二十
『――――別れよう。』
手紙に書かれたその文言を見たとき、僕の頭は著しく回転した。
窓際でなぜか肩を揺らしているK岡の姿が見える。
何泣いてんだよ。クソ野郎。
この手紙が置かれたタイミングは、僕が他クラスに行っている間だった。僕が他クラスに行くことなんて珍しいことではない。普段からクラスを転々としているからこそ、今こうして観衆を集めることが出来たのだ。
じゃあどうして、このタイミングで置いたのか。
僕がいろんな人に『今日の昼休みにK岡を振る』という事を話しているのを聞いたのかもしれない。でも、このクラスでは一切口に出していない。
つまりは、他クラスでそのことを聞いた人が、K岡に共有したということに他ならない。
だからと言って、普通ならば傷つきはしても、僕が振るより先に振るなんて行為には至らないだろう。それも、手紙で。
結論―――K岡は恥をかきたくなかったのだ。
僕に振られるのも僕を口頭で振るのも、嫌だったから手紙で書くだけにした。
せめて口頭だったなら、僕も反論できたのに。反論させないように自分からとりあえず振るだけ振って、逃げた。
そこまで思考が加速して、僕の怒りは頂点に達した。
「おい、K岡!お前――――」
と、K岡の座る席に向かって行った時、僕とK岡の間に壁が出来た。
それはあの、彫りの深い顔をしたモアイの委員長―――Y下によるものだった。
「なんだよ、どけよ。」
Y下は両手を大きく広げて、どかなかった。
「―――あなたは、女心が分かってない。」
澄ました顔で、Y下は言った。
「部外者は口を挟むなよ。」
言いたかった。
「お前に関係ないだろ。」
言いたかった。
「飾った台詞を吐いてんじゃねぇよ。」
言いたかった。
けれど、言えなかった。
僕はそれに何も反論できずに、観衆の元に逃げ帰った。
「女心が分からない?僕の心の事も分からないのによく言うよ。」
言った。けれど、それを僕が言った相手は観衆たちだった。
そうして僕の、最初で最後の恋は終わりを迎えた。




