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地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


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34/60

33.六階 〜いのちの恵み〜

■地下迷宮 六階 ナイラ 治癒術師Lv4→5 商人Lv2



「ここマで一緒に動いてタカラ

 そろそろ噂も広マってるダろうし

 おそラくあんたを食おうとする輩ハもう

 この階カラハいナくナるよ

 ──口添えもアるしナ」


「口添え?」


「じゃあな! また明日!」


気になる発言を残したまま

ウィンは走り去ってしまった


さすがに彼らが本気を出せば

あっという間にその姿は見えなくなる


ナイラは困り顔で笑い

首を左右に振った


とにかく疲れているし

更には空腹でもあった


早くテントを呼んで

休息を


転送ペグを使用すると

張ったままの状態でテントが現れた


しかし

いかんとも思った


テントに入ったら

もし

ごはんを食べる前であったとしても

すぐに眠ってしまう自信がある


そろそろ食事をしないと

あり得ないほど腹の虫が鳴いている


ナイラは乾燥している食材を

水に入れて火にかけ煮込んだ


干し肉や野菜入りのシチューは

探索での定番の料理だ

今回は穀物も入れてリゾットにしている


温かくて肉や野菜の出汁が

穀物に染み込んでて

薄味なのが優しくて

空っぽだったお腹の中が

穏やかに満たされていく


いつしか食べ進める度に

涙がこぼれてきた


ぱく もぐ ごくん

ぽろ ころ ぱたり


(──ごめんね

 でも同じ現場にもう一度立ったら

 私また傷を治すと思うの

 捕まった子を助けないのに

 残った親を治療するの


 ──でもありがとう

 あなたたちのおかげで

 私はまだ生きていて

 出来立てのごはんが

 こんなにも美味しい)


ぱく もぐ ごくん

ぽろ ころ ぱたり


ナイラは手で涙を拭いながら

美味しいリゾットを平らげていく


(──ごめんね

 美味しい

 幸せ

 ありがとう)


二人分はあったはずのリゾットを

一人で食べ尽くしたナイラは

鍋を洗ってようやく眠りについた


 * * *


寝て起きたら気付いたこと

いつの間にかレベルが上がっていた


成功率の低い術を

次々と行使したからだ


無理もたまには

やってみるものだと思う


お腹も満たされた今なら

もう少しだけ頑張ってみようと

素直に前を向ける


ナイラはテントを畳まずに

対になっているペグの片割れを

数日分の食料と一緒に

ナップザックに入れて出発した


草食動物の群れを横目に

向かう先は

ウィンたちが守っていた

七階行きの転送陣だ


 * * *


「ナイラ! 来タのカ」


「結局

 地上にはまだ戻ってないんですよ

 進むか止めるか七階を見てから

 決めようと思って」


するとウィンの目が

じっとりと湿度を帯びた

非難の気配だ


ナイラは慌てて両手のひらを

顔の高さまで持ち上げて見せると言った


「いや!

 十階まで行くべきっていうのは

 頑張れる範囲で

 するつもりではありますよ?

 目標として忘れはしないです」


そこまで言うとライオンは

牙を全部見せて大きく笑った


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