第卅弐話 「愛を私に」
私には何かが足りない。
それは一体何なのか。
感情?
物質?
それとも忘れてしまった記憶なのか、はたまた失われた時間なのか。
私は追い求めた。
時の始まりへ、いや、時の終わりへ、違う、価値のある場所へ、いや、意味のある場所へ、そうではない、安らぎを感じられる人へ、いや、喜びを感じられる人へ。
私がこれまで探し求めた先は、どれもこれも答えをくれなかった。
一体私は何を追い求めているのだろうか。
それすらも、分からなくなってしまっていた。
私には私という存在すらも、私ではないと感じてさえいたのだから。
私は、かつて確かに私だった。私というものが確かに存在していた。
それだけは、私の記憶の中に確かに残っていた。
だからこそ、私はひたすら探していた。
自由を、目的を、意思を、解釈を、意図を、意味を、ありとあらゆる概念を。
しかし、そこにも答えはなかった。
私は思考した。
これは言語的問題なのかも知れないし、宇宙的真理なのかも知れないし、宗教的な祈りなのかも知れないし、生命の神秘なのかも知れない。
だが、それはどれも、真であり、偽であり、この世の理とはまったく別次元の話なのだ。
だからこそ、私は迷い、惑い、疑い、躊躇い、そして喪失してしまったのだ。
一体何を失ったのか、いまだに私には分からない。
それは、とても大切なもので、なくしてはいけないもので、私にとってなくてはならないもので、これがないと私ではなくなってしまうものなのだ。
だから、私はこれまで時間を掛けて探し求めてきた。
たとえそれが地の果てであろうとも、時の果てであろうとも、宇宙の彼方であろうとも、次元の狭間の奥であろうとも。
誰か、私にそれを教えてください。お願いします。




