第095話 ダメー
「じゃあ、それでいくか……えーっと、ゲドゲド草でいいか?」
毒草博士のヘイゼルに確認する。
「ある?」
「多分な。えーっと、棒、棒……あった」
カバンの中からダウジング棒を取り出した。
そして、棒を両手に持ち、不思議パワーを込める。
すると、棒が右斜め前を向いた。
「あっちだな」
「絶対にリヒトが動かしたと思うよね?」
「まあ、そんな風に見えるね」
初めて見たフィリアはわかるが、何度も見たヘイゼルは未だに信じていなかったらしい。
「行くぞー」
疑っている2人に声をかけ、棒が指す方向に歩いていく。
そのまま歩いていくと、もちろん、ゲドゲド草が生えていた。
ヘイゼルはそれを収納魔法で採取する。
「俺らはこんな感じのことをやってた」
採取の流れをフィリアに見せた。
「うーん、すごいね。でも、何かズルいね」
簡単に見つけ、簡単に採取してるし、他の苦労している冒険者からしたらズルいだろう。
「俺もそう思う。でも、これで金貨2枚」
「ある力を利用するのは当然か……」
フィリアってお金のことを言うと、すぐに手のひらを返すよね。
俺達はこの流れでゲドゲド草を始めとした採取依頼のある毒草や薬草を採取し続けた。
フィリアがいるおかげで疲れても回復できるし、いつもより楽に採取することができている。
俺達は昼を回り、16時前まで採取を続けると、さっさと森を出て、町まで帰ってきた。
そして、ギルドに戻り、精算をする。
「えーっと、金貨14枚ってとこかな……」
ふむふむ。
結構、儲かったな。
調査の依頼とほぼ変わらん値段だ。
「やったねー」
「ギルマス、お酒!」
ヘイゼルはいつものように仕事終わりの1杯を要求する。
「悪いな、ヘイゼル。領主様がお前さんを呼んでる」
ガラ悪マッチョが笑いながら残酷なことを言う。
「へ? 私?」
「いつものやつだ」
いつものやつ?
「あー……そっか、忘れてた」
ヘイゼルも心当たりがあるらしい。
「何かあんの?」
よくわからないのでヘイゼルに聞いてみる。
「貴族は狙われやすいから防犯目的で魔法を使って結界を張るの。領主様って女性でしょ? 未婚の貴族女性の部屋に男性を入れるわけにいかないから私がやるの。でも、他の女魔法使いに頼めばいいのに……」
「お前が貴族だからだろ」
平民は何をするかはわからんが、同じ貴族なら礼儀や常識がある。
ましてや、こいつは腹芸がまったくできない素直なヘイゼルちゃんだもん。
信用もできる。
「領主様も知ってんのか……いや、そりゃそうか。皆、知ってるって言ってたもんねー……」
ヘイゼルがうじうじとギルマスを見る。
「何のことだ? 俺は知らんぞ」
ガラ悪マッチョがあからさまな嘘をつく。
「そう? ふふ。そうよね。まあ、いいわ! 悪いけど、私は領主様のところに行ってくるけど、明日はどうする?」
ヘイゼルちゃんは本当に表情というか、感情がコロコロ変わる子だなー。
「明日は休みでいい? 私も家具やらなんやらを買いたいし」
フィリアが休みを提案してきた。
フィリアも布団はマットレスだろうが、ベッドはこっちのものを買う予定だ。
それらを買いたいのだろう。
「じゃあ、明日は休みにしよう。俺もちょっとこっちの家具が気になるから一緒に行くわ」
ホントは別の目的がある。
内緒!
「うん、いいよー」
「じゃあ、明日は休みね。私は家で片付けをするから」
「わかった。買い物が終わったら手伝いに行くわ」
「そうだねー」
「ありがとう。じゃあ、私は行ってくるわー」
ヘイゼルはそう言って、ギルドを出ていった。
「いやー、お前らがまぶしいわー」
ガラ悪マッチョが俺達を茶化してくる。
「いや、お前もそういう時期があっただろ」
「あったなー……いや、不満があるわけじゃないんだけどな」
落ち込むなよ……
何か切ないわ……
こいつみたいにだけはならないように注意しよう!
ヘイゼルが領主様の屋敷に向かった後、俺とフィリアはギルドで乾杯をしていた。
「儲かったねー」
フィリアは嬉しそうだ。
「だなー。こんな感じで仕事をしつつ、氷を売っていけばそれだけで生きていくには十分すぎるな。あとはどれだけ儲けるか……」
「何を売るかだよねー。いっそ領主様にたっかいのを売りこんじゃう?」
フィリアは楽しそうにキャッキャと笑う。
「鏡とかガラスか?」
「そういうの、そういうの」
「まあ、お前が前に言ってたように1個だったらいいかもなー。ダンジョンから発掘したとは言わなくても普通に持ってたやつって言えばいいし」
コップや鏡を持っていてもそこまで変じゃない。
これが10個や100個もあれば不自然すぎるけど。
「そうそう。ヘイゼルさんに話を通してもらえばいいし、アリだと思う」
「そうだなー。今度帰ったら買いに行くか。ヘイゼルの親のところにも贈るつもりだし」
「そうなの?」
フィリアが首を傾げた。
「お前のじいちゃんが挨拶は行かなくてもいいけど、そういうのを贈っておくと、向こうの親御さんも安心するから贈った方がいいって言ってたんだよ。贈る余裕があるってことは財力があるから娘が苦労することもないだろうってことらしい」
俺は貴族じゃないから見栄もないし、単純に余裕と礼儀と受け取ってくれるだろう。
会うことはないかもだけど、嫁の親に悪い印象を与えるよりは良い印象の方が良い。
「なるほど。まあ、財力って言っても100円で買えるんだっけ?」
「そう思ってたんだけど、さすがに俺の気持ち的にはもうちょっと良いのを贈るよ」
100均はさすがに味気ない気がする。
「まあ、良いと思うよ。私も行こうかな? 昨日、ヘイゼルさんと部屋をどうしようか考えてたし」
「部屋?」
「昨日、リヒトさんがソファーを持ち込むって言ってたみたいだけど、他に向こうの世界で使えそうなものを持ち込むの。あの家にキッチンはないけど、ガスコンロがあれば料理は出来るし、キャンプ用品とかで色々できそうじゃん」
なるほど。
ホント、君ら、俺よりも詳しいというか、異世界を満喫してるね。
俺、マヨネーズやポン酢で肉の味変ぐらいしか思いついてなかったよ……
「よい考えだと思う」
「でしょー? 今度帰ったらその辺を買って持ち込む予定。ヘイゼルさんは計量カップや重さを測るものを買うってさ、錬金術で使うらしい」
そういうのもあっちの世界が進んでいるのか……
でも、体重計は買わないでね。
君らは痩せない方が良いから。
ダイエットして痩せるのは痩せたらダメなところだからね。
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