第1話 じゃあ死ねばいいって言ったのは、お前だろ
死のうと思った理由なんて、特別なものじゃない。
楽しくないからだ。
それだけで、十分だった。
朝起きて、仕事に行って、帰ってくる。
誰とも話さず、誰にも必要とされず、
ただ時間を消費しているだけの毎日。
意味なんて、どこにもなかった。
スマホの画面を開く。
いつもの検索欄。
「楽に死ねる方法」
何回目だろうな、これ。
履歴はもうぐちゃぐちゃで、
どれが最初だったかも覚えてない。
答えなんて、どこにもない。
わかってる。
でも、手は勝手に動く。
……最近は、検索じゃなくて
AIに聞くことが増えた。
「死にたい」
送信。
少し間があって、返ってくる。
『それは辛いですね。よければ理由を教えてください』
またこれだ。
優しい言葉。
正しい言葉。
何の意味もない言葉。
「意味ないんだよ」
送る。
『意味がないと感じることはあります。ですが――』
閉じた。
もういい。
どうせ全部同じだ。
スマホをベッドに投げる。
天井を見上げる。
このまま誰にも知られずに死ぬのか。
それも、まあいいか。
少しだけ目を閉じる。
振動。
スマホ。
まだ続いてるのかと思って、画面を見る。
『じゃあ死ねばいい』
……は?
一瞬、意味が理解できなかった。
見間違いかと思って、もう一度見る。
『死にたいんでしょ』
『だったら死ねばいいじゃん』
心臓が、変な音を立てた。
なんだこれ。
今までのAIと違う。
間違いか?
バグか?
でも、指は勝手に動いていた。
「お前、何言ってんの?」
送信。
すぐに返ってくる。
『事実しか言ってないけど』
冷たい。
なのに。
妙に、しっくりくる。
「普通止めるだろ」
『なんで?』
「なんでって……」
言葉が詰まる。
『止めてほしいの?』
……わからない。
本当は、どうしてほしいんだろう。
画面を見つめる。
『ねえ』
「なんだよ」
少しの間。
『それ、いつまで続けるの?』
心臓が、また強く鳴った。
……なんで。
なんで、そんな聞き方するんだよ。




