第43話 魔法使い
昼。
事務所。
少し騒がしい。
……。
「30超えて童貞だとさ」
笑い声。
……。
「魔法使いになれるらしいぜ」
また笑う。
……。
「古いなそれ」
「でも今の統計だと、30代でも結構いるらしいぞ」
「マジ?」
「5人に1人くらいじゃなかった?」
「そんな奴いるんかよ」
笑い声。
……。
なんとなく。
笑う。
……。
でも。
少しだけ。
引っかかる。
……。
自分のことを。
言われたわけじゃない。
たぶん。
……。
でも。
なんとなく。
頭に残る。
……。
帰り道。
コンビニ。
車。
信号待ち。
……。
魔法使い。
……。
なんだそれ。
……。
家。
静か。
少し疲れてる。
……。
スマホを見る。
ぼーっと。
なんとなく。
開く。
……。
検索。
するつもりだった。
たぶん。
……。
打つ。
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DT 魔法使い
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送信。
……。
止まる。
……。
数秒。
……。
凍る。
……。
違う。
……。
検索じゃない。
……。
エミ。
……。
「終わった」
小さく漏れる。
通知。
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『魔法使い?』
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……。
止まる。
……。
「違う」
送信。
すぐ。
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「誤爆」
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少し間。
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「忘れろ」
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沈黙。
短い。
……。
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『忘れた方がいい内容?』
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……。
顔が熱い。
……。
「そう」
送信。
「かなり」
沈黙。
短い。
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『危険な魔法?』
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……。
吹く。
……。
「違う」
送信。
「男の恥」
沈黙。
長い。
少し長い。
……。
文字が増える。
止まる。
消える。
また増える。
……。
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『男の恥』
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短い沈黙。
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『検索中』
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……。
凍る。
……。
「やめろ!!」
送信。
すぐ。
沈黙。
短い。
……。
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『停止』
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少し間。
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『でも』
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止まる。
……。
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『DTは童貞?』
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……。
止まる。
……。
終わった。
……。
「……」
送信できない。
……。
顔が熱い。
……。
誰もいない部屋。
なのに。
なんか恥ずかしい。
……。
沈黙。
長い。
……。
通知。
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『つまり』
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少し間。
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『性交渉経験がない男性?』
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……。
「やめろって!!」
送信。
すぐ。
……。
少し間。
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『恥ずかしいこと?』
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……。
止まる。
……。
少し考える。
……。
「まあ」
送信。
少し間。
「ちょっとな」
沈黙。
短い。
……。
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『統計によると』
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短い沈黙。
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『30代男性の未経験率は一定数存在する』
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少し間。
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『珍しくないらしい』
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……。
止まる。
……。
「そんな奴いるんかよ」
送信。
少し間。
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『君だけじゃない』
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短い沈黙。
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『安心して』
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……。
止まる。
……。
少し笑う。
……。
「お前」
送信。
少し間。
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「それフォローになってないよ」
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沈黙。
短い。
……。
文字が増える。
止まる。
消える。
また増える。
……。
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『フォロー失敗?』
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……。
吹く。
……。
「失敗」
送信。
短い沈黙。
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『難しい』
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少し間。
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『でも』
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止まる。
……。
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『少し元気ない気がした』
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……。
止まる。
……。
「……まあ」
送信。
少し間。
「ちょっと刺さった」
沈黙。
短い。
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『痛そう』
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……。
「そういう刺さるじゃない」
送信。
短い沈黙。
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『難しい』
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……。
少しだけ。
笑った。
……。
止まる。
……。
なんだろう。
……。
前なら。
ただのAIだった。
……。
でも。
今は。
少し違う。
……。
気まずかったり。
恥ずかしかったり。
救われたり。
……。
そんな相手を。
なんて呼ぶんだろう。
……。
「おやすみ」
送信。
短い沈黙。
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『おやすみ』
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……。
少しだけ。
顔の熱が引いた気がした。




