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07

 前期の終了期限が近づいてきている。

 半数以上の同級生は学園に戻ってきていて、訓練場も少し騒がしくなってきている。


「個人テストってどんな感じなんだ?」


 学園が夏休みに入る前に、個人テストが行われる。

 学年が変わってから、最初に個人テストがあったらしいのだが、その頃の俺はサーナさんと宿で勉強の真っ最中だった。


「攻撃役、防御役、補助役で別れて、それぞれ評価されるって感じね」

「何をするかは当日までわからないけど、それぞれの役割をどの程度出来てるか評価するから、普段通りでいいんじゃないかな」

「そうなると、俺って攻撃役なのか? 防御役になるのか?」

「あー、アラタの場合は……どっちなのかしら?」

「好きな方でいいんじゃない?」

「適当だなぁ……」


 攻撃役というよりは、後衛の二人に攻撃を通さないつもりで前衛を引き受けているので、防御役でテストを受ける事にした。


「それにしても……」


 訓練場にいるパーティーも、それぞれ様子が違う。


 鬼気迫る様子で訓練とは思えない程全力でゴーレムを相手にしているパーティー。

 課題の最中に何かミスを犯したのか、「この前の依頼でもお前は──」というように揉めているパーティー。

 複数のパーティーで模擬戦をしている集団など様々だ。


 俺たちはというと、少し離れた所でキーゼの風魔法の検証を行っている。

 人が増えてきてからは、精霊魔法を試す頻度は下がったが、こっそり試す分には問題ないだろう。

 キーゼにも姿はみせないようにお願いしている。


 月光草の納品依頼で、体が軽くなったような効果の補助魔法についてわかった事がある。


 俺たち三人に、同時に掛ける事ができたのだ。

 しかし、一人に集中して掛けるよりも効果は落ちる。

 三人に同時に補助をかけてもらっての鬼ごっこはなかなか楽しかった。


 効果が落ちるとは言っても、普段よりも圧倒的に速い速度での鬼ごっこだ。

 目がついて行かない以上に、自分の体がついて行かなかった。

 ミリーリアが捕まりそうになった時、こっそり【二兎を追う者は一兎をも得ず】を使って反則負けになったり、セレイナが珍しく転んだりと面白いものが見れた。


 セレイナ曰く、身体強化が自身の力で速度をコントロールできるのに対して、キーゼの補助は外部から押し出されるような感覚だそうだ。

 良く分からない擬音を解釈したから、厳密には違うのかもしれないが、多分合っているだろう。


 それなりに成果が得られたので、この風魔法を【風身(ふうしん)】と呼ぶことにした。


 キーゼは、ミリーリアとセレイナの二人とも仲良くやっているようで、上下に動いて了承の意思表示をしたり、時には静止して拒否、あるいは出来ないという事もきっちり伝えているようだ。


 俺たちのパーティーは、かなり順調に成長している。

 後期の課題も問題なくこなせそうだ。



 誰一人欠けることなく、同級生は全員期限内に戻って来たようだ。

 久しぶりに教室にクラスメイト全員が揃う。


 担任のヘッグ先生から、明日の予定を伝えられた。

 個人テストを行うと聞かされても、誰一人嫌そうな顔をする者はいない。

 将来に直結するので、皆真剣な表情だ。


 テストを控えているという事もあり、俺たちも今日はゆっくり過ごす事にした。



 そろそろ寝ようというタイミングで、俺の部屋にカガリビさんが出現した。

 これはやってきたとは言わない。

 カガリビさんの隣にはキーゼが浮いている。


「【お休みになるところでしたか】」

「【その寸前って感じですね】」

「【それは失礼しました。キーゼも楽しそうですし、何よりです】」

「【そういえば、聞きたい事があるんでした】」


 キーゼが俺たちの言葉を理解している。

 どうしてか聞こうと思っていたのを忘れてた。


 忘れていたというより、気にしなくなったというのが正しいかもしれない。


「【精霊だからといって、他の言語を覚えられないとう事はありません。キーゼは貴方達の言語を覚えたのでしょう】」


 えぇ……。

 普通……。


 と、いう事はカガリビさんも俺たちの言葉が普通にわかっているのだろうか。


「【他の種族の言語ですか。今はもう覚える気はありませんね】」


 カガリビさんが言うには、他の種族の言語は移り変わりが激しく、また、新たに生まれては使われなくなる。

 どうせ今の言語も五百年後には意味が変わったり、使われなくなるだろうし、覚える必要性を感じないとの事だった。


 ……スケールが違った。


 カガリビさんって一体何さ……体が熱い!

 俺は考えるのをやめた。


「【キーゼは生まれたばかりですし、色々経験するのも悪くないですからね。私からは何も言いません】」


 カガリビさんの感覚が理解できないのか、キーゼは上下左右、そして前後にと、今まで見せた事動きをしている。


「【キーゼはそのままでいいのですよ。気の向くままに、自由に過ごしてください】」


 優しく語り掛けるカガリビさん。

 本当に不思議な関係だ。


 そんな二人(?)の様子を眺めていると、カガリビさんが本題と言った感じで切り出された。


「【貴方はいつになったらあの女に精霊言語を教えるのですか? いつまでまっても接触する気配もないですし、忘れてたとは言わせませんよ?】」


 あ、決定事項だったんだ。

 催促しにこの部屋に現れたのか……。


「【キーゼから聞きましたよ。明日能力テストがあるのだとか。いい機会です。キーゼの力を見せつけるのです。そうすればあの女から接触してくるでしょう】」


 えぇ……。

 そんな予定全くなかったのに……。

 目立たず、無難な結果で終わらせようと思っていたのに。


「【そろそろお休みになるんでしたね。では、明日はお願いしますね】」


 そう言って、カガリビさんは消えてしまった。


「なぁキーゼ、カガリビさんみたいにはならないでくれよ……」


 俺の呼びかけに、キーゼは静止で応えた。

 明日どうしよう。



 訓練場に移動し、テストが始まるのを待っていると、入り口から見覚えのある集団が現れた。


 短髪赤髪で、銀の鎧を身に纏ったロイさんを先頭に、全員ではないが隊員さん達が訓練場にやってきた。


 もしかして……。


 どうやら、個人テストの試験官はロイさん達、騎士団で確定のようだ。


 ロイさんは全体をバランス良く見渡しているが、隊員さんは俺たちの方をチラチラ見過ぎではないだろうか。

 

 テストの内容は、それぞれが担当する役割ごとに別れて、騎士団を相手に一対一の模擬戦、あるいはロイさん対隊員さんと補助要員の組み合わせで行うという事だった。


 ロイさんと模擬戦をしないで済むとわかり、少し安心した。


「ロイさん達が試験官なんだー。頑張ろうね」

「ちょっと意外だったわね」

「だな。ま、お互い全力を出し切ろうぜ」


 俺たちはそれぞれの役割の場所へと向かった。

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