第061話 酒癖が悪いのは嫌だね
ヘイゼルの家を出た俺達は冒険者ギルドまでやってきた。
時刻はおそらく15時ぐらいであるため、相変わらず、他の冒険者はほとんどいない。
皆、まだ仕事をしているのだろう。
俺とヘイゼルはいつも見ている依頼票をスルーし、受付にいるガラ悪マッチョのところに行く。
「お前らって、ホント、昼間に来るよな」
両足をカウンターに乗せた本当にガラが悪い格好のギルマスが呆れたように言ってきた。
「人が多い時だと待たないといけないだろ。むしろ、お前らが暇な時に来たんだから感謝してほしいわ」
「というか、仕事の話を聞くのに朝から来ないわよ。眠いし」
いや、君はちゃんと起きなさい。
「ったく……で? 依頼の話か?」
「酒だったらヘイゼルの家で2人静かに飲むよ」
愛を語らうよ?
「わざわざ怪しく言うなよ……あー、ヘイゼルは借家に引っ越したのか?」
「そうよ。したばっかだけどね」
「そうか。まあ、良いことだ」
ギルドや町的には俺だけじゃなく、優秀な魔法使いであるヘイゼルにも他所に移ってほしくないんだろうな。
「そんなことよりも仕事の話よ」
「そうだな。一応、お前らができそうなのをいくつか見繕ったから選べ」
ガラ悪マッチョは姿勢を正すと、10枚以上の紙を取り出して、俺達に渡してきた。
俺とヘイゼルはそれらの紙を1枚ずつ見ていく。
「えーっと、東のリードの町の海の調査……?」
どこだよ?
地図をくれ。
「リードっていうのはこの町から東にある港町よ」
「ほれ、お前の大好きなミケが行っているところだよ」
悩んでいると、2人が教えてくれた。
あー……なるほど。
あそこね。
「そこって近いん? 俺、日帰りの仕事がいい。野宿は嫌」
「あ、私も嫌。じゃあ、これはナシね。リードは馬車でも1日じゃ着かないもん」
やっぱ遠いのか……
「お前ら、わがままだなー。まあ、お前らに夜の見張りができるとは思えねーけど。ちょっと貸せ。時間のかかる仕事は除いてやる」
ガラ悪マッチョは俺が持っている紙束を奪うと、選別し始める。
「これも遠い……これは……こいつらのスピードじゃ無理か……あんまねーなー」
ガラ悪マッチョはブツブツとつぶやきながら選定していき、残ったのは2枚だった。
「2つしかねーし」
「選択肢がないわねー」
俺とヘイゼルが文句を言う。
「日帰りでこなそうとするからだろ。普通は遠い方が依頼料も高いし、そっちを選ぶんだぞ」
「そういうのは他の冒険者に譲るよ。別に金に困っているわけではないし、貧弱な俺らは分相応なやつをやる」
「そうそう」
適材適所って言葉、好きだわー。
「まあ、その通りなんだが、怠惰に聞こえるのは気のせいか?」
気のせーい!
俺とヘイゼルは呆れているガラ悪マッチョを無視し、依頼内容を読み始める。
「えーっと、街道の調査……? 何これ?」
「南の街道で商人の馬車が行方不明になったんだよ。それの調査」
「それ、冒険者の仕事か? 領主様や兵士の領分だろ」
「それはもうやった。不審な点はないけど、商人も馬車も見つかってない。死んでるかもしれないけど、その場合は痕跡や遺留品が欲しいそうだ」
兵士が探して見つからなかったのか……
蒸発したか、盗賊か……
「めんどくさそうだな……」
「そうね。行方不明っていうけど、本当に街道で消えたのかどうかわかんないし」
「南のザイルっていう町に向かったんだが、ザイルには来てないそうだ」
ザイルを無視して別の町に行った可能性もあるし、これは何とも言えんな。
盗賊に襲われたとしたら俺らが危ない。
「あくまでも街道の調査か?」
「そうだ。それ以外は範囲外。依頼料は金貨10枚。本人、もしくは遺留品を見つけたら倍の額を出すそうだ」
ふーん……
この依頼は遺留品が見つからなかった時に揉めそうだな。
絶対にちゃんと探したのかって言われる。
「なるほどねー。えーっと、もう一つの依頼はっと……」
もう一つの依頼を確認する。
「馬車の回収?」
さっきとあんまり変わらんな……
「何よ、それ?」
ヘイゼルもわからないらしく、ガラ悪マッチョに聞く。
「実はそれがお前らに頼みたい本命だわ。昨日、商人が東の街道から逸れて休憩してたらしいんだけど、ウルフに襲われたんだと」
「ウルフ? 魔よけの石は?」
「あとで気付いたらしいが、忘れたんだと」
ドジだなー。
そいつ、ヘイゼルって商人じゃない?
「それで? 馬車を置いて逃げたから取ってこいって言うの?」
「そうそう。ウルフが馬を襲っているうちに逃げたらしい。回収しようにも場所がわからないんだってさ」
やっぱりそいつ、ヘイゼルでは?
「馬も食べられているだろうし、どうやって回収すんのよ?」
「馬は貸し出す。お前、馬にも乗れるだろ。御者できねーか?」
「まあ、できるけど」
ヘイゼルって馬に乗れるし、御者もできるんだ。
正直、意外だわ。
「それで馬車は俺が探せばいいん?」
「そうなる。報酬は金貨15枚。あと、お前の占い代を追加で金貨16枚かな」
まあ、その商人は初めての客だろうし、初回割引きがきくから金貨1枚でいい。
「そこもちゃんと出してくれんだな」
「依頼主に説明したら追加料金は払うってさ。ただし、お前らが失敗しても場所だけは教えてくれって」
なるほどね。
商人だけにしっかりしてるわ。
ヘイゼルじゃなかったわ。
「ヘイゼル、さっきのやつよりはこっちが良いと思う」
ヘイゼルに自分の考えを伝える。
「そうね。馬に乗って、馬車に乗って帰るだけで金貨16枚だもん」
ヘイゼルも異論はないらしい。
「だよな。なあ、馬車が壊れてた場合はどうなる?」
「その旨を俺に報告してくれ。その場合は依頼主に事情を説明して別の馬車を出してもらう。その馬車で積み荷を回収する形だな。その場合でも報酬は下がらんから安心しろ」
「俺らもそれについていくん?」
2回も行くのはめんどいぞ。
「いや、そこからは護衛の仕事になるから別の依頼になる。まあ、多分、依頼は出さずに自分で行くだろ」
最初から俺の占いで場所だけ知って、自分で行けばいいのに……
まあ、占いなんて信用できんだろうけど……
「ヘイゼル、これを受けようか?」
「そうね。私も賛成」
「明日の朝でいいか?」
ガラ悪マッチョに確認する。
「いいぞ。今からでは夜になるしな。じゃあ、馬を東の門番に託しておくからそれで行ってくれ」
「了解。ヘイゼル、馬は頼むわ」
「任せといて!」
俺達は明日の新しい仕事を決め、やる気に満ちていた。
「明日から仕事だなー」
「そうね。今日は英気を養いましょう」
そうしよう。
さすがはヘイゼル師匠!
「結局、飲んでいくんじゃねーかよ」
だって、夜は暇なんだもん。
俺とヘイゼルは酒を注文し、受け取ると、テーブルに行き、そのまま飲み始めた。
しばらくすると、性病のケインが仕事を終えて戻ってきた。
シラフのケインは俺にめっちゃ感謝してきたが、そのまま酒を飲み始めると、俺とヘイゼルにめっちゃ絡んできた。
うざかった。
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