第101話 文明の利器
トランプをしていた俺達だったが、1時間後、フィリアが料理の準備を始めたので、俺とヘイゼルはヘイゼルの部屋の片付けを行う。
といっても、本を本棚に収めるだけだ。
ヘイゼルの指示のもと、本棚に本を収納していくと、フィリアがやってきた。
「できたよー」
「はや」
「相変わらず、あんたって、手際がいいわよね」
ホントだわ。
「いや、今日はテストも兼ねた簡単なやつだから」
テスト?
テストという意味がよくわからなかった為、リビングに向かった。
リビングにあるテーブルの上には白いものが入った鍋が置いてある。
その下には黒く平べったいものが敷いてあり、コードがテーブルの下にある黒い機械につないであった。
また、鍋の周りには野菜やパンが置いてあった。
「何これ?」
この世界にはあまりにも似つかわしくない光景に首を傾げる。
「チーズフォンデュ!」
「食べたかったんだよねー」
いや、チーズフォンデュは何となくわかるんだが……
「これ卓上のクッキングヒーターだよな? え? 電気は?」
クッキングヒーター電源が刺さっているこの機械は何?
「電源はキャンプとかで使うポータブル電源に繋いだ」
「私が買った!」
え? そんなんあるの?
よーく鍋を見て確認するが、チーズはちゃんと溶けていた。
「お前ら、すげーなー。俺より詳しいじゃん」
「逆になんであんたが知らないのよ?」
「俺、キャンプしねーもん」
料理もしないもん。
「まあ、いいじゃん。食べよう」
「あ、お酒、お酒」
俺は2人のアクティブさに頼もしさを感じつつも、自分の無能さにちょっとへこみながら席に着く。
「リヒトー、何飲むー?」
ヘイゼルが酒を漁りながら聞いてくる。
「ブドウのやつー」
チーズフォンデュといえば、ワインっぽいのでブドウの酎ハイにしよう。
ワインは飲めないのだ。
ヘイゼルが酎ハイの缶を3つ持ってくると、席についた。
どうやら全員がブドウの酎ハイを選んだようだ。
ヘイゼルから酎ハイを受け取ると、缶が冷えており、魔法で冷やしてくれたのがわかる。
全員が席についたので、乾杯をし、チーズフォンデュを食べ始めた。
「美味いなー。俺、実は初めて食べたわ」
「そうなんだ。ホントに美味しいよねー」
「私の勘が当たった。これは絶対に美味しいと思ったわ!」
ヘイゼルの勘はすごいね。
でも、お前、チーズが好きなだけだろ。
俺達は飲みながらチーズフォンデュを食べていく。
「他には何を買ったん?」
卓上のクッキングヒーターやポータブル電源に感心しながら聞いてみる。
「色々買ったけどねー。あー、ランプでもつける? 暗いし」
こっちの世界は電気がないため、部屋が若干、薄暗い。
「あ、私の収納魔法の中か……ちょっとつけてみよっか」
ヘイゼルは収納魔法からランプを取り出すと、テーブルの端に置き、つけた。
すると、部屋が明るくなる。
「おー、すげー」
「明るいねー」
「もう何個か買えば、あっちの世界と変わらない光量を出せるかなー」
まあ、そうかもしれんが、木の家だし、このぐらいの明るさがちょうどいいような気もする。
「どんどん近代化するなー」
「お風呂に入りたかったけど、それはどうしようもなかったね」
「まあ、帰った時よね」
お風呂はスペースがないしなー。
「フィリアはいつから本格的に住むん?」
「そりゃ、結婚したらだよ」
今思ったけど、結婚って何だ?
あっちの世界では婚姻届を出せば、式をしなくても結婚だ。
こっちの世界は?
「なあなあ、結婚式とかあるん?」
「式? パーティー的なもの? 貴族はあるよね?」
フィリアがヘイゼルを見る。
「あるわよ。飲み食いして家同士の結束を強めるの」
「貴族はなんとなくだけど、想像がつくな」
漫画とかで見たことがある気がする。
「あと、農村とかでもやるかな……祝い事だし」
「町は? やんないの?」
「やる人もいる。でも、基本的には教会に行って、女神様に祝福をもらって終わりかな」
「何それ?」
そういう宗教なんだろうか?
「えーっと、儀式みたいなもので女神様に貢物を捧げるんだよ。それで祝福をもらうの。それをすれば夫婦になる。おじいちゃんに頼んだからいつでもやってもらえるよ」
あれ?
俺、もう捧げなかったっけ?
女神様、俺の酒を盗らなかった?
「へ、へー……」
「どうしたの?」
「俺、女神様にギフトはいらないから祝福してくれって頼んだわ」
そして、飲みかけの酎ハイを盗られた。
「あ、そういえば、やってた!」
「え? マジ? 勝手にやったの? マズくない?」
いや、知らんし。
そういう意味じゃないし。
「それはそれ、これはこれ、で大丈夫かな?」
「うーん、私、修道女なんだけどなー」
「ちょっと先走っただけだよ。正式には教会で神父様に頼むよ」
「まあいっかー……女神様だって、貢物を2回ももらえるわけだし、怒んないよね」
適当な修道女だな、おい。
「ってかさ、そうなると、私ら、もう結婚してんの?」
「うーん、どうだろう? 女神様は認めてくださってるとは思うけど、どうだろう?」
よくわかんない状況になっちゃったね。
「妻よ。気にするな。ちょっと順番を間違えただけだよ。飲みたまえ」
「夫よ。おかわりを取って。ブドウのやつ」
「あ、私も!」
立ち上がり、妻の分と自分の分の酎ハイを取る。
そして、それをヘイゼルの前に置く。
「妻よ。冷やして」
「私、冷蔵庫みたいね……」
「正妻さん、私のも冷やして」
「あのさー、逆に聞くけどさー、私が正妻で大丈夫だと思う?」
………………。
「……庶民には関係ない話だから」
「……そうそう。私達に差はないよ」
「リヒト、絶対に貴族にはならないでね!」
ならないよ。
というか、この中で貴族なのはお前だけだろ……
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