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9.シンのこども

 シンは、生まれたてのリンを初めて見たときから、リンをお嫁さんにすると決めていた。

 まだ物心のつかない頃から、リンは僕のお嫁さんになるんだよと言い続けていた。リンも素直にシンのお嫁さんになるとうなずいた。

 やがて、リンの成人をもって無事に結婚し、しばらくは新婚生活を満喫していた。そろそろ子どもをと考えた時に、シンはふと気付いた。


 他に子どもがいない。


 リンの弟妹はとうに成人していた。今神の森にいるのは動物の子どもだけだ。

 シンは、リンをはじめ何人もの弟妹がいて、とても楽しかったことを忘れられない。自分の子どもにも、同じ喜びを与えたいと思う。

 さてどうしようと思いながら見回すと、聡とみさとが談笑している。


 そうだ!お母様に産んでもらおう!


 シンは、にっこり笑うのだった。



 やがて、リンが身ごもり月満ちて玉のような男の子を産む。神の森は喜びに満ち、動物たちも新しい神族を歓迎した。


 聡とみさとは初孫にでれでれで、精霊王達と取り合うように抱いていた。

 半年程経ち、少しお世話が楽になると、シンは計画を実行した。


 翌朝、みんなはみさとの悲鳴と聡の叫び声で目を覚ました。

 駆けつけた彼らの目の前には、今にも産まれそうなお腹を抱えたみさとの姿が。


「シンちゃん、あなたでしょ?!」


「みさと、落ち着け」


「うわ~、デジャブだ」


 アカギのつぶやきに精霊王一同が同意し、その視線を原因(シン)に向けるが、シンはまったく気にしていない。


「だって年の近い遊び相手がいた方がいいじゃない」


 とにこやかに笑うシンの言葉に一同がっくりと肩を落としたのだった。


 その後、みさとに陣痛が来て、男達は追い出され、その日の午後には、新しいシンの兄弟が誕生した。リンは、はじめこそお母さまを巻き込んでとシンにお冠だったが、すぐに一緒に子育て楽しい!と機嫌を直した。聡は、孫もいいけど、子どもはもっといいと、最初から歓迎ムードで、1人みさとがぐったりしている。


「もう子育て終わったと思ってたのに~」


授乳をしながらグチるみさとを聡がなだめる。


「まあまあ、5人も6人も変わらないよ。赤ちゃんはかわいいし」


「…それはそうなんだけど~」


 なんだかすっきりしないみさとだった。授乳が終わると、聡がひょいと赤ちゃんを受け取り、上手にげっぷさせてからうれしそうにみんなの所へと連れていく。


「…なんか聡が一番喜んでない?」


 そうつぶやいた後、みさとはまあいいかと頭を枕に預けやって来る睡魔に身を任せた。



 その後、リンがみさとと一緒に楽しそうに子育てしているのに気をよくしたシンによって、みさとはリンの出産にあわせて女の子と男の子を産んだ。シンを入れて8人である。

 さすがに8人目の後、みさとはシンに宣言した。


「も~、無理。これで最後にしてちょうだい!弟達も結婚したし、これからそっちにして!!」


 確かに弟妹達も次々と結婚していたし、子どももじきに生まれそうだ。シンは納得すると、お母さまにもう子どもは望まないと約束した。

 ほっとするみさとの側で、なぜか聡が残念そうだったが、みさとは気がつかないフリをした。こうでもしないと、永遠に子どもを産むことになりそうだからだ。いくら永遠の23歳だとしてもそれはごめん被りたい。


 こうして、リンの子育て仲間は、お母さまから妹・義妹へと変わったのだった。




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