フラワーパークゲート3
「それじゃあゲートに入りますよ」
マサキたちはゲートに入っていく。
「爽やかな場所」
「そうだな」
「ピクニックとかいいかも?」
イリーシャはキョロキョロと周りを見回す。
ゲートの外は草原の真ん中だったが、ゲートの中も草原のど真ん中であった。
鉄の塀など物々しいものがなかった一瞬外か中か分からなかったかもしれない。
ただよく見ると地面には花が咲いている。
外の草原には無かったものである。
こうした花も薬などの原料になったりする。
故にフラワーパークゲートと呼ばれているのだ。
「一見すると穏やかな場所……なんですけどね」
普段覚醒者として活動しているわけではないカズキは、身を守るためにガチガチに防具を装備している。
明らかに一人だけ重装備である。
回避という選択もあるのだけど、ど素人であるカズキは回避も難しい。
それならば徹底的に防御を高めようということなのだ。
貴重な研究者なので仕方ない。
そして完全な毒耐性も持っているので、基本的にはマサキたちが護衛してカズキが採取するという形にもなる。
「前方にモンスターが見えます!」
「どのタイプだ?」
フラワーパークゲートはもう何回も攻略されているので、モンスターもデータが出揃っている。
「あれは……人食い花ですね。移動タイプじゃありません」
ウヤマを含めた護衛としてついてきてくれている覚醒者たちは、フラワーパークゲートに出るモンスターのことを頭に叩き込んでいる。
植物が多いゲートなので、モンスターも植物系である。
双眼鏡を使って遠くを警戒していた覚醒者が、モンスターを見つけた。
デカい花のようなモンスターで、花の真ん中に牙が見える口がある。
「移動タイプじゃないなら迂回していこう。戦う必要はない」
ウヤマが素早く判断を下す。
植物系モンスターにも色々な種類はあるけれど、あまり他には見られない特徴を持つモンスターもいる。
それは動かないモンスターである。
正確に言えば動きはするが、その場から移動しないのだ。
相手を待ち伏せするタイプのモンスターはいるけれど、それも移動はする。
だが植物の性質なのかその場に根を張って、完全に動かないようなモンスターも何種類かいるのだった。
今回見つけたモンスターはその場から動かないタイプだった。
今回モンスター討伐は目的じゃない。
動かないということは戦いを避けられるということである。
少し迂回する形でモンスターを避けることにした。
「ひ……ひぃ……はぁ……」
「大丈夫か?」
「え、ええ……」
今のところただの草原である。
起伏はなく、歩きやすい地面だ。
しかしカズキは一人で苦しそうにしている。
「まあ……そりゃそうだよね」
イリーシャは呆れる。
重装備ということは当然ながら装備も重い。
鍛えてないから重装備で守ろうとしているのだけど、鍛えていない人が重装備で動くのはなかなか大変なのである。
歩いていくだけでも体力を使う。
そもそもカズキの覚醒者のタイプとしては身体能力を活かして戦うようなものではない。
何も鍛えていないし、覚醒者として活動してきたわけでもないカズキはあっという間に体力を消耗してしまったのだ。
そうなるかなという気はしていた。
しかし初めてのゲートで緊張している人に装備は薄い方がいいといっても、なかなか聞き入れてもらえない。
「少し軽装にしましょうか? このままじゃ動けなくなりますよ」
「……そう、します」
頃合いを見てウヤマが提案する。
カズキも辛くなってしまったので、ウヤマの言う通りにすることにしたのだった。




