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無償の愛  作者: あお


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親の気持ち_後半視点変更有



騎士寮にお呼ばれしてから、明日で一週間が経とうとしていた。


(ヴォルさんの休みの日に魔法を教えてくれるって言ってたけど、休みの日聞いてなかったなぁ…)


いつなんだろうと、慣れてきた野菜の皮むきをしているとお義父さんが私の手元を見て満足げに頷いた。


「もう随分手馴れてきたな」

「うん!結構薄く剥けるようになったし、包丁の扱いもだいぶ慣れたよ」


よしよし偉いぞーとなでなでされていい気になる私は鼻を高くしていた。

うまく剥けるようになったし、うまく切れるようにもなった。

焼くのは…少し焦がしてしまうけど、それでも弱火でじっくりやれば結構見た目もいい感じに出来るようになってからとても楽しくなってきた。


コクリ君がパン作りにのめり込む気持ち、こういう感じなんだね。きっと。

切った野菜や肉たちを焼いて、塩を軽く振りかけて、炒めていると、閉店したはずの店の扉が開いた。

そして現れたのは鎧姿のヴォルさん。


「あらぁ、ヴォルティス様じゃない!」


喜ぶお義母さんに、兜を外してヴォルさんがお辞儀をする。


「急に尋ねてしまい申し訳ない、アレンに用があってきたのだが…」


火にかけたままのフライパンをお義父さんに任せ、私はヴォルさんのところに向かう。

するとふわりと柔らかい笑みを向けてくれて、なんだか嬉しいし安心するけど、お義母さんが見てると思ったら恥ずかしくなった。


「急にすまない…、アレンに俺の休みを教えてなかった事に気付いて…、明日は大丈夫だろうか?」


申し訳なさそうに様子を伺うヴォルさんに私が返事をする前に間髪入れずに、お義母さんが答えてしまう。


「ええ、大丈夫ですよ!」

「なんでお義母さんがいうの?!」

「だってアレンお店の事気にするじゃない?」

「私だって、ヴォルさんの都合考えるよ!」


あらそうなの?と笑うお義母さんにむくれていると、頭上から笑う声が聞こえた。


「すまない、なんだか新しいアレンの一面が見れて…、で、アレンは明日大丈夫か?」


先程のお義母さんと私のやりとりをみてか、もう一度、しかも私に尋ねてくれたヴォルさんに大きく頷いて見せる。


「はい、大丈夫です」


そんな私にヴォルさんは微笑みながら、鎧越しに頭を撫でる。


「では先週と同じくらいの時間帯に迎えに来る」


そういって足早に立ち去ろうとするヴォルさんを引き止めるのはお義母さんだ。


「せっかくですし、ご飯食べていかれませんか?」

「魅力的なお誘いだが、今は仕事の合間に寄っただけで、まだ勤務中なんだ。すまない」


ヴォルさんの返しにお義母さんは残念そうにしていたが、私はドキドキしていた。

勿論、ときめきじゃなくて冷や汗的な意味で。


「せっかくアレンが__」

「あ!あの!ヴォルさんまた明日!」


余計なことをお義母さんが言う前に大きく声を出して遮ることに成功する。


仕事中のヴォルさんは食べていくことはないだろうが、それでもお義母さんもお義父さんも私に甘い。

料理を習い始めてから、晩御飯は私の作った一品も置かれているのだ。

それこそ焦げていても_お義父さんが見ているから黒炭になることは回避されているが_、「アレンの初めての料理」って言って嬉しそうに嫌な顔もせずに口にしてくれるのだ。

ヴォルさんがもし興味を示すことがあったら、お義父さんもお義母さんも自信満々に見せてしまう光景を容易に想像できるから焦ってしまった。


店を後にするヴォルさんに手を振っていると、お義父さんが厨房から出てきて、そのままヴォルさんを追って外に出ていく。


「お、お義父さん?」


突然のお義父さんの行動に首を傾げる私の背を押して、お義母さんが私を厨房に連れて行く。


「ほら、お父さんのことはいいから。まだお肉生じゃないの?お父さんがいなくても炒めれるでしょ?」







■■■■■■■■■■■■■■■■■







「待ってくれヴォルティスさん!」


さすが騎士というべきか、店から出て時間が経ったわけでもないのに、走ったのかと思う程遥か先を鎧をまといながら颯爽と歩いていた。

空は既に朱色に染まり、太陽が落ちていっていることから、俺の店同様に他の店も閉まっている。

ちらほらと一般人が出歩いているところを考えると、今日の最後の客だったのだろう。


そんなどうでもいいことを頭の片隅で考えながら、ヴォルティスさんを大きな声を出して呼び止めた。

鎧越しでも聞こえたのか、足を止め、わざわざ俺の方に歩いてくるヴォルティスさんに駆け寄る。


「どうかしたのか?」


そう問うヴォルティスさんに俺は首を振った。


「アレンの事、サリーナと話しました」


今から1週間程前、アレンが騎士寮に呼ばれた日。

アレンの記憶についての可能性を俺はヴォルティスさんに聞いた。

そのことをサリーナに告げると驚いていたが、すぐに顔を引き締めた。

そして、サリーナの考えは俺と同じだった。

アレンが辛い思いをしたのなら、無理に思い出させることはしてほしくない。

だが…


「もし、…もしアレンが記憶を取り戻したいと願った場合は、出来る限り協力してあげてほしいと思います」


アレンだけではない。

アレンもレインも俺たちの子供だ。

子供が笑顔で幸せに暮らせていけるのならば、親としてこれ以上の事はない。

だが、同時に子供の願いを叶えたいと思うのも親心というもの。

例えそれが辛い事だとしても。

それがアレンの為にも繋がるとするなら…。


深く頭を下げる俺にヴォルティスさんは上げさせ、俺と目を合わせる。


「わかった」


力強い眼差しに俺は思う。


(ああ、悪いレイン…。父さん応援しているが、この人ならアレンを幸せにしてくれるって思っちまったよ…)



レインに申し訳ない思いを抱きながら店に戻り、出迎えてくれたサリーナに目をやると、俺がヴォルティスさんに伝えた内容を察したサリーナも頷き返してくれた。

普段通りアレンの傍に行く。

炒め終わったのかトングを使って大皿に移している手元を覗き込むと、少し葉が焦げてはいたが、許容範囲の焼き具合でそれはそれは美味しそうに出来ていた。

それに俺が見てなくても安心できる出来栄えに褒めてやると、頬を染めて喜ぶアレンの姿に胸が温かくなる。




(本当に、本当にこの子には幸せになって欲しい)



アレンが買ってきてくれたパンに、余ったスープをよそって、簡単な夕飯を家族で囲んだ。















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