第002話 助かった
目の前には裸の長い金髪の女性がいる。
身長は155センチくらいであり、手足も体つきも全体的に細い。
しかしながら、しっかりと主張している胸部は吸い込まれそうなくらいに魅力的だ。
顔も可愛く、好みではある。
そんな女性を前にしているのだが、性的興奮は出てこない。
何故なら、それ以上に気になることがあるからだ。
女性の白い柔肌にでっかい蛇を巻きついているのだ。
しかも、本人は気付いていないっぽい。
多分、霊的なもんだろう。
「あ、あの……」
「あ、すみません」
さすがにじっくり見るものじゃないと思い、慌てて、後ろを振り向く。
「こちらこそ、すみません。すぐに服を着ますから」
謝るの?
「あ、あの、ここってどこ?」
そのままの体勢で聞いてみる。
「ここ? ヤークの森だけど?」
やーく?
まったく聞いたことがない。
「全然、わからん」
「えーっと……あなたはどこから来たの?」
女性が聞いてくる。
「日本」
「へー……」
「知ってんの?」
「聞いたことがないね」
でしょうね。
絶対にそんな気はした。
「えーっと……」
「あ、振り向いていいよ」
そう言われたので振り向くと、先程の女性が白いローブのようなものを着て、柔和な笑みを浮かべて立っていた。
杖を持っているところから見て、魔法使いかもしれない。
まあ、見た感じはどちらかというと、ヒーラーっぽい。
もうそれでわかったが、ここは確実に日本どころか、地球ではない。
「俺はリヒトだ」
黒木リヒト。
それが俺の名前だ。
言っておくが、キラキラネームではない。
…………母親が外国人なんだから仕方がないだろ。
「リヒトさんね。私はフィリア」
名前的に日本人ではない。
まあ、俺も外国人の母親がつけたからそっち系で通じる名前なんだけどさ。
「リヒトさん、ひょっとしたら異世界人じゃない?」
異世界人…………
「いや、そもそも、ここが異世界なのかもわからん。家にいたと思ったら森にいた」
「ここはエスタとエーデルの境界くらいの場所だね。エスタとエーデルに聞き覚えがある?」
知らねー。
でも、絶対に地球にはないな。
「異世界っぽい……」
「やっぱり」
「わかるの?」
「服装や雰囲気でね。見たことがない格好だもん」
フィリアにそう言われて、自分の格好を見る。
家でゴロゴロしていたので下がジャージで上が無地の白Tシャツだ。
「フィリアはここで何をしているんだ?」
「仕事。今は休憩中で水浴びをしていたところだったんだ」
あー……
「その節は申し訳ない。遭難していて、水場を探していたんだ」
「いや、それは仕方がないよ」
フィリアは苦笑いを浮かべているが、許してくれるようだ。
実に良い子である。
ちょっとホレそう。
「なあ、町とかってあるのか?」
「あるけど、遠いよ?」
「どんぐらいかかるん?」
「歩いて10日」
遠すぎだろ!
「マジ?」
「うん」
「フィリアはそんなところで何を? 仕事って言ってたけど」
「護衛の仕事だよ。私達はエーデルの冒険者なんだけど、知り合いの商人がエスタに商売に行くってことで護衛の仕事を受けたんだよ。それで今はその帰り」
うん……冒険者って何だろ?
「達ってことは仲間がいるのか?」
「そうだね。あと2人いる」
ふーむ……冒険者は護衛なんかをこなすのが冒険者って感じかな?
きっと強いんだろう。
「なるほどなー」
「リヒトさん、これからどうするの?」
どうしようかね?
まだ24時間は経っていないだろうし。
「どうした方がいい? 俺はこの世界を知らない」
「一緒にエーデルに行く? 依頼主に確認しないといけないけど、馬車があるし、町までは連れていってくれると思うよ」
ふむ。
渡りに船とはこのこと。
救世主だ。
「すまん。お願いしたい。このままでは死ぬ。もう足の感覚がない」
「うん……裸足だね。なんで裸足?」
「俺はさっきまで家にいたんだよ。そしたら急に森の中だ」
「大変だね……もうちょっと我慢して。こっちだから」
フィリアが右の方に歩いていったのでついていく。
「フィリア、おぶってくれ」
「無理。リヒトさんは異世界人なんでしょ? 特殊なスキルとかないの?」
特殊なスキル?
もう持ってますけど?
俺の不思議パワー。
「何それ?」
「私も詳しくは知らないんだけど、異世界人がこちらの世界に来る際に特殊なスキルをもらうものって聞いたことがある」
ん-?
「もらうって?」
「この世界は女神様が作った世界と言われているんだよ。それで異世界からの住人にはこの世界で生きるためのギフトを授かる決まりがあるんだって」
ほうほう!
じゃあ、俺も何かあるわけだ!
「何かな?」
「わかんない。逆に何かいつもと違う感じはないの?」
足が痛い。
「うーん? 元々、持ってるからなー」
「元々? 何かあるの?」
霊媒師って言っても通じないだろうなー。
「占い的な?」
「ほうほう? どんなの?」
女性の占い好きっていうのはこっちでもそうなのね。
「ふーむ……近いうちに人生の分岐点に立つって出たぞ。最初に思いついたのが正解だから悩んだらダメだぞ」
「分岐点? 何それ?」
「知らない。もっと詳しく見ても良いけど、100万……」
円なんか持ってないか。
「リヒトさん、なんかうさんくさいね」
フィリアが笑う。
「よく言われる」
15分程度歩くと、道に出て、停車する馬車が見えた。
馬車の前には商人らしきガタイの良いおっさんと冒険者っぽい若い女が2人いる。
女2人のうち、1人は長身の剣士であり、背が高く、身長が170センチある俺よりも高いだろう。
持っている剣も大きく、ちょっと怖い。
もう1人は小柄な子で150センチ程度だと思う。
というか、猫耳が見える。
異世界だし、コスプレではないだろう。
そういう種族なのかもしれない。
「んー? 誰だ、お前?」
長身の女が聞いてくる。
「迷子」
「アンナ、異世界人っぽいんだよ。遭難してたから拾ってきた」
フィリアが補足説明してくれる。
「異世界人? 怪しいな」
「盗賊じゃないですか?」
「こんな弱い盗賊はいないぞ」
詐欺師だけど。
「まあな……」
「ゴブリンも倒せそうにない……」
ゴブリン……あ、やっぱり魔物なんかもいるんだ。
「そうそう。フィリア、この人が依頼主の商人か?」
おっさんを指差しながらフィリアに聞く。
「うん」
よしよし。
「やあやあ、商人さん、さっきフィリアが説明したんだが、俺は異世界人で遭難中の可哀想な人間だ。ぜひとも、町まで連れていってくれ」
「ハァ? いや、それは構わねーが、なんか軽いな、あんた」
「さっきまで深刻だったぞ。もう足を見たくないレベル」
そう言うと、皆が俺の足を見た。
「うわぁ……旦那、馬車に乗りな。これ以上はマズいぞ」
「フィリア、回復魔法をかけてやれ」
「痛そー……」
やっぱり?
ズタボロだもんな。
俺はお言葉に甘え、荷台に腰かけた。
すると、フィリアが俺の前で腰を下ろし、足に手を掲げる。
「何?」
「ヒール。動かないでね」
フィリアがそう言うと、足がぼんやりと光り出し、温かくなる。
そして、ズタボロだった足があっという間に治り、痛みもなくなった。
「おー! すげー!」
「ウチにヒーラーがいて良かったな。そのままだったら化膿して、足を切断になってもおかしくなかったぞ」
長身の女が頷く。
「よし、お前らも乗れ。出発しよう」
商人のおっさんがそう言うと、他の女性陣も馬車に乗り込み、出発した。
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