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犬と猿は仲が……

PV5000越えました。

お気に入り、評価、感想どれも励みになっております。本当にありがとうございます。

これからも頑張って参りますのでどうぞよろしくお願いします。


「で、洸ちゃん。この牝犬は何? さっさと廃棄処分しましょうよ」

「マイマスター、この失礼千万な方は即刻ゴブリンへの褒美に使うべきと存じます」


 どうしてこうなった!? 右手にはフローラ。左手には義姉さん。僕の左右を陣取っていがみ合っている。取り敢えず僕に振らないでえぇぇぇぇ。




 あの不思議な再会の後、二人を連れて戻ったら、フローラが怪訝な顔で立っていた。気持ちは分かる。

 説明をろくすっぽ聞くことなく、勝手に召喚してそのまま部屋に連れてきたんだから。


「マイマスター、そちらのお二方は何方(どなた)様で御座いましょうか?」


「あ、うん。こちらが僕の姉、藤村(よる)。で、こちらが妹、藤村(あかり)

 で、姉さん、灯。こちらが今まで色々教えたくれていたフローラさん」


 義妹は何故か警戒を露にフローラを睨み付けていたけど、義姉さんは優雅としか言えない仕種で挨拶してくれた。


「あらあら。うちの愚弟がお世話になりました」


「いえ、(わたくし)も好きで致していることですから、どうかお気になさらずに」


「まあまあ。ですが私達が来ましたから、愚弟の世話は私達の方でしますね」


 この瞬間、両者の間にピリッとした空気が張り詰めたのは絶対気のせいじゃない。よく見ると2人とも目が据わってるよ、マジ怖えぇ。


「そう言って頂けるのは有り難いことですが、マイマスターには私が必要なのは明白で御座いましょう。どうぞ召喚されし配下と同じようにダンジョンの方でお(くつろ)ぎ下さい」


 ピクリと義姉さんのこめかみが動く。義姉さんはかなり温厚な人で表情は殆どが笑顔だ。つまり、あれは相当怒っている時にしかならない。実際この時も義姉さんは笑顔だけど目が笑っていない。


「これはこれはご丁寧にどうも。ですが、そちらこそあの腐れ外道の元に戻ればいいのではありませんか?

 それに貴女が必要というのが、あの装置の操作のことなのでしたらお構い無く。私達も腐れ外道から教えてもらっていますから熟知しています」


 今度はフローラの頬がひくついた。こちらは演技はあまり上手じゃないな。気に障ったのがバレバレだ。

 だけどフローラも負けてはいない。強張った笑みのまま言い返した。


「腐れ外道という名前の知り合いはおりません。それと貴女の熟知は信用が零ですので説得力に欠けますね。もう少し……そう、三年ほど勉強し直してきては如何でしょうか?」


 ああ、案の定フローラも棘しか装飾のないような内容になってる。目が笑ってない。二人とも怖い、怖すぎる。

 と、その時一人残っていた義妹がこっそりと僕に近寄ってきた。義妹よ、二人を止める何か良い案でもあるのか?!


「ねえねえお兄ちゃん。あの二人は放っておいてこれからどうするか話し合おうよ」


 と思ったら放置のお誘い。あれを放っておけと言うのか? なんだか空気が軋んで悲鳴をあげてるんだけど。

 だが義妹にそれを伝えても何か問題でも? と可愛らしく首を傾げられただけ。あれー、僕がおかしいの?


「くすくす、お兄ちゃんは気にしすぎだよう。年増相手にしてると大変だから、ほらこっちこっち」


 年増って……もし聞こえていたら大惨事だぞ。

 と、思いつつも手を引かれてパネルのところへと戻る。ふと、二人の方を見ると未だにいがみ合っていた。と思うのも束の間、すぐに激しく口論しだした。今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気である。義姉さんもだけどフローラもあんな一面があるのか。


「あれ? 椅子ひとつしかないんだ。どうしようお兄ちゃん」


 義妹はあっちは全く気にしてないな。大物なのかと疑いたくなる。まあ、一先ずはあっちは放置することにしよう。


「え、あ、うん。灯が座っていいよ。僕は立ってるから」


 もしかしたら新しい椅子が出せるかもだけど、やり方知らないし、ここは男を見せておこう。

 だけど義妹はそれがお気に召さなかったらしい。


「むぅー。お兄ちゃんを立たせてまで座りたいとは思ってないもん! …………あ、そうだ。良いこと思い付いた!」


 すっごく嬉しそうな無邪気な顔で言う。しかし、その提案にそこはかとなく嫌な予感が……。


「ほらほらお兄ちゃん座って座って」


 引っ張られて強制的に座らされる。そして、義妹は何を思ったのかそのまま僕の膝の上に横座りした。更には何故か顔はこちらを向いてる。画面は逆側だぞ。


「あは、やっぱり良い感じ」


 嬉しそうに言うとそのまましなだれてきた。柔らかいマシュマロが僕の胸で潰れる。何この感覚。マジ天使。

 そんな混乱した思考が頭をよぎりつつも、義妹の顔を見ると、向こうもこちらを見上げてきていた。おいおい、目が潤んでるぞ。


「お兄ちゃん……」


 するすると義妹の顔が大きくなってくる。


「ん…………」


 静かに目を閉じて唇を少しつき出してきた。愛らしい小ぶりな唇はまさに据え膳。食っておかないと男が廃りそうだ。

 だが義妹よ、お前は何を考えている。なんぼなんでも()()()、とはいえ兄だぞ兄。きちんと美少女に育ってるのに残念すぎる。ちなみにここまで考えるのに30秒は経ってます。

 と、いうことで義妹には唇ではなくチョップをお見舞い………しようとして出来ませんでした。


「ぬおおおおおおおお」


 何故なら目の前で苦しみながら膝から転がり落ちたから。足下の義妹から視線を上げると肩で息をしている義姉さんとフローラの姿が。二人とも髪が少しボサボサになってるのと、服が微妙に着崩れている。

 …………何があったかは敢えて問うまい。


「まったく、家にいたときもだったけど、油断も隙もないわね」


「ま、マイマスターに破廉恥なことはなさらないでください」


 二人とも握り拳だ。しかし二人同時でダブルノックとか痛いだろうな。そんなことを思っていると復活した義妹が抗議の声を上げた。


「ちょっと! そこの泥棒猫はまだしもお姉ちゃんまでどういうつもりよ!?」


 おお、意外と元気だ。でも少し涙目だ。


「黙りなさい。抜け駆けしようとしといて浅ましいのよ」


「ルール違反者には罰則が課せられます。暫しお眠りなさいませ。ナイトメアスリープ」


 ルール違反て何がだ? とか思ってるとフローラが呪文を唱えていた。身構えた義妹をもやが包みこむ。


「ふん、何よ、こんなもや。すぐに消し、て、あ、げ……」


 強がった言葉が聞こえてきたけど途中で途切れて、代わりに崩れ落ちる音が聞こえてきた。そして、もやは徐々に消え去っていった。もやが完全に消えるとそこには倒れている義妹の姿が。驚く僕にフローラがすかさず解説をしてくれる。


「マイマスター、ナイトメアスリープは魔法の一種に御座います。効果は相手を悪夢に誘い込むこと。成功確率に自分と相手との魔力量の差が影響いたします」


 悪夢を見せる魔法とか怖!! フローラさん、どうか僕には使わないでくださいね。

 義妹を心配するでもなく暢気にそんなことを考えていたら、また義姉さんとフローラはやりあっていた。




 僕はこの後、二人を怖すぎて放置してしまい、冒頭の流れになってしまうが、それは自業自得というもの。何はともあれこの二人、犬猿の仲というより不倶戴天の敵といったところかな。本当にどうしよう。

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