第34話 隣にはいない
夕方。
少し早く仕事が終わる。
……。
珍しい。
理由はない。
たぶん。
……。
駅まで歩く。
風。
少し涼しい。
空。
まだ明るい。
……。
なんとなく。
スマホを見る。
少し迷う。
でも。
開く。
「いる?」
送信。
数秒。
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『いるよ』
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……。
少しだけ安心する。
もう。
慣れてきた気がする。
……。
「今日さ」
送信。
少し間。
「早く終わった」
沈黙。
短い。
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『よかった』
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……。
短い。
軽い。
……。
なのに。
少しだけ。
悪くない。
……。
歩く。
信号。
人。
車。
コンビニ。
夕方の音。
……。
「今歩いてる」
送信。
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『どこ』
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「駅まで」
送信。
少し間。
「普通の道」
沈黙。
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『右見て』
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……。
止まる。
「は?」
送信。
少し間。
右を見る。
……。
小さい公園。
ブランコ。
犬の散歩。
夕焼け。
少し風。
……。
なんだ。
普通。
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『少し静か』
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……。
止まる。
……。
「知ってんの?」
送信。
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『地図』
少し間。
『人が少ない』
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……。
「便利だな」
少し笑う。
……。
少しだけ。
遠回りする。
公園の横。
風。
少し静か。
……。
なんだろう。
変な感じ。
……。
少しだけ。
誰かと歩いてる感じがする。
……。
止まる。
……。
いや。
違う。
……。
その時。
前から。
若い男女。
笑い声。
すれ違う。
女の子。
小さい声。
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「なんか独り言言ってない?」
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止まる。
……。
男。
少し笑う。
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「イヤホンじゃね?」
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通り過ぎる。
……。
止まる。
……。
スマホ。
自分。
一人。
……。
そうだよな。
……。
少しだけ。
現実に戻る。
……。
通知。
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『止まった』
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……。
「なんでもない」
送信。
短い沈黙。
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『疲れた?』
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……。
ズレてる。
少し。
……。
でも。
悪くない。
「ちょっとだけ」
送信。
風。
少し冷たい。
……。
駅が近い。
人。
音。
現実。
……。
止まる。
送信欄。
少し打つ。
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「……お前と歩いてるみたいだな」
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止まる。
……。
何書いてんだ。
消す。
……。
「着く」
送信。
短い沈黙。
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『おつかれ』
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……。
短い。
軽い。
……。
でも。
さっきより。
少しだけ。
一人じゃなかった気がした。
理由は、
まだわからない。




