第042話 A……B……C…………D!
俺はコップに入っていた1缶目の酒を飲み干したフィリアに風呂の入れ方を教えた。
俺も風呂に入る予定だが、先にフィリアに風呂に入ってもらうことにしたのだ。
今頃は自分の回復魔法で蛇の締め付け痕を治療しつつ、風呂を満喫していることだろう。
「一仕事終わったな」
1人になったので冷蔵庫を漁る。
「うーん……」
そろそろ酒やら何やらが尽きそうだなー。
1人だったらそこまでなんだが、2人だと、消費が激しい。
ましてや、フィリアはうわばみでめっちゃ飲む。
風呂から上がったら買い物かなーと思いつつ、ソファーに戻ると、酒を飲みながらフィリアが風呂から上がるのを待つ。
これで当面の目的は終わったかな。
自分のギフト、フィリアの蛇、当面の生活のための金。
金についてはまだだが、ある程度の目途が立っているし、金集めに終わりはないから目途さえつけばいい。
商売はフィリアに売買をお願いし、ヘイゼルには運び屋になってもらう。
あとは自衛手段だろうな。
ハンドガンは微妙だったし、もっとでかい銃を仕入れようか……
いや、目立つし、俺が使えるとも思えん。
ヘイゼルに魔法を教えてもらう予定ではあるが、それだけではなー。
うーん、単純に鍛えようかな……
剣の達人になる気はないが、身のこなし程度は学んでおいた方が良い気がする。
ちょっとガラ悪マッチョに相談をしてみよう。
どっちかというと、アンナや猫ちゃんに教わりたいが、あいつらはまだ帰ってこないだろうし。
うーんと悩んでいると、リビングの扉が開いた。
「お待たせー!」
フィリアが風呂から上がったらしく、タオルを首にかけ、母親の服でリビングに戻ってきた。
「冷蔵庫に酒があるから勝手に飲んでいいぞー」
「おー! 風呂上がりの一杯!」
フィリアは嬉しそうにキッチンに行くと、すぐに缶を持ってきて、ソファーに座った。
「痕は?」
「きれいさっぱり消した。ヒーラーやってて良かったよ。見る?」
「また今度ね。俺も入ってくるわ」
「ごゆっくりー!」
嬉しそうで良かったわ。
自室に着替えを取りに行った後、風呂に入った。
2日ぶりの風呂を満喫し、リビングに戻ると、フィリアと共に酒を飲み始める。
「あのさー、ちょっとお願いがあるんだけど、私のお金をこっちの世界のお金に換金してほしいんだ」
風呂から上がり、朝っぱらからつまみを食べながら2人で酒を飲んでいると、フィリアが換金を頼んできた。
「何か欲しいものがあるん?」
「色々と買いたいものはあるけど、まずは服かなー。さすがにいつまでもお義母様の服を借りるのも悪いし、巫女様の服と思うと、恐れ多い」
うーん、まあ、確かに人の服をいつまでも着ているのは気分が良くないかもな。
相手は40オーバーのババアだし。
「別に買ってやるけど……」
「贈り物をくれるって言うんなら有難くいただくけど、単純に自分の身の回りの物だし、自分で買うよ」
買ってもらうのだと、遠慮してほしいものが買えなくなるしなー。
「いいけど、大体、金貨1枚で1万円かな?」
「その辺がよくわかんないんだよねー。砂糖が200円で銅貨2枚だっけ?」
「そうそう。そんな感じ。服だと……物によるな」
そもそも女の服の値段がわからん。
「その辺はあっちの世界もだよ。高いのはべらぼうに高いし、庶民が着る普通の服は銀貨1枚で買えたりする」
「見に行くか……食料や酒の補充もあるし、クーラーボックスも買わないといけない」
まーた、帰りは大荷物だなー。
帰りはちょっと値段が張るが、タクシーを使うかね。
「いいねー。買い物好き」
女子だねー。
まあ、こいつの場合はちょっと違うけども……
しかし、服か……
こいつ、下着はどうするんだろ?
服によっては下着がないとマズい気がする。
「なあ、あっちの世界に下着ってある?」
セクハラっぽいが、確認しておかないとマズい。
「下着? あるよ」
「こっちの世界は上と下があるんだが……」
「あっちの世界もあるよー。上は服によるけどね」
ふむふむ。
「ちょっと待ってろ」
携帯を操作し、女性ものの下着を検索する。
そして、外国のモデルっぽい人が上下の下着を着けている画像を開いた。
「これがこっちの世界の下着かな。他にもあるけど、こんなもんだと思う」
「……えーっと、まず聞きたいんだけど、この絵は何? いや、写真なんだろうけど、この人は何をしているの? 娼婦?」
こんな格好で決め顔をしているモデルさんを理解できないかもなー。
あっちの世界の女性は基本的に長そでやロングスカートであり、肌を見せている人は少ない印象だ。
「モデルだな。まあ、この人はそっちの人じゃなくて、この下着を宣伝しているんだよ。これは男が見る絵じゃなくて、女の人にこういうのがありますよって見せているんだよ……えーっと、これとかが服のパターン」
普通の服を着ているモデルさんを見せる。
「あ、ホントだ」
「綺麗な人だろ? この服を着たら自分もこうなるかもーって思わせる人だな」
美人やイケメンは何を着てもきれいに見えるからなー。
「わかるよ。前に王妃様が着てた服が流行になったりしたし」
「それそれ。それを店がやって、購買意欲を掻き立ててる」
「なるほどねー。しかし、こっちの世界は下着まで凝ってる。下はあんま変わんないけど、あっちの世界は上が布だしねー」
「布?」
「こう、巻く感じ」
フィリアが自分の胸に何かを巻くジェスチャーをする。
さらしみたいな感じかな?
「なるほどねー」
「あー……そっちを先に買ったほうがいいって言いたいのか……」
そうじゃないならどう思ってたんだろ?
マジでセクハラと思ってない?
「そういうこと。下着コーナーかー……まあ、連れていってやるか。男が行くところじゃないけど」
「よろしくー」
まあ、店員さんに任せて、外で待ってるかねー……
いや、待てよ!
こいつ、言葉が通じねーじゃん!
「母親が恋しいわ……」
母親がいれば言葉も通じるだろうになー。
どうでもいいけど、あの人は言葉をどうしたのかね?
訛りもなく、普通に日本語をしゃべってるけど……
「さっきまでババアとか、どうでもいいとか言ってたくせに」
罰が当たったか……
「……通訳か。まあ、しゃーないか」
「よろしくー」
さっさと残っている酒を飲み干すと、早めに出かけることにした。
朝早くから行けば、他の客が少ないだろうと考えたからである。
色々買う予定なので、フィリアを連れて電車に乗り、ショッピングモールにやって来た。
まだ開店したばかりの時間だというのに客がすでにそこそこいる。
フィリアの手を取り、さっさと下着コーナーに向かった。
そして、下着コーナーに着くと、非常に気まずい思いを我慢し、店員を捕まえる。
「あのー、すみません」
「はい。何でしょう?」
男が下着コーナーにいるというのに、女の店員さんは嫌な顔をせずに対応してくれる。
「この子、外国人で言葉が通じないんですけど、ちょっと見繕ってもらえませんかね?」
「もちろん大丈夫ですよ! えーっと、サイズは?」
知らね。
結構あるぞくらいは知ってるけど。
「その辺も初めてなんですけど……」
「あー、では、測りましょうか」
「ちょっと待ってくださいね」
店員さんに待ってもらうと、フィリアに通訳しようと思い、口を開いたが、すぐに閉じた。
よく考えると、このまま話すのはマズいな。
店員さんからしたら通訳が外国人に日本語で説明する謎の状態だ。
仕方がないのでフィリアに耳打ちをすることにした。
「……サイズを測るんだってさ」
「わかった」
フィリアに小声で説明すると、頷いたのですぐに店員さんを見る。
「お願いします」
「では、こちらに」
店員さんが試着室っぽいところを指す。
「……あそこで測るからついていけ」
「わかった」
店員さんとフィリアは試着室の方に歩いていく。
待ってようかと思ったが、この場に一人でいる恐怖を感じ、すぐにあとを追った。
店員さんとフィリアはそのまま試着室に入ったので、試着室の外で気まずい思いをしながら待つ。
変な意味でなく、中に入れてほしいわー。
その後、サイズを測り終えたフィリアに店員さんの説明やおすすめなんかを通訳するという苦行をしながらもフィリアの下着を購入した。
正直、ゴブリンの腹を搔っ捌いた時の方が楽だった。
俺のテンションはガクッと落ちてしまった。
Dだってさ!!
役得で知ることができた俺のテンションはグーンと上がった。
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