第001話 異世界へ行けるアプリ!
俺は今日も昼間からリビングのソファーで寝ころび、テレビを見ている。
「ワイドショーばっかりだな……」
俺は高校卒業してから7年間、ずっとこの家に住んでいる。
その間、就職したこともないし、バイトもしたことがない。
こう言うと、ニートに聞こえるかもしれない。
実際、近所のおばちゃんに『リヒト君、家で何をしているの?』って聞かれたこともある。
まあ、ウチは都内でかなり良い一戸建てを建てられるくらいのちょっとした金持ちだし、生活に困ることはない。
両親も海外で遊び惚けており、かなり裕福と言えるだろう。
しかしながら、俺も一応は働いている。
「昨日は3万円の儲けかー……1週間は何もしないでいいか」
俺の職業は霊媒師である。
物心がついた時から様々な能力が使えた。
他の人には見えないものが見えたし、ちょっとした未来も見えた。
霊や悪いものを祓うこともできた。
他にも運命を変えたり、言霊も使えた。
まあ、具体的に言うと、霊媒師ではないかもしれないが、自分の事を何て言えばいいのかわからないので、そう名乗っている。
なお、これは中学から名乗っており、中学、高校の心無い友人は俺の事をインチキ霊媒師と呼んでいた。
もしくは、インチキ占い師や詐欺師。
理由は簡単。
俺はこの不思議パワーを金儲けにしか使っていないからだ。
母親も不思議パワーを使えた。
というか、俺はそんな母親の力を受け継いだのだろう。
母親はこの不思議パワーを使い、宝くじなどの博打で儲けていた。
だからこの家だって豪華だし、両親は働きもせずに海外で遊び惚けているのだ。
父親もなんかあるらしいが、詳しくは聞いていない。
「しかし、つまらんな」
もうこの歳にして、人生に飽きた気がする。
同級生は必死になって働いており、そういう意味ではほぼニートの俺は幸せだろう。
しかし、FIREするのには早すぎた。
ゲームもテレビも飽きたし、外に出るのも億劫になってきた。
なんかこのまま窓際に置いてある観葉植物みたいな人生を送りそうで非常に怖かったりする。
でも、何かをしようという気力も起きないのだ。
「ハァ……」
立ち上がると、テレビの横にある棚まで行き、置いてある家族写真を見る。
そこに写っているのは黒髪のおっさんと金髪碧眼のおばさんだ。
その間に黒髪でオッドアイな子供が座っている。
もちろん、両親と俺である。
母親は聞いたことがないイースとか言う国の外人らしい。
つまり、俺はハーフだ。
「スピリチュアル系の芸能人として、デビューしようかなー」
そして、アイドルや女優を騙…………アドバイスし、良い関係を築くのもアリかもしれない。
「ハァ……あほくさ」
ため息をつくと、テーブルに向かい、さっき買ってきた弁当を開けた。
そして、再び、携帯を弄りだす。
午後からは何をしようかなーと思いながらまとめサイトを見ていると、スクロールの操作を間違え、変なところをクリックしてしまった。
すると、スマホは何かをダウンロードし始めた。
「あ、ミスった。変なもんをダウンロードしちゃったよ」
ウイルスかもーって焦ったが、占いによると、今日の俺はツイているから問題はないだろう。
「ん? 何だ、これ?」
どうやらダウンロードを終え、何かのアプリが勝手にインストールされているようだ。
「チッ! 霊的なもんは得意だけど、機械はわかんねーんだよな……こういうのに詳しい客に聞いてみるか……」
めんどくせーなーと思いながらインストールされたアプリを見てみる。
「……文字化け? 何だ、この文字?」
英語ではないし、ましてや日本語でもない。
アプリのショートカットには謎の文字が書かれている。
「ん?」
何故かそのアプリをクリックし、起動したくなった。
「あれ? これ、何かの魔法っぽいもんがかかっているな。危ない、危ない。フッ! 残念だったな! 霊媒師であるこの俺にはそんな魅了的な魔法は効かんぞ! わはは-!」
俺は危ない危ないと思いながらもスマホをタップし、アプリを起動させた。
「あれ? あ、やべ! 看破したと思って油断しちゃった!」
アプリを起動してしまうと、スマホ画面がぐるぐると回る謎の動画が始まった。
「気持ち悪っ!」
だが、その動画から目を離すことが出来なかった。
そして、俺の目の前が光に包まれ、何も見えなくなった。
◆◇◆
「ふえぇ…………」
俺は思わず、幼女みたいな声が出た。
それもそのはず……俺はさっきまで自宅にいたはずだ。
なのに、視界に広がっているのは木、木、木である。
どう見ても森だ。
「え? え? 何これ? ここどこ?」
俺はキョロキョロと周囲を見渡すが、何もない。
いや、木や草むらはあるんだけど……
「マジで何だ、これ? これまで様々な不思議を体験したが、これはぶっちぎりの一位だぞ…………」
どっかにワープでもしたのか?
それとも絵本の世界にでも入ったか?
ってか、俺、裸足だし……
「えー……」
途方に暮れ、その場で立ち尽くすことしかできない。
どのくらい立ち尽くしたかはわからないが、俺はふと、これはさっきのアプリのせいだと思い、スマホを起動させる。
「えーっと、圏外か…………」
まあ、そうだろうなーと思い、アプリを起動させた。
すると、画面には謎のカウントダウンが表示されている。
「23時間44分……50秒、49秒…………」
カウントダウンは少しずつ、減っていっている。
これはもしかして、次のワープまでの充電期間かもしれない。
「24時間……1日に1回使えるのかな? まあ、24時間後に帰れる保証はないが、待つしかないか……スマホの充電は……96パーセント。まあ、大丈夫だな」
スマホの充電が十分にあることにホッとした。
これで充電が切れたら充電器がないこの状態では頼みの綱が切れることになる。
どうせ圏外だと思い、スマホの電源を切ると、周囲を再度、見渡す。
「ホント、何もないなー。こんなところで24時間もいんの?」
飯もない。
布団もない。
屋根すらない。
気候的には暖かいし、凍えることはないだろうが、遭難という文字が頭にちらつく。
というか、腹が減ってきた。
そういえば、俺、弁当を食べるところだったんだ……
「動くか……ここが地球かどうかもわからんが、オオカミや熊でも出たら餌になってしまう」
俺は不思議パワーを持っているが、強いのは霊にだけだ。
獣にもその辺のヤンキーにも負けてしまう。
というか、盗賊とか出たらヤベーな。
「一刻も早く隠れられる所に行かなくては!」
おそらく、その辺の一般ピーポーはここで下手に動き、更なる不運やアクシデントに見舞われるだろう。
しかーし! 俺は違う!
俺には不思議パワーがあるのだ!
俺は目を閉じ、自らを占う。
「むむ! 北が幸運、東が現状維持、西が災難、南が女運に恵まれていると出た!」
占いは必ずしもそうなるとは限らないが、大体当たるし、大抵は上手くいく。
「東と西はないな」
北か南か……ここは南だな!
「さて、南は…………え? どっちだ? えっと……」
空にある太陽を見る。
「太陽がある位置が……何だっけ?」
こういう時に一般常識がないときついね。
別にバカじゃないけど、知らねーわ。
「そうだ! 年輪が偏っている方向が南と聞いたことがある!」
周囲を観察し、切り株を探す。
「ないねー……詰んだわ」
仕方がないので、適当な方向に歩くことにした。
「あー、腹減ったなー。しかも、足が痛い……」
素足で森はマジできつい。
「ここ、日本か?」
日本の森って山じゃない?
「異世界? それとも別の星か…………」
何にしても、人がいないので、どう判断すればいいのかわからない。
俺はさらに歩き続けるが、ついにはへたり込んでしまった。
「ダメだ。腹が減って動けねー……」
これ、24時間が経つ前に死にそうだわ。
というか、せめて水だけでも欲しい…………
「よし」
俺は立ち上がると、その辺に落ちていた木の枝を拾う。
「水はどっちだ?」
そう言って、枝を倒すと、左の方に倒れた。
「行くか」
足が痛いのを我慢してさらに歩いていく。
すると、木々が少なくなり、ちょっとした広場に出た。
「おー、水……だ?」
目の前にはちょっとした湖が広がっており、待望の水があった。
しかし、そんなことがどうでもよくなるような光景が目に映っている。
金髪の若い女性が裸でいるのだ。
「え? だ、誰?」
それはこっちのセリフ……でいいのかな?
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