本編完結後 オムライス店で二回目のデート
「寧々、またあそこの店行きたいんやけど」
「どこ?」
「ほら、オムライスがおいしいあの店」
「ああ、オムライスね! 初デートで行ったところだよね?」
「そうやねん。また食べたいなー思て、寧々と行きたくなったんよ」
「じゃあ、行こうか」
付き合うようになってから初めて行くオムライス店『大和』は、いつ行っても列ができている人気店だ。
今は同棲しているので家から一緒に行けるのが嬉しい寧々は、繋がっている手をぎゅっと握り店へと案内した。
二人が着くと大和はやはり行列ができていた。二人仲良く列に並び、談笑しながら時間を潰した。
「そういえば『きみが思い出になるまで』っていつ公開されるの?」
「早くて一、二年かもしれへんなあ。ものによって年数が変わってくるから、こればっかりは分からへんねん」
「そういうものなんだ。楽しみだね」
「そうやね」
プロポーズを受けてまだ日が浅い。『きみが思い出になるまで』のことは気になっていた部分もあるので、なんとなく聞いてみたが早くてあと一、二年らしい。
その時の二人は今とは形を変えて一緒に居られるのかもしれないと考えると、感慨深いものがある。
寧々が未来に想いを馳せていると、いつの間にか順番が回ってきたようで店内に案内された。
そこではたと思い出す。寧々と初デートをしている時に、伊織がここのお店の店員から連絡先を渡されそうになっていたのだ。あの時の伊織はきちんと断って寧々のことを優先させてくれたので、やはり真面目な人なのだと改めて気づきなんだか幸せな気分になる。
「どうしたん、えらいごきげんやんな?」
「ううん、ちょっと思い出しただけ」
「ふーん……?」
店内をちらっと見ると、どうやらあの時の店員さんは今日はいないらしい。辞めたのかどうかは分からないが、伊織に好意を寄せる女性が近くにいると思うと心がざわつくのでよかった。
「なに頼もっか」
「俺は寧々のおすすめのハンバーグオムライスがええなあ。寧々は?」
「私もそれがいい」
「うん、分かった。飲み物は?」
「ホットコーヒーで」
「今日ちょっと冷えるもんな。俺もホットコーヒーにふるわ」
伊織が注文してくれているので、サービスのお冷をちびちびと飲み、注文が終わるのを待った。注文を取り終えた店員は奥へと引っ込む。
「あの人おらんくて安心した?」
「!?」
いたずらっ子のような表情で寧々を見やる伊織はひどく楽しそうだった。危うくお冷を吹き出すところだったので、寧々はひと睨みする。
「もう、からかわないで」
「ごめんごめん、寧々がきょろきょろしてるから、あの時のこと思い出してるんやろうなって」
「全部言わないで、恥ずかしいから!」
何から何までバレていたことごよほと恥ずかしい。それはそうだろう、伊織のことが好きなのだから。
「俺、ほんまに寧々以外興味あらへんから安心してや。こう見えて一途やねん」
「それは知ってる」
じっとりとした目で見やると、伊織は「ごめん」とだけ言った。寧々が理沙のことを言っているのだと気づいたからだ。
「まあ、それはいいよ。伊織さんの優しさだからね」
それでこの話はおしまいとばかりに寧々は次の話題を振った。
そうこうしているうちにホットコーヒーとハンバーグオムライスが届いた。
「伊織さん、はいチーズ」
寧々がスマホを構えると、伊織はにっこりと笑顔を作ってピースした。前回来た時よりもいい笑顔をしている。それを伊織に見せると「ええやん」と言って自分のスマホを取り出した。
「寧々も、はいチーズ」
今度は伊織がスマホを構え、寧々もピースした。伊織に見せてもらうと、やはり前回よりもいい笑顔をしている。ただの友達から正式な恋人、および婚約者になったからかもしれない。
「後で送ってくれる?」
「ええよ、寧々も送ってや」
「うん。じゃあ、食べよっか」
「せやな。いただきます」
「いただきます」
二人で挨拶をしてハンバーグオムライスを食べる。
熱々のハンバーグは牛肉の味が引き立っている。オムライスはとろとろの卵とケチャップライスが最高においしい。
ハンバーグとオムライスを一緒に食べればこれ以上ないほど満たされる。
「相変わらずむっちゃおいしいなあ」
「ね、だから好きなの」
「俺も道覚えたし、今度は俺が道案内したるわ」
「本当に? じゃあ、次は伊織さんが連れてきてね」
「任せてや」
二人でオムライスを食べて、コーヒーを飲む。
二回目だって何度だってここのお店に来たい。好きな店を共有して、伊織が好きになってくれたことが嬉しかったからだ。
今度は伊織の好きなお店である、京都の居酒屋に行ってみよう。
そうして二人のお気に入りを増やして、楽しい時間を過ごすのだ。




