「・・・どうしたんですか?そんなに慌てて?」
「魔王が・・・魔王が主力を率いて進攻しました!」
「魔王が!?」
「やっぱり来やがったか。」
「まあ、予想通りだね。」
ある程度予想していたため、風太達はそれほど驚かなかった。だが、次の言葉を聞いて、風太達は驚愕する。
「それだけではありません!・・・ユニバスから援軍が到着し、土の竜の住まう聖域に向かっています!」
「何!?」
「おいおい・・・本拠地から増援かよ。しかも、直接ランド狙いかよ・・・。」
(魔王の援軍ではなく、ランドを優先させる。・・・ただの増援じゃないな。)
「増援部隊には誰がいるのかは分かるかい?」
「・・・グロバー侵攻軍の魔王の上官の魔王とのことです。」
「上官の魔王?魔王にも上司がいるの?」
「はい!四天王と呼ばれる四人の魔王がいます!その一人が援軍の将です!」
「そうなると、普通の魔王より強力な魔王が来るわけか。」
(・・・まさか、そんな奴を送ってくるなんて・・・。決して油断していたわけじゃないけど、やっぱりヤミーは恐ろしい奴だ・・・。)
「すぐに、陛下の許に!勇者様のお力が必要です!」
「分かりました。行こう。」
風太達は、再び王達のいる間に向かうのだった。