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地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


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24.五階 〜ヒントの集約〜

■地下迷宮 五階 ナイラ 治癒術師Lv4 商人Lv2


「い いや

 そんな大層なものではないが……」


困った風情で首を横向けた玄武だ


どこからか取り出した風呂敷き包みを

尾の蛇がくわえて差し出してくるのを

自分の口に受け渡してから

ナイラの爪先付近に置いて広げる


「探索者からわたくしにと捧げられたものの中に

 わたくしには要らぬものがいくつもあるのだ

 ──もしうぬに入用なものがあれば

 持っていくが良い」


「はあ

 ありがたきしあわせ……」


どれどれ

とナイラが不用品の山を見つめる


が

ひどい


地上の武器屋で無料で手に入る

『さびた剣』


使いすぎて底が抜けてる調理器具

『焦げた鍋』


使いものにならないテント張りの道具

『折れたペグ二本』


探索者たちはケチっていたのだろうか

渡すほうが失礼に当たりそうな

ガラクタの類(たぐい)を見ていると

ナイラは何だかどんよりしてくるのだった


──が

ひとつ

気になる品があった


折れているペグだが

魔力を帯びているのが感じられる


もしやと思い

ひとつ持ち上げてみると

残ったひとつが床の上から転移して

ペグの片割れを持った手のひらの上へ現れた


「転送ペグ!

 玄武様

 私これが良いです!」


「そうか

 わたくしにはガラクタに見えるが

 うぬにとって価値があるなら持っていくが良い」


「ありがとうございます!」


ナイラが長らく欲しかったものを

やっと手に入れたことで

喜びに打ち震えていると

トヤが不満げな顔で呟いてきた


「なかなか礼ができないな」


「ふふ

 さっき口添えしてもらって

 すごく助かりましたけど?

 それはノーカウントってことで

 良いんですか?」


「なんのあの程度」


「そしたらまだお楽しみは

 継続中ってことですね

 ふふふ

 何をもらおうかな」


「忘れるなよ

 『この迷宮内にあるもの』

 だけだからな」


「はぁい」


ナイラは玄武に礼と別れを告げると

トヤとともに麒麟の元へ向かった


「そう言えばトヤさん

 すごいタイミングで来てくれましたけど

 玄武様には何のご用事だったんですか?

 私と一緒に来ちゃって大丈夫でした?」


「──いや……ちょっと

 なんだ

 玄武に用事ではなく

 ……別件のついでだ」


「そうなんですね

 会えて良かったぁ」


平静を装ったトヤの表情から

様々なものを読み取るには

まだナイラは

人生経験が不足していた


彼女は彼に

一番来たかったのはこの階であること

麒麟の出す謎の答えに

すぐ気付いてしまったこと

方位神たちには

よくしてもらったことなどを

身振り手振りまじえて伝えていった


「方位神?

 ──ああ

 あいつらは四神と言うんだ

 好みの食い物を貢いだのは

 良い手だったな

 全然反応が変わるだろ」


「それも良かったですけど

 みなさま話し相手に飢えてらして

 おしゃべりしてたら

 ごきげんでしたよ」


「はは

 それはお前の人徳だな

 俺はやつらに話し相手になれと

 言われたことなどないぞ」


「さてはいつもの調子で

 偉そうに踏ん反り返ってたんでしょ

 獣とはいえ神様相手に

 失礼があってはいけませんよ」


「は

 礼節など要るか」


「トヤさん!

 良くな──」


「良い良いナイラよ

 その者はそれでな」


「麒麟様……」


麒麟はトヤをじっと見つめた後

その真っ直ぐな瞳の向く先を

ナイラヘ移した


「さて

 手がかりは集めてこれたかいね」


「はい

 方位神の

 ──四神のみなさまから」


「よくじゃんね

 そしたら青龍のものから

 順に聞きましょ

 得られた手がかりは

 爺の謎の解読に

 どのように関わっているかも

 含めて」


「はい

 えっと

 青龍様のヒントは


 『其は場合に依て

  三つにも四つにも分かれて

  考えられるものである』


 これは……たぶん三つの場合は朝・昼・夜

 四つの場合は夜明け・日中・夕暮れ・夜間

 ──そう分けられると、思いました」


「ふーん

 朱雀はどうかね」


「朱雀様のは


 『其は進み続けるが故に遅れ

  遅れたものは元に戻らない』


 とのことでした

 おそらく時計の針のことだと思います

 私も懐中時計を持っていますが

 定期的に遅れた針を進めて

 時刻合わせしています」


何となく

麒麟から楽しげな様子が見て取れた


自分の考えかたは

間違っていないということだろうか


そう思ってナイラは

最初ぎこちなかった謎の答えの解説を

徐々に滑(なめ)らかに

言えるようになっていった


「白虎様は


 『めぐりめぐる円の中

  人には始まりを知らせ

  鳥には終わりを告げる』


 と仰ってました」


長く話通しだと

口が乾いて咳が出る


ナイラは一言断って

水筒を口元へ運んだ


「これも解っただ?」


「おそらく

 この『鳥』はフクロウのような

 夜行性のものを

 指しているのではないかと思います

 時計の円盤の中で

 人に夜明けの目覚めを告げる頃

 フクロウたちは休眠に入るので」


「いいね

 して最後は

 どう?」


「玄武様はですね

 えーっとこっちか


 『子の間は長く豊かに流れ

  老いと共に流れ早くなるもの』


 これは私はまだ実感薄いんですけど

 歳を取ると一年が経つのが

 あっという間になるんですって

 そういうことを言いたいんじゃないかな」


ふふ

と麒麟が笑った

何度もうなずいている


「ほらほら

 見ました?」


と麒麟のほうを指さして

トヤに見せるナイラ


「合ってる合ってますよトヤさん」


うれしそうに告げるナイラと裏腹

トヤのほうはつまらなさそうに返す


「ふん

 一度くらいは

 間違えてしまえば

 面白いのに

 愛想のない娘だ」


「え?

 間違えても楽しいんですか

 この謎?」


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