第097話 浮気じゃないよ
俺達が3人で飲みながら話をしていると、アンナがギルドに入ってきたのが見えた。
「おー! アンナだ!」
「あ、ホントだ! アンナー!」
フィリアが声をかけると、アンナが俺達のもとにやってくる。
「久しぶり、フィリア」
俺は?
「久しぶりー。元気だった?」
「まあね……あんたも久しぶりだね」
あ、ちゃんと俺も見えてたようだ。
「久しぶり。上手くいったかー?」
「それについては後で話がある」
マジかー……
なんか悩みがありそうだな。
「ガラ悪ー! アンナのお酒ー!」
ミケがアンナの酒を注文する。
「お前までガラ悪呼ばわりすんなー。というか、お前らに言われたくない」
いや、受付に足を乗せてるマッチョはどう見てもガラが悪いだろ。
ガラ悪マッチョはすぐに酒を用意し、持ってきた。
俺達はアンナが酒を持つと、乾杯をする。
「フィリア、結婚、おめでとう」
アンナがフィリアに微笑みながら祝いの言葉を言う。
「ありがとー」
「俺には?」
ギブミー、祝福。
「お前、フィリアから金貨100枚を取るんじゃなかったのか?」
蛇の除霊料金のことだ。
よく覚えてるな。
「無理そうだから本人をもらったわ」
「それを祝えと?」
「当人が幸せなら別にいいだろ」
俺も幸せ。
フィリアも幸せ。
「おめでとう」
「ありがとう」
アンナが真面目に祝ってくれるので俺も真面目に感謝した。
その後、アンナ、フィリア、ミケは3人でよく話していた。
よく組んでいたというし、仲の良い3人は結婚のことや冒険のことで盛り上がっている。
俺は空気を読んで、話を聞きながら酒を飲んでいた。
「フィリア、悪いけど、旦那を借りていいか?」
話が一段落したところでアンナがフィリアに聞く。
「あー、話があるって言ってたもんねー。いいよー」
「アンナ、俺には愛する妻(複数予定)がいるので浮気はできんぞ?」
「人生を何回やり直してもあんただけはない」
ミケもお前もその言い方はどうなん?
俺も傷つくし、そんな奴と結婚するフィリアが良い思いをしない……って、めっちゃ頷いてるし!
「まあいいや。フィリア、今日はヘイゼルの家に泊まらずに家に帰ると良いことがあると出た」
「その言い回し、ヘイゼルさんに聞いた。良いことがあるのはリヒトさんでしょ」
あいつ、しゃべりやがった!
「俺の占いを信じなさい」
「はいはい。待ってる待ってる」
フィリアが手をひらひらさせる。
「うわー……こいつら、殴りてーです」
猫ちゃん、猫パンチはダメ!
「じゃあ、ちょっと借りるわ。リヒト、付き合え」
「はーい」
アンナに連れられて、ギルドを出た。
そして、そのまま歩いていくと、酒場に入る。
店内は薄暗く、落ち着いたお店っぽい。
俺達は店内のテーブルにつくと、お酒を頼み、飲みだす。
「俺、宿屋とギルド以外の店に初めて来たわ」
「お前は異世界人だし、あんまり行かない方がいいぞ。ここは大丈夫だが、法外な金を取るところもある」
ぼったくりかな?
怖いねー。
そんなことをされたら呪ってやる。
「で? 話ってなんだ?」
大体の想像はついているけど、一応、聞いてみる。
「お前の占いな? まあ、当たったわ」
でしょうね。
「一応、謝っておく。足のことはすまん」
「やはりその辺りが見えていたのか……いや、たいした怪我じゃないし、問題はない」
俺の占いではアンナが怪我をして、意中の相手と上手くいくと出たのだ。
「俺はお前が足を怪我するのを知っていた。そのことで上手くいくのもわかっていた。だが、それをお前に告げると、お前は怪我をしない。そうなれば、上手くもいかないんだ」
そういうもん。
「わかるよ。お前がこれ以上言えないって言った意味がその時になってわかった。詐欺師めって思ったな」
アンナが笑った。
「上手くいったんだろ?」
「ああ、いった」
こりゃ相当、上手くいったな。
「まあ、下世話だし、聞かないことにする」
「いや、聞いてくれ。相談にも繋がることだ」
相談ね。
「そういうことなら聞こうか。良い答えが出るとは限らないけどな」
「ああ……お前に言われた通り、2人で臨時の仕事をした。そんでもって、私のミスで怪我した」
そこまでは見えている。
「うんうん」
「それを奴は自分のせいだと責めた。別にそんなことはないんだが、まあ、よくお見舞いに来てくれたな。まあ、そんなことが続いていたんだが、えーっと、そのー……」
アンナが言いよどむ。
「はいはい。言わなくてもいいよ。わかるわかる」
いい感じになったんだね。
男がオオカミになっちゃったんだね。
わかるわー。
俺もこれからフィリアのところに行って、そうなるもん。
「別に嫌じゃなかったんだろ?」
そのために占いとアドバイスをくれてやったんだから。
「まあな……」
「じゃあ、いいじゃん」
「いやなー、私はそうなんだが、向こうがそう思わないんだわ。あいつからしたら自分のミスで怪我した女を……まあ、そういうね?」
はいはい。
「なるほど、わかった。奥手で真面目な男っぽいし、自己嫌悪にもなるわ」
最低。
別にそうでもないけど、本人はそう思っているんだろう。
「そうなんだよ……これからどうすればいい?」
アンナはそう言って、金貨10枚を取り出した。
「それはいいわ。占うまでもない。本当は相談料を別途、取るんだけど、取らない方がいいと出てる」
フィリアがね?
ほら、あるでしょ?
友達に良くしていると、フィリアも喜ぶ。
そういうの。
「頼む」
「そいつに嫌じゃなかったって言いな」
「それは言った」
あ、もう言ったのね……
「んー? 真面目な男だし、そう言えば、責任を取りそうなもんだけどなー」
「責任か……」
「お前、結婚する気ある? ミケは弟に触発されて、したがってたけどさ」
さっきまでミケはうるさかった。
俺がもらってやるって言ってんのに、頑なに拒否してたけど。
「ミケはそればっかりだったな。まあ、弟のこともあるんだろうけど、お前やフィリアにもだろ……私だって、あるにはある。もう19歳だし、もう少しで20歳になるしな」
前にフィリアが20歳まで待たせたら刺すって言ってたし、適齢期を超えるのかね?
ホント、早いわ。
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