第159話 エリーゼたちの戦い
ファインが単独で城を出た後、フォースター・エルトリア同盟もまた北へ向けて出発しようとしていた。
一方、ルナたち残された星の英雄たちのメンバーもまた、ファインの後を追おうとしていた。
「チクショー! ファインの奴、オレたちを置いて行くなんてよぉ! 水臭いじゃねぇかよぉ!」
「しょうがないわね。こうなったら、私たちでファインを追いかけましょう!」
「でもよ、追いかけるったって、どこに行くんだ?」
「あら、そんなの決まっているじゃない。北へ行くのよ。ゲブたちにはエルトリア王国の北にある砦で襲われたんだから。ファインもきっと北へ向かったわ」
「おお、そうか! 言われてみれば、確かにそうだな!」
「そうですね、ルナの言う通りですね」
「そうと決まれば、私たちもすぐに出発しましょう!」
「おう! 星の英雄たちの魂を見せてやるぜ!!」
こうして、ルナたちはファインの後を追ってすぐに城を出た。
一方、ライズ率いるエルトリア王国軍はまだ城にいた。
全ての準備が整っていないからだ。
「チッ。星の英雄たちめ、勝手な行動を……」
「勝手な行動は許せません。すぐに彼らを連れ戻します!」
「いや、いい。今はゲブたちを処罰する方が先決だ。彼らのことは放っておけ」
「はっ」
「まったく、アイツらったら……ホント勝手なんだから! あたし達を置いて行くなんて!」
「ファインさん、ルナさん……」
エリシアは、勝手に出て行ったファインたちに対する不満の声を上げる。
一方、アリシアは心配そうに二人の名前を呟く。
「よし、我々も準備ができ次第、すぐに出発する。すべては、逆賊ゲブを粛清するために……」
「はっ!」
その後、ライズ率いるエルトリア王国軍も、ゲブたちを粛清するために出発した。
そして、城を出てから数日が経過した。
現在、一行は森林地帯を行軍している。
しかし、エリーゼたちは運悪く盗賊団に遭遇してしまった。
「チッ、盗賊団か」
「待ち伏せしていたのか!」
「ようやく来たか。待ち詫びたぜ」
数こそ三十人程度で、決して多くはない人数である。
中央のリーダーらしき男は剣を装備している。
だが、ライズにとってその男は知っている顔触れであった。
「貴公は……ヘイル!?」
「久しぶりだな、ライズ王太子殿下。いや、ライズ!」
「ゼオン帝国との戦いで活躍した、貴公がなぜこんなところに……!?」
「オレたちはお前ら王族を許さねぇ!! 戦場で死んでいった仲間たちのためにも、お前らにはここで死んでもらうぜ、ライズ!」
ヘイルの正体は、かつてエルトリア王国軍に協力していた傭兵団の団長であった。
彼はゲブと同様、平民出身の男であった。
それゆえに軍内でも冷遇されており、ヘイルは不満を抱いてた。
戦後、活躍した自分たちに何一つ報酬を与えなかった王族や貴族たちを憎み、ヘイルたちは盗賊に身をやつすことになる。
その後、貴族などの身分の高い者を狙い、金品などの略奪を働いている。
そして、現在ではゲブと協力して王家滅亡のために『革命』を起こすために戦っている。
「さあ行くぜ、ライズ。お前ら王家に裁きの鉄槌を下してやるぜ!!」
そう言って、ヘイルは剣を抜いた。
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エリーゼたちはヘイル盗賊団の団員たちとの戦闘になる。
エルトリア王国軍は合計百の兵力を集めている。
これに対して、ヘイル盗賊団はその半分にも満たない人数である。
だが、ヘイルたちは一対多の戦闘を心得ている。
そのため、王国軍よりも盗賊団の方が上手である。
元傭兵団たるヘイルたちは、戦場で常に死と隣り合わせであった。
ゆえに、戦いの中で生き抜く術を身に付けていた。
「うわああああッ!!」
「くっ、何て強さだ! 元傭兵団の実力が、これほどとは!」
「当然だぜ。のうのうと生きてきたお前ら騎士団と、俺らとではワケが違うんだよ。俺らはゼオン帝国との戦いの際、常に死と隣り合わせだったんだよ。そして、お前らが捨て駒にし、死んでいった仲間たちの恨み、今ここで晴らしてやるぜ!!」
ヘイル盗賊団の団員は、エルトリア騎士団を蹂躙する。
次第に、王国軍はその戦力を消耗しつつあった。
そんな中、エリーゼとアリシアたちミネルバは善戦していた。
「氷結剣!」
エリーゼは剣を振り、王国式剣技を放つ。
巨大な氷の刃が、何人かの盗賊を襲った。
しかし、エリーゼはすぐに次の盗賊たちに囲まれてしまった。
「チッ、舐めるな! 戦闘経験は俺たちの方が上だ!」
盗賊たちも負けじと、エリーゼに立ち向かう。
エリーゼは盾で敵の攻撃をいなしつつ、剣で反撃に出る。
自分に向かって来た盗賊たちをあっという間に倒すエリーゼ。
実力は一般の盗賊団員よりも上だ。
「侮ってもらっては困るな。私はエリーゼ・ロックストーン。フォースター王国の聖騎士だ。貴様らのような下劣な輩には負けん!」
エリーゼは剣と盾を構えて果敢に立ち向かった。
「ドリルブラスト!」
フランが魔力を込めて槍を突き出す。
すると、ドリル状の旋風が槍の先端から発射される。
この攻撃により、三人の盗賊が薙ぎ倒された。
「どうだ! ボクの攻撃を見たか!」
フランはここぞとばかりに自分の力を自慢する。
しかし、喜んだのも束の間。
すぐに次の盗賊がフランを狙う。
ところが、エリシアの放った弾丸が眉間に命中した。
「フラン! アンタはいつも前に出すぎよ! もっと周りを見なさい!」
「だって、前に出るのがボクの役目だもん。それに、アリシアやエリシアがいるから、ボクが安心して前に出られるんだよ」
「まったく、この子ったら……」
エリシアの魔導弓は、いつもの狙撃型から連射可能なものに変えていた。
そのため、一度により多くの敵を攻撃することが可能だ。
「この魔導弓、今まで使っていた物よりも使いやすくて強力だわ。あのドワーフが作ったってことだけは癪だけどね」
盗賊たちは束になってエリシアに挑む。
接近戦なら有利に戦えると思ったからだ。
しかし、エリシアは近づかれる前に魔導弓で近づく敵を一掃した。
「さあ、どこからでもかかって来なさい!」
一方、アリシアも敵から距離を取りつつ、三本の矢を同時に放つ。
「マルチショット!」
盗賊三人の眉間に、矢が同時かつ的確に命中した。
弓使いであるアリシアは、敵に接近する訳には行かない。
そのため、後方から仲間の援護に徹する。
ミーナは二本の短剣を持ち、柔軟かつ素早い身のこなしで敵を翻弄する。
「そんな動きじゃ、あたしのスピードにはついてこれないニャ!」
猫の獣人たるミーナは素早さに優れている。
そのため、盗賊たちはその動きに追従できなかった。
「ボクの力、見せてあげるよ!」
フランが猪突猛進と言わんばかりに、敵陣に突っ込む。
そして、槍で敵を串刺しにする。
実力は一般の盗賊よりもミネルバの方が上だ。
一人の盗賊が、背後からフランを狙って攻撃した。
ところが、エリーゼが盾で防御し、すぐさま剣で反撃した。
「大丈夫か? フラン殿」
「エリーゼさん!」
「一人で突っ込み過ぎるな。敵は手練れだぞ!」
盗賊たちはエルトリア軍よりも、次第にエリーゼたちを警戒し始める。
「こいつら、思ったよりも強いぞ! エルトリアの騎士どもよりも、こいつらを優先して叩くぞ!」
「おう!」
盗賊団の注目が一気にミネルバに集まった。
「フラン、こっちもチーム戦で行くニャ!」
「うん、わかった!」
「私も全力で戦おう。行くぞ!」
エリーゼはミネルバの仲間たちと協力して戦う。
これによって、アリシアたちは盗賊団を少しずつ倒して行くのであった。




