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地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


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2/60

1.三階 〜単独行の始まり〜

改稿中につきローカルで試行錯誤してます。

変なとこありましたらご指摘いただけるとありがたいです。

■地下迷宮 三階 ナイラ 治癒術師Lv3 商人Lv2


(強くなるのよ──そう

 ひとりでもこの迷宮を

 お散歩できるくらいまで)


ナイラは悲鳴を上げそうな口元を

両手で覆って自身に言い聞かせた


(そうして約束を果たすの)


 * * *


ドラゴンとの出会いから

時間はさかのぼって

今ナイラがいる場所は

地下迷宮の三階


曲がり角は

身を隠すには

ちょうど良い


彼女は今

背にした壁にへばり付き

息を潜めて

時が経つのを

じっと待っているところ


べしゃり


ずるり


べしゃり


ずる……ずるり


べしゃん


湿気た足音が

太い尾を引きずりながら

進む気配が

徐々に大きくなってきた


ナイラは

ぎゅっと目をつむって

片方の手をおろし

逃走用の煙玉を握り込だ


怖い


もし戦いになれば

あれから逃れられる自信はない


(お願いあっち行って……!)


ナイラは必死で祈った


『強くなる』


その願いは

そのままの意味ではないのだ


ナイラは命の精霊に

戦ったり

命を奪ったり

そういうことはしないと

誓いを立てている


だから


彼女の求める『強さ』とは

戦えば勝てる強さではなく

戦う前から勝てる強さなのだ


それがどれほど難しいことか

知ってはいるけれど


あきらめずに

挑み続けている


──べしゃん


足音が


止まった


ナイラはすがるような心持ちで

ゆっくりゆっくり呼吸していたが

モンスターの足音が聞こえなくなり

閉じていた目を恐る恐る開いた


このフロアは

壁が蛍光の黄色に発光しており

灯りがなくても

周囲がよく見える


今ナイラは

壁を挟んだ向こう側の通路にいる

目付きの悪い大イモリを

やり過ごしているところ


角が丸い立方体の石のブロックが

等間隔に並んでいる迷宮

ブロックの一辺は

百五十センチほどだろうか


単独探索者(ソリスト)である彼女にとって

三階のこの明るさは

プラスでもあり

またマイナスでもある


彼女の黒色の瞳は

真ん丸く見開かれた目の中で

じっと動かずにいた


あれは図鑑によると

確か

毒を持っているモンスターだ


好戦的で

すぐに噛み付いてくる


触らぬ神にたたりなし


近寄らないに限る


イモリの尻尾が

床をこする

ズルリズルリという音が

ゆっくりと遠のいていき

やがて

聞こえなくなった


「ほー……ぅっ」


ほっとひと息した途端

鼓動が激しく打ちつける

彼女は苦しくなった胸元を

両手で押さえた


地下迷宮を

ひとりで歩くようになってから

戦闘になりかけると

いつもこうだ


なかなか慣れない


けれど

立ち止まるよりも

進んでしまったほうがいい


それは十匹ほどのモンスターを

やり過ごして気付いたことだった


だから今回も

痛いほどの鼓動は無視して

イモリが進んだのとは

反対方向へ歩いていく


何度目かの命拾い


彼女は大きく深呼吸をした


 * * *


周囲を見渡せば

一階にはあったが

二階にはなかった苔が

ここ三階には生えている

明かりがあるからだ

後は水気も


三階の壁はどこも

触るとしっとりしている


水の精霊の気配もするため

この迷宮を作った折に

封じ込めたのだろうと

彼女は予想していた


三階に来てから

水辺にいるはずの魔物を

よく見かけるようになった

そこから考えても確かだろう


魔物


彼女は

敵対的な魔物──モンスターと

人間の探索者の一行(パーティ)

その両方から隠れて

一人でこの迷宮を攻略している


それを思う時

ふと考えるのだ


なぜ

自分は恐怖心と闘いながら

ひとりで迷宮を探索しているのだろうか?


やがては

ひとり歩きが

できるようになりたい


とはいえ

それが現実的な目標になる

そこまでの間は

仲間を連れていたほうが

安全だ


でも答えはとっくに彼女の中で出ていた


ナイラは命の誓いを守りたいのだ


それは治癒術師が守護精霊に誓う願掛け

彼女は出会った負傷者を治療することを

命の精霊に誓っている


──たとえそれが魔物であってもだ


しかし魔物の治療をしたがる仲間など

探索者のパーティからは浮いてしまう


しかもナイラのいたパーティは

善良な魔物を金儲けのために

虐殺していた


ナイラはその違和感に耐えられず

自ら仲間たちと袂を分かったのだった


まだ懐かしく思うほどには

別れてから日数が経っていない

元仲間たちのことを

少し思い出して吐息をひとつ吐き出し

彼女は気を取り直した


■地下迷宮 入口


「なあリーダー

 マジで思ってんのか?

 ナイラが戻ってくるってよ」


「そりゃな

 戦闘スキルなしにひとりで

 ここの攻略なんてあり得ないだろ

 席が空いてりゃ戻ってくるさ」


「現実的に考えれば戻ってくるなんて

 絶対あり得ないけど

 アタシも信じたいわ

 ナイラがいれば安心だもん」


「お前らなぁ……

 あいつに頼りすぎだったんだって」


「とにかく傷薬のストックだけは

 切らさないようにして先へ進もう

 回復役は──新しくは迎えない

 いいな」


地下迷宮の入口で

三人組が作戦会議を立てていた


戦士と魔術士と盗賊

典型的な探索者一行は

彼らに回復役の僧侶や

治癒術師を入れて成立する


ナイラのうわさ話を切り上げて

彼らは迷宮内部へと進んでいった


改稿してたら少し長くなったので、1エピソードだった三階を3エピソードに分けることにしました。

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― 新着の感想 ―
緊張感がすごい章でした! 三階の描写がとても細かくて、湿った空気や光る壁の雰囲気がよく伝わってきました。ナイラの慎重な行動や、モンスターとの駆け引きも読んでいてドキドキします。黄金のニワトリとのやり取…
初めまして! あらすじ通りのほのぼのした雰囲気が良いですね。 文章の改行などが少し独特ですが、 紡ぎ出される言葉のチョイスのセンスが素敵です。 面白かったので、ブクマさせて頂きました。
ニワトリさん親切ですが、ちょっとポンコツさんでしたね(笑 でも確かに結果オーライ♪ どうにかエレベーターにトークンを入れられて良かったです♪ 不思議な雰囲気のお話ですね〜。 少し謎めいた感じが不思…
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