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鳥には羽根 魚には鱗  作者: 阿古あおや
59/89

羊肉は熱いうち(善は急げ)2

 「クロム」


 掛けられた声に、クロムは足を止めた。


 そろそろ日は中天からねぐらに向かって滑り落ち始め、一刻ごとに気温が下がるのが感じられる。そんな時間。

 だが、王宮前の鉄道馬車の駅が混みあうにはまだ早い。


 「今日から三日間、今度こそ、絶対に!休暇を取れよ!これは命令だ!」と主に命じられ、正確には二日と半日の休暇を過ごすべく、あまり気が進まない足を駅へと向けた。

 駅を使わなくても、転移陣で移動すればもっと早く帰れるが…鈴屋経由にすると、またなんとなく駄弁って自宅へ向かう足が止まる気がする。

 

 両親に会いたくないわけではない。

 変わりない顔を見て安心したいし、話したいことも二日じゃ足りないほどある。


 けれど、それと同じくらい…「守護者を諦める気になったか」と聞かれるのが嫌だ。

 

 クロムにとって両親は、ファンとナナイを除けば、この世で一番大切な存在だ。

 もしも両親が人質に取られて、「帰してほしくば…」とやられたら、ユーシンくらいならやると思う。

 

 だからこそ…この世の誰に理解されなくても、両親…特に父には、守護者スレンになるという生き様(ゆめ)を応援してほしかった。

 

 もちろん、反対する理由はわかる。

 剣を握ったこともなく、馬だってろくに乗ったこともなかった子供が、「紅鴉の守護者(ナランハル・スレン)」になるためには、文字通り死ぬほど鍛える必要があった。

 毎日のように服を破き血で染め、体中痣だらけになって帰ってくる…それでも治療された結果だったのだが…我が子を見て、いいぞもっとやれと言える親は少ないだろう。


 それでもクロムを閉じ込めたり、大都から引っ越して修行から遠ざけるという事はせず、「辞めたくなったら、いつでも辞めなさい」と言うにとどめておいてくれた。

 だが、その言葉も気配も、決して「それでいい」とは思っていない。

 

 瀕死のファンを護衛して大都に戻り、最新医療(スライム漬け)を受けている間に、自宅へ戻らずクトラ戦士の刺青を入れた。

 完全に彫り終ってから、長く留守にすることを告げるために家に帰った時、父は絶句したし母は泣いた。


 つまりは、両親を哀しませた。


 わかってくれない事も、今の自分(ナランハル・スレン)と言う存在が両親を哀しませ、苦しませるのも、しんどい。


 新品の騎士服を身に纏い、背には無双の至宝『紅鴉の爪』を背負う、というこの姿は、なりたかった自分そのものだ。

 普通なら、鼻高々で自宅へ戻り、親戚一同揃えてお披露目をするところだろう。

 騎士になるだけでも、親戚一同集まって祝いをする快挙である。まあ、元々クロムにはそんなに集まるほど親戚がいないが。


 けれど、きっと両親は…刺青を入れた日と同じ顔をする。

 そう思うと、冷たい石を飲み込んだかのように、腹の奥が痛くなる。


 何とはなしに腹を擦っているその時、声を掛けられた。


 「クロム」

 「…マシロ。あー…なんだ。さっきぶりだな」

 「ああ、さっきぶり」


 分厚い冬用の外套の上に、羊の毛皮で裏打ちしたマントまで羽織った幼馴染は、記憶にあるより痩せた顔で笑った。

 ついこないだ鈴屋であって、今日もちらっと顔は見た。だが、やはり、「痩せたな」と内心に呟いてしまう。


 「お前も、今帰りか?」

 「ああ。今日は仕事にならない。工房長がアレじゃな」

 「うぜぇおっさんだったな」

 「腕はいいんだ。腕は」


 だが、痩せた顔は明るく、動作にも衰え、弱った様子はない。

 士官学校に行っていたころの、若き武人そのもの、と言った気配や筋肉の盛り上がりもないが、十分健康そうだ


 「クロムは、ついに休暇とれって追い出されたのか?」

 「まーな。三日後に迎えにくるってよ」

 「ファンとして?それとも、お前の主として?」

 「どうだろうな。俺も目立ちたくはないって言ってあるから、ファンが来るんじゃないか」


 任命式はやるけどな。士官学校卒業の時にやるやつは不参加にさせちゃったし。


 そうファンは申し訳なさそうに言っていたが、それはまあ、別にいい。

 そんな面倒くさい事をしなくても、自分は紅鴉の守護者なのだし、むしろその後に控えているだろう守護者の儀とやらの方がよほど気になる。


 角笛の音が高らかに鳴り響き、鉄道馬車が駅に入ってきた。

 王宮前は終着点であり、出発点である。ジルチ広場から車を牽いて走ってきた馬は軛を外され、この駅の馬場で休憩を取り、元気な馬が新たに馬車に繋がれるのだ。

 

 せっかく休んでいたのに…と不機嫌になる馬もいれば、良し仕事だ!と張り切る馬もいる。今回、クロムたちの乗る馬車を牽く馬は、足取りも軽く首も真っすぐ持ち上がって、気合十分の様子だ。


 乗り込む客はそう多くなく、クロムとマシロが乗った客車に、他の客は三人ほど。

 思い思いの馬車に散らばって座り、特に互いを気にする様子もない。


 まあそれでも、一年ぶりにゆっくりと話す機会を得た幼馴染と離れて座る、と言うのも味気ないだろう。

 だから、マシロが隣に座ってもクロムは文句も言わず、黙って背負っていた『紅鴉の爪』を前に抱えなおした。


 「それ…」

 「ああ、中身は刀だ。ま、ちょっと、鞘がないんでこうやって持ち運んでいる」


 不思議なことに無爪紅鴉旗で包んでいると、他の出来合いの鞘のように切り捨てたりはしない。

 確かに無爪紅鴉旗にも鋼糸が縫い込まれ、防刃効果はあるが…そのおかげではないだろう。


 「答えなくていい。あってたら、頷いてくれ。もしかして…それは、『爪』なのか?」

 

 一瞬目を見開き…それからクロムは小さく頷いた。

 何故知っている、と一瞬疑問は浮かんだが、あれだけあの工房長とかいうおっさんが騒いでいたのだから、察しはつくだろう。

 

 「驚いた。本当に、お前が持っているんだな…」

 「そりゃ、アスランのナランハルは爪が短いからな」


 本来、紅鴉の意匠は右足の爪が一本だけ長い。

 太陽を選んだ際に『真の鋼』がくっついてしまった、という説話からだ。


 代々の二太子ナランハルは、己の守護者に『爪』を預ける。

 だから、『無爪』紅鴉旗を二太子の証として掲げるのだが、それを知るものはそう多くはない。


 星龍、月虎、雲熊…それぞれの神獣の名を冠した武器もあるはずだが、クロムはそれがどんな形状をしているのかすら知らない。

 つまり、本来なら神獣の名を持つ武具は厳重に保管され、持ち歩くなどとんでもない!と言う代物なのだろう。


 三太子、四太子に渡された武具はともかく、一太子トールなら持っていれば使うはず。しかし、トールが持つ神具は、雷帝の刻印を持つものに授けられるという、雷帝斧だけだ。

 その雷帝斧も、持っているのは知っているが、見たことはない。


 なので、少々得意顔を晒してしまったが、クロムが持っているのを驚くのは当然だ。しかし、今更得意顔を引っ込めるのも格好がつかないので、クロムは黙って窓の外に視線を向けた。

 ちょうど、軽い衝撃と共に鉄道馬車が動き始めたタイミングだったので、そう不自然には見えなかっただろう。


 「それ…そのまま、持って帰るのか?」

 「盗まれるようなへまはしない。ま、それに万が一盗まれても、そいつの心臓が破裂するだけだ」

 

 そのあたりの逸話について、クロムはあまり信じていないけれども。

 だが、あの大鍛人が、あれほど苦悩の表情で「手を出せない」と言い切ったのだから、何かはあるのだろうと少し考えを改めている。


 「…そのな、お節介だとは思うんだが」

 「ん?」

 「お前んちに持って帰って…おじさんやおばさんが、うっかり触る、なんてことはないか?大丈夫か」

 「…」


 クロムに向けられるマシロの視線には、畏れすら感じられた。

 調整や研ぎを主にやっていると言っても、鍛冶に関わるものとして、『紅鴉の爪』と『真の鋼』に対しては、畏怖の念を抱くのは当然だ。

 

 「嫌なことを言うけれどな…もしも『それ』を失くすとか、そんなことになったら…お前、責任取って、守護者も騎士の資格も剥奪される、よな?」

 「それは…」

 「お二人とも…かなり、お前の身を案じてたからさ。そういう強硬手段に出ないかと…まあ、さすがに杞憂か」

 「さすがにそんな事はしない…と思うが」

 

 『紅鴉の爪』は、アスランの至宝だ。

 もしも、その至宝を損なうようなことがあれば、資格の剥奪などと言う生易しいものでは済まない。贖いはクロムの命を要求される。

 下手をすれば、ファンの首も必要になる。それほどのものだ。


 だから、幾ら息子を案じ、思い詰めた末の行動だとしても、その先にはその息子の無残な刑死が待っている。

 幸い、クロムの両親は想像力皆無の刹那主義者ではない。だから、そんな馬鹿な手段をとるはずはない、と思う。

 

 「そうだよな。と言うか、お前も馬鹿正直に『それ』が何か言わないか」

 「あ、たりまえだろ」


 完全に教えて見せて、「紅鴉の守護者になった」と胸を張るつもりだったクロムは、少々詰まりつつも首を振って見せることに成功した。

 確かに、そもそもこの包みがアスランの至宝だと伝えなくてもいいのだ。

 ただ、守護者の証に下賜されたのだと言っておけば。


 「いや…それはそれで、危険か」

 「え、なんでだよ?」

 「ファンから貰った剣だってくらいは言うんだろう?そうしたら、それこそ強硬手段にでないか?」

 「あ…」

 

 確かに、『紅鴉の爪』をどうこうすれば大罪だ。

 しかし、ただの下賜された剣なら、主から贈られた剣を失くした不忠者として、騎士資格の剥奪くらいで収まる可能性は高い。


 「いや、最終的には思いとどまると思うよ?ギル先生。けど、ものがものだけにな…壊すとか捨てるって意志を以て『それ』に触れたら…危険なんじゃないか?」

 「それは…確かにな」


 直そうと手に取ることすら拒絶する『紅鴉の爪』が、壊す捨てるなどと言う感情を許すとは思えない。

 最終的に、両親はクロムの意思を曲げてまで騎士を、守護者を辞めさせようとはしないだろう。 

 

 だが、思い詰めて、迷うことは…おそらく、ある。

 その迷いが、「下賜された剣」に手を伸ばさせてしまったら。

 

 苦悶の表情を浮かべてこと切れた両親が、自分の部屋に倒れている…そんな光景を一瞬思い浮かべ…クロムはこみ上げた吐き気に手で口を覆った。


 戻るべきか。紅鴉宮に、『紅鴉の爪』を安置するために。

 そうすれば、少なくとも両親に危険はない。あそこには、ファンしか入れない部屋もある。その一つに置けば、クロムが戻るまで誰の手にも目にも触れずにすむだろう。


 だが、その時、何という?

 休暇を命じられたクロムが戻れば、当然理由を聞かれる。

 「両親がうっかり『紅鴉の爪』に触らないように」などと言えば、少なくともファンは察するだろう。


 通っていた学校の教師だった父の事を、ファンは今でも尊敬を込めて「先生」と呼ぶ。

 その尊敬する師が、息子には穏やかな生き方をしてほしいと思っていることも、知っている。


 『紅鴉の爪』に手を出すほど、クロムが守護者であることを望んでいないという事を、ファンは間違いなく抱え込む。

 それでクロムに守護者を止めろとは言わないが、抱えなくていい罪悪感をしっかりと魂に埋め込む。そういうやつだ。


 自分の存在が、信念おもいが、主の負担になるなどあってはならない。

 できればファンに知られないようにしたい。


 となれば、紅鴉宮に取って返すことは絶対になしだ。

 トールに預けるという手もあるが、クロムが星龍宮に向かったことがファンの耳に入らないとも限らない。


 「…本当に、お節介だが。私が預かろうか?」 

 「え?」

 「私の部屋には、鍵のかかる長櫃もある。そこに入れて、鍵はクロムが持っていれば、私も手出しができない」

 「それは…」


 良い、かも知れない。


 長櫃に入れられることを『紅鴉の爪』が納得するかだが、考えてみれば今まで旅をしている間、宿に入っているときは似たような扱いを受けていたのだし、几帳面なマシロの部屋なら、長櫃も清掃されてきれいなものだろう。


 マシロの部屋まで一緒に行って、鍵をかけて、そのままその鍵を貰えば、確かに誰も手出しはできまい。

 誘惑にかられたマシロが手を出して、『紅鴉の爪』の怒りに触れるということもないし、サモンが兄の部屋にのこのことやってきて、「なにこれ」と手を出すこともない。


 「そうだな…」


 頼もうか。と口を開きかけた時、ふと、視線を感じた。

 反射的に見上げれば、座席の背凭れに手を掛けて、一人の男が立っている。


 こんなやつ、乗っていたか?


 まず浮かんだのは、そんな疑問。

 乗客自体少ないうえに、男は立っていても見上げるような長身だ、ファンと同じくらいはあるだろう。


 さらにその上、身に纏うのは黒一色。

 毛織の帽子も、鼻まで隠す首巻も、膝くらいまでをすっぽり覆うマントも、その裾から覗く長靴も、全て黒のみと言う徹底ぶり。

 視界の片隅にでも入っていれば、必ず目に付くに違いない。


 帽子から零れる髪も黒だ。車窓から差し込む冬の淡い光に当たった場所は、青紫を帯びて艶めいている。

 その髪と、帽子と首巻の隙間。唯一覗く双眸だけが、鮮やかに。


 満月の色をして、クロムを見ていた。


 「…っ!!」


 主の名を呼びかけて、クロムは口を閉ざした。

 今、この場所にいるわけがない。まして、主の髪の色は朝日の色だ。

 

 クロムの声になりかけた吐息が聞こえたのか、黒い男の双眸が緩やかに細められる。


 「おい、クロム…?」


 マシロの不思議そうな声に、クロムは瞬きをして幼馴染の顔に視線を戻した。


 「どうした?」

 「いや、そこの…!?」

 「そこの…って、何処だよ」


 苦笑交じりのマシロの声は、半分もクロムの意識に入って行かなかった。

 視線を上げたその先。

 先ほどまで、黒い男が立っていた場所には。


 もう、何もない。誰も、いない。


 「なあ…お前の横、誰か…いなかったか?」

 「お前以外いないぞ?どうした?」

 「いや…」


 咄嗟に思い浮かんだのは、青臭い野菜と同じくらい嫌悪する、幽霊だとかその手の類。

 だが、その手の話を聞くたびに湧き上がる恐怖と、今、クロムを震えさせている恐怖は少し、違う。


 「…マシロ。やっぱり、これは、俺が肌身離さず持つ。だから、心配無用だ」

 「あ、ああ。わかった。なあ、大丈夫か?顔色が悪いぞ?」

 「大丈夫だ」


 ぎゅ、とクロムは『紅鴉の爪』を抱えなおした。


 あの黒い男が何なのかわからない。

 だが、おそらく、『紅鴉の爪』を手放そうとしたことを、咎めていた。


 怒鳴るでも、叱責するでもなく。

 ただ、じっと、クロムを見つめていた双眸。


 「…なあ、マシロ」

 「ん?」

 「紅鴉の眼の色って、何色なんだろうな」

 「…前に見た絵だと、黒かったと思うぞ。本当に、大丈夫か?クロム」


 幼馴染の困惑した視線を感じながら、クロムは無爪紅鴉旗の図柄を思い浮かべていた。

 眼の部分は、白抜きの円となっていたように記憶している。


 だが、きっと。

 きっと、本物の紅鴉ナランハルの眼は。

 

 「たぶんな。大丈夫だ」


 足が震える。手の先が冷たく、白くなっているのを感じる。

 アスター大神殿で、魔の眷族と成り果てる前のドノヴァン大司祭から感じた、毛が逆立つような嫌悪感と警戒心を呼び起こす恐怖ではない。


 青い湖(フフノール)の不思議な住人…オキナの姿を見た時のような恐怖だ。

 敵対することも、抵抗することもできない、と一瞬で理解させられてしまうような。


 「紅鴉の眼は…本当は、金色、なのかもしれねぇな…」

 「確かに、アスランの二太子ナランハルはそうだけど…おい、クロム。お前、顔色凄いことになっているぞ…?『それ』は持ってていいから、ちょっと家帰る前に鈴屋うちに寄れ。そんな顔で帰ったら、先生たちが大騒ぎになる」

 「そうだな…。そうする」


 心臓が、やっと動くことを思い出して、慌てて脈を打ち始めた。

 鼓動が一つ刻まれるごとに、脂汗が湧き出る。


 クロムは、黒い男が立っていた場所を凝視した。

 そこには、何の気配も残滓もない。「居た」という証明ができるものは、何一つない。


 だが、確かに、そこに「居た」。

 それは絶対に、絶対にそうだと言い切れる。


 もう一度、至近距離で遭遇すれば、今度こそ心臓が凍り付くかもしえない。

 だが、それでも。


 あの、黒い男に。

 主と同じ眼をした男に、遭いたい。

 遭って、確かめたい。


 「…」


 ぎゅっと『紅鴉の爪』を握りしめるクロムと、そのクロムの背を心配そうに擦るマシロを乗せ、鉄道馬車は速度も変えず、微かな振動だけを伝えながら、走り続けていた。


***


 しゃ、しゃ、という聞く者によっては耳障りな音が、そのへやに満ちていた。


 音の発生源は、一人の男の手元だ。

 卓の上に据えられた砥石の上を、男の太い指が支える鏃が滑り、音を生み出している。

 角度や表裏を変えてその動作は続き、唐突にぴたりと止まると、指は丁寧に鏃を摘まみ上げ、天井から下げられた魔導灯に透かす。


 房の中にある家具は、その卓の他には、粗末な寝台のみ。床には辛うじて羊の毛皮が敷いてあるが、もとは白かったであろうそれは、すっかり汚れて灰色に色を変え、所々刷り切れている。

 男のものであろう衣服は部屋の隅に乱雑に重ねられ、暖房魔導具どころか火鉢ひとつ、置かれていなかった。


 しかし、それを男は苦にした様子もない。


 二十代後半から三十代になったばかりだろう。

 筋骨隆々の巨躯に纏うのは、袖をまくり上げた胡服デール。それも、薄手の夏物だ。

 薄明の空のような色合いの髪は無造作に短く切られ、散切り頭としか言いようがない。

 

 研ぎ終えた鏃を見分する双眸は、淡く灰色がかった紫…紫苑の色。

 摘まみ上げた鏃は良い出来だったのだろう。薄い唇が会心の笑みを浮かべた。


 どう好意的に見ても、身だしなみに気を遣わない男である。

 薄い胡服も覗く肌も垢じみて、若い女性のみならず、多少汚いのは訓練のうちである兵士でさえ、近付くのを躊躇うに違いない。


 そんな薄汚い男だが、無精髭をまばらに生やした顔立ちは、驚く程整っている。

 それも男臭く精悍な、と言うよりも、細い筆で書き上げたような、貴公子然とした容貌だ。


 もっとも、顔がどれほど品よく整っていても、その他があまりにも過ぎて、やはり受ける印象は「薄汚い」以外にはならないが。


 満足げに鏃を箱に収めた男は、次の鏃を摘まみ上げようとして、止まった。

 視線は箱の中ではなく、外側から施錠されている扉へと向く。


 鍵が外される音。そして、何の装飾もなく、古びているが、頑丈な扉がゆっくりと開いて行った。


 「シンクロウ」


 外の寒気と共に房に入ってきたのは、名を呼ぶ声。

 同時に、シンクロウに勝るとも劣らない体躯の男が、するりと滑り込んでくる。


 その手には、離れていてもわかる芳香を放つ布包み。

 入ってきた男の顔よりもそちらを見て、シンクロウは顔を輝かせた。


 「兄弟子!おつかれさんです!」 

 「俺の顔を見て言ってよぉ~。まあ、いいか。元気そうで安心したよ」

 「出られねぇのは体が鈍っていけねぇけど、鏃研いで寝てるだけだかんな。そりゃ、弱る理由が一個もねぇや」


 にや、と笑うシンクロウに苦笑しながら、兄弟子は房の入り口で靴を脱いだ。

 遊牧民たちが好んで履く長靴ゴタルではなく、羊の革で造られ、毛皮が裏打ちされたゆったりとした靴だ。

 大都の住人たちは、分厚い靴下の下に薄い靴下を履いて、さらにこの靴を履く。雪が積もらず、乾燥した石畳の上なら、脱ぎ履きしにくい長靴よりも使い勝手がいい。


 「はい。お昼ご飯」

 「ありがてぇ!飯が少なくってさ」

 

 砥石をのけて受け取った布包を置き、広げれば、中からはまだ温かさを残した包子ホーズと、油紙で作られた袋に入った串焼き肉が現れた。

 シンクロウの手でも余るほどの大きさの包子は三つ。串焼き肉は全部で十本もある。


 「兄弟子のもはいってんのかい?」

 「いや。俺はもう済ませてきたよ。全部お食べ」

 「ありがてぇや!」


 猛然と食いつきだしたシンクロウを苦笑しながら見守りつつ、兄弟子は背負っていた鞄を降ろした。外套は脱がない。いや、寒くて脱げない。


 「納品できる鏃は何本ほどかな?」

 「十ちょいってとこっすかね」

 「あとどれくらい未研磨の鏃は残っているの?」

 「四十程度。あと一日、ここにぶち込まれるのが遅きゃ、倍の数持ってこれたのになあ」

 「全部で五十か…少し足りないなあ」

 「足りない?」


 串焼きに食らいつこうとした手と口を止め、シンクロウは首を傾げた。

 懲罰房ここに放り込まれてから、はや十五日ほど。

 毎日兄弟子が鏃の回収に来るが、すでに渡したものを含めれば軽く百を超える。

 矢は通常五十で一束として納品するので、「足りない」と言われるのなら、ずいぶんと買い込む客がいるらしい。


 シンクロウが「兄弟子」と慕う男は、第三工房で造られた鏃を矢に加工する矢師である。

 もともと、シンクロウが最初に入門したのは、大都にある工廠の、矢師の工房だった。


 一年二年と修行を続けるうちに、シンクロウの興味は矢そのものよりも鏃に移った。研ぎが甘かったり、形が歪だと気になるのだ。

 工廠は、アスラン軍の兵装を作成するための施設ではあるが、大工廠は王族や将軍が使用する高品質品の制作も担っている。シンクロウのこだわりや、僅かな差異に気付く目の良さに矢師の師匠は着目した。

 

 そこそこの品質のものを大量生産するより、王族に献上されるような最高品質品を作る方が、お前には向いている。

 そう師匠は言い切り、鏃工の師のもとへとシンクロウを送り出したのが、今から六年前。シンクロウがちょうど二十歳になった年だった。


 兄弟子はシンクロウより二月ほど早く工房に入った人で、ほぼ同期と言っていい。

 同じヒタカミの出身だという事もあって、鏃工になった後も何かと交流は続いていた。

 こうして懲罰房にぶち込まれた今も、「注文した鏃を取りに来た」という建前で食事を差し入れてくれる。


 鏃の注文があったのは事実だが、わざわざ懲罰房で何もすることがないからと、鏃を研いでいる男の鏃でなくても問題はないはずだ。

 だからやはり、これは兄弟子…ひいては、師匠や、その友である矢師の師匠の計らいなのだろうとシンクロウは思っていた。


 実際、差し入れはありがたい。

 何せ、朝と夕方にほとんど湯のような麦粥が丼いっぱいか、かちかちになった包子が一つ二つ…あとは毎朝新しい水瓶が渡され、それがこの懲罰房の「食事」全てなのだから。


 「はい。お茶」

 「どもっす!」


 鞄からまず出てきたのは、小さめの保温瓶だ。卓の上に置かれた、いつ洗ったかわからない湯飲みに、湯気を立てる茶が注がれる。

 

 「鏃がたりねぇなら、お師様に言やあ融通してくれんじゃあ」

 「君の鏃じゃないと、駄目なんだよ」

 「へえ」


 それは光栄だが、自分はまだ鏃工として、ようやく尻の殻が取れ始めたばかりのひよっこだ。

 シンクロウの鏃でないと、などと嬉しい事を言ってくれそうな顧客なぞ、心当たりはまったくない。


 「トキジ殿の申し出でね。ナランハルに献上する矢は、シンクロウの鏃でないと、と」

 「ナランハル…ってこたぁ!」

 「うん。先日、お戻りになったんだよ」

 「おお!ファンの奴、元気でしたかい?!」

 「いやあ、俺はお会いしていないからねえ…でも、お病気だとか、お怪我なさっているって話は聞いていないから、お元気なんだと思うよ」


 そりゃあそうか、とシンクロウは頷いた。

 自分からすれば、しょっちゅう実家に飯を食いに来る…たまに働かされている…はとこだが、この大アスランの二太子なのだ。

 兄弟子は腕のいい矢師だが、二太子に謁見するような立場ではない。


 トキジなら会ったかね、と思いつつ、聞きに行く手段がねぇやと眉を顰めた。

 シンクロウの鏃を所望してくれたトキジは、代々シドウの大弓用の矢を造る一族の青年だ。

 生まれたのはファンと同じ遊牧陣地クリエンで、祖父は高名な弓師であり、母が矢師の一族に嫁いで生まれた子と言う、産まれる前から弓矢に関わっているような人物である。


 所属する工房は同じだが、同門ではない。

 本来なら兄弟子のように「殿」をつけて呼ばなくてはならないのだろうが、トキジ本人が呼び捨てで良いよお~と気安く接してくれるので、造った鏃を安心して任せられる矢師兼友人として付き合っていた。


 「でも、トキジ殿は明日にも納品しにお会いするからね。その時、君の窮状をナランハルにお伝えいただく」

 

 だからね、と兄弟子の微かに垂れた目じりが、さらに下がった。


 「もう少し、頑張って我慢してね。シンクロウ」

 「鏃が残ってる間は、暴れる気にもなりやせんよ」


 懲罰房に放り込まれたのは、凄まじく腹立たしいが。


 いつも通り鏃を造り、そろそろ炉を仕舞う日を決めねばと暦を見ながら思案していると、突然、同門ではない鏃工十数人に絡まれた。

 

 工房長の弟子であるその連中は、酔っているようだった。

 鍛冶場での飲食は厳禁であり…懲罰房は鍛冶場ではない、ということでシンクロウはこの房で気にせず飲み食いしているが…、まして飲酒は許されない。

 鍛冶場で飲まなくても、酒精を残したまま立ち入ることさえ叱責の対象になるにも関わらず、連中からはぷんぷんと酔っ払い特有の悪臭が発せられていた。


 絡んできた内容は、特に意味のあるものではない。

 大人数で酒も入り、気が大きくなっていたところで、普段から気に食わないシンクロウを見掛けて絡んできた…その程度だろう。

 街中の酒場でなら、ままある光景。しかし、ここは神聖な鍛冶場だ。


 だからこそ、シンクロウはしばし耐えた。

 それこそ酒場だったら、最初に嘲笑と共に酒臭い息を吐きかけられた時点で殴っている。

 

 シンクロウは政治とか勢力図なんてものはさっぱりわからないが、自分の師と、工房長の間には深い溝があるのは知っていた。


 師は、より良いものを、と目指す人だ。

 そして工房長は、質はやや劣っても数を多く、と言う主義である。


 師が、そのことで苦言を延べたことはない。

 工廠として、数の要求に応える事は当然の優先事項であり、より効率的に、より費用を抑える事を優先するというのは、工房長としては間違っていないと述べている。


 だが、工房長の方は、はっきりと師を敵視していた。

 

 どれほど要求通りに数を揃え納期を守っても、褒め讃えられるのは、好き勝手にやっている連中だというのが、どうにも我慢ならないようだ。

 師匠の言うように、彼らと俺らでは求められているものが違うのだから、それぞれ職分を全うすりゃいい、と思うのだが。


 その溝は、師だけでなく弟子たちの間にもぽっかりとできていて、時折こうして飛び越えて絡まれる。

 師からは、決して相手にするなと申し渡されていたし、鍛冶場を血で汚すのも気が引ける。だから、シンクロウは自分でも驚くべき自制心を発揮し、無視に努めた。


 そこで連中が退けば、お互いの為だったのだが。


 連中は、言ってはならないことを言った。

 弟たちの事を、馬鹿にした。


 気が付けば、五人ばかり床に倒れて呻いていて、残りの連中はシンクロウから遠ざかって震えていた。

 倒れた連中は顔が変形していたり、骨が二、三本折れていたりと散々な有様であり、誰がどう見てもやりすぎたのは明らかだ。

 だから、大人しくお縄に着いたのだが…まさか、酒を飲んで絡んだのはシンクロウという事にされるとは。


 「あ、そうそう。シンクロウ。いつもの通り、引渡証に判をよろしく…って、ああ!?」

 「うお、どうしたんすか!兄弟子!」

 「ごめん…拇印用の朱肉を忘れてしまったよ」


 へにゃり、と眉を下げた兄弟子が、申し訳なさそうに書類だけを取り出していた。

 本来なら、工房で作成したものは工廠の事務官を通して搬出される。


 だが、懲罰房は工房ではない。

 そして、事務官も同輩たちも、シンクロウが嵌められた事を知っていた。

 知っているが、どうしようもなく。そして、シンクロウが今後、鏃工としてやっていくことは不可能だろう、と見ていた。

 大工廠の鍛冶場で酒を飲んで暴れた、などと言う「前科」があるものを雇う工房はなく、個人でやっていくには施設を整えるだけで莫大な金が必要になる。


 助けることも、表立って味方することもできない。だが、シンクロウ個人が取引することを見て見ぬふりをしてくれている。

 おそらく賠償金を巻き上げられ、無一文で追われるシンクロウの今後の為に。

 

 シンクロウは政治はわからないが、人情はわかる。

 工房長に咎められれば、兄弟子だって罪に問われるかもしれない。なのに、毎日こうして通ってきて、飯をくれる。有難いことだと思う。


 その兄弟子が朱肉を忘れたくらい、どうって事はない。

 すべての食事を平らげ、シンクロウは笑って手を差し出した。


 「大丈夫っすよ。血判押しゃいい」

 

 いつもは、朱肉に親指を押し付け押印するのだが、自分の血だって少々汚いだけで問題はないだろう。


 「ごめんね…」

 「ちっと切るくらい、なんてこたぁないっすよ!」


 先ほど研磨を終えた、改心の出来の鏃を再び手に取る。

 親指の腹に滑らせれば、赤い糸のように血が染み出した。


 「悪いね。はい、引渡証」

 「ほいほいっと」


 そこには、鏃を引き渡したことがすでに印刷されている。

 数の欄は空白で、これから兄弟子が数えて記入するようになっており、晴れてシンクロウが外に出た時…たぶん、大工廠を馘になって、だが…古巣の工房に行けば、この引渡証の分だけ金が貰える仕組みだ。


 受領書などはあえて貰わない。懲罰房を出る時にそれが見つかれば、あちらこちらに迷惑を掛けてしまう。

 古巣の工房が鏃だけ受け取って金を払わない、なんてことは毛ほども疑っていないので、全く問題はない。


 「数、数えるね…ひい、ふう、み…十二、だね」

 「コイツは会心の出来だから、陣を入れて魔導矢にしてもらいてぇな」

 「うん。伝えるよ」


 にっこりと笑って、兄弟子は書類と出来上がった鏃を箱に詰め、鞄にしまう。

 

 「じゃあ、そろそろ行くね。本当にもう少し、頑張って。シンクロウ」

 「心配性だなあ。兄弟子は」

 「それと、ほんとごめんね。指、ちゃんと手当するんだよ?」

 「もう塞がってますって!」


 ほれ、と突き出す親指には、微かに赤い線がある程度で、血も滲んでいない。

 それを見て、安心したように兄弟子は頷いた。


 「じゃあね、シンクロウ。また明日」

 「はーい、また明日!」


 明るい笑みを浮かべて手を振る弟弟子の頭にぽん、と手を置いてから、鏃の分重くなった鞄を背負って立ち上がる。

 ほんの数歩の距離歩いて靴を履き、重い扉を開けて締める前に、もう一度シンクロウを見て小さく頭を下げ…外に出た。


 暖房器具の全くない部屋でも、やはり風と外気に晒されないだけ暖かい。

 容赦なく突き刺さるような冷気に、白い呼気を漏らしつつ。懲罰房の扉にはまる錠前をかけなおし、鍵穴にするりと袖から出した針を突きこむ。

 ほんの僅かの間動かすと、かちゃり、と鍵のかかる音と手応えが返ってきた。

 

 「ふう」


 さらに袖から出したのは、鏃と共に箱にしまわれたはずの引渡証。

 だが、そこに書かれている文面には、「鏃を十二個受け取った」という文言はない。


 「本当に、ごめんね。シンクロウ☆」


 言葉とは裏腹に、全く悪びれない声は微かで。白い呼気と共に発せられ、散っていく。


 「騙したのは心苦しいけれど…まあ、うまくいけば問題ないし☆これで、動けるようになったしね☆」


 猫のように目を細め。


 一際強い風が吹きつけた後。

懲罰房の前には、誰かがいた気配すら、残っていなかった。


***

 

 「クロム。まずは謝らせてくれ」

 「は…?」


 顔色の悪さも鈴屋で味、量ともに申し分ない食事を摂り、久しぶりの幼馴染の部屋の寝台に腰を下ろした時には、すっかりいつも通り。

 だが、寝台に腰かけるクロムに向け、床に額をつけて土下座するマシロの姿に、間の抜けた表情を晒してしまったことは否定できない。


 幸い、唯一の目撃者になりえるマシロは、床に額ずいているから見ていなかった。


 「お、おい。なんでそんな…」

 「お前を騙そうとしたからだ」

 「とりあえずそれ辞めろ!!なんか知らんが、どうでもいい!!騙そうとしたって事は、別に騙されてないんだろ!俺は!」


 身を起こし、上がったマシロの顔は、苦渋に満ちていた。思わず、クロムをして「大丈夫か?」と声をかけてしまうほどに。


 「…まずいやり方とは思ったんだが…少し、私も『それ』を甘く見ていた」

 「さっぱりわかんねーよ…ファンの蘊蓄じゃねぇんだ。順を追って話してくれ」

 

 苦しそうなマシロの顔が、少し緩む。それにホッとしつつ、クロムはもぞもぞと外套を脱いだ。『紅鴉の爪』はその上に置き、一応、右手を置いておく。

 

 「そうだな…まずは…」


 マシロが語ったのは、まずシンクロウが懲罰房入りになったこと。

 さらに、その立場を左右するのが、第一工房長であること。


 そして、シンクロウを罪人と確定させたくなければ、『紅鴉の爪』を持って来いと脅されていること。


 「長櫃に入れて、鍵をお前に渡そうとしたのは、本当だ。だが、その長櫃を持っていくつもりだった」

 「…シンクロウは、アホだな。うすうすそう思っていたが…」

 「感想そっちかよ…。でも、兄ちゃんは絶対に酒を飲んではいない。暴れて複数人を叩きのめしたのは本当だろうし、それも十分アレだけどな」

 「やるなら全員まんべんなくぶちのめして、逆らったら次は確実に殺す、とでも脅しときゃ良かったのに」

 「さらにそれか…。お前、この一年で性格が歪んでないか?大丈夫か?」

 「クソに情けを掛けても碌なことにならんと理解した」


 おおげさに溜息を吐くマシロの顔には、先ほどまでの苦渋はない。それに少しほっとして、クロムは聞いた情報を整理することにした。


 『紅鴉の爪』を持って来いと命じていても、別にあの工房長はそれを我がものとするつもりはなく、丁寧に研いで調整し、自分の手柄にしたいようだ。

 だが、幼馴染を脅し、奪われた『紅鴉の爪』を研ぎ直して渡されて、感謝すると思っているのだろうか。


 そうだとしたら、自分もファンも、ずいぶん阿呆だと思われている。


 「…万死に値するな」

 「一応聞くけど、工房長の事だよな?兄ちゃんじゃなく」

 「シンクロウは一万回殺した程度じゃ死なない気もする」 

 「ちゃんと一回で死ぬからな?やるなよ?」

 「そんな無駄な事やらん」


 きちんと何かの武器や武芸を修めたわけではないが、持って生まれた体躯だけで充分シンクロウは強い。

 もし、本人がその気なら、今頃猛将として名を馳せていたかも知れない。


 本人曰く、上からあーだこーだと申し付けられて、へいへいと動くのは性に合わないから軍には入らないそうだが。

 金がなくなると闘技場に赴き、自ら闘士として出場して金を稼いでいるくらいが、ちょうどいいらしい。


 「だが、鍵のかかった長櫃渡してどうするつもりだったんだ?」

 「鍵はひとつじゃないから」

 「…なるほど」

 「しかし、考えれば考えるほど杜撰な計画だ。私も兄ちゃんを人質にされて、おかしくなっていたらしい。渡したところで、アイツが約束通り動くわけないしな」

 「だが、渡さなきゃ確実に悪い方に動くだろ。どうするんだ。シンクロウを」

 「向こうも、なんかしら偽証しているって言う負い目がある。大工廠から追放くらいで済むだろ。鏃工にこだわらなければ、鈴屋で働けばいいし」

 「お前だって、働きにくいだろ」


 ふ、と浮かべる笑みは、「諦め」という色がついていた。

 

 「私も同じだ。鈴屋で働けばいい」


 その色が、クロムは嫌いだ。


 自分から負けるな!そっち側へ落ちていくな!!


 あの、主が運命に右手を捧げた日。

 そう吠えて、ファンは絶望を拒んだ。


 だから、クロムも諦めとか、絶望とか、聞き分けよく、なんてものが大嫌いだ。


 「なんとかすりゃ良いんだろ」

 「なんとかって…」

 「まず、『紅鴉の爪』をあのおっさんに見せてやればいい。大鍛人ですら自分にはその資格がない、と言い切った『紅鴉の爪』をな」


 手を伸ばして、それで工房長が死ねば、なるほど伝説は真実だったかと頷ける。

 大鍛人の命と引き換えにするには些細な真実だが、あの裏表が激しい不愉快な男なら、ちょうど釣り合うだろう。


 「それで奴が死ねば、どうしてもと頼まれて俺が見せたと言えばいい」

 「ファンに叱られるぞ?」

 「いつもの事だ」


 そう。いつもの事だ。

 きっと、ファンはクロムが何の意味もなく、工房長の願いを聞いたとは思わず、裏を調べる。

 そうすれば、すぐにシンクロウが監禁されていることを掴むだろう。紅鴉親衛隊には、優秀な密偵もいるのだ。


 シンクロウも何の意味もなく暴れる奴ではない。

 まず間違いなく、相手から絡んで返り討ちにあったに違いなく、そこまで掴めば無罪放免…はなくとも、数日間懲罰房で過ごしたことを罰として終了に持っていけるかもしれない。

 

 どうせ、酒を飲んでいた、と言うのは相手の事だろう。一人、一番気の弱い奴を釣りだしてじっくり「おしゃべり」すればわかる。そこまでクロムが引き受けてもいい。

 

 「羊肉は熱いうち、だ。明日、あのおっさんぶっ殺しに行こうぜ」

 「休暇だろう…」

 「騎士としては休暇だが、守護者に休みなんぞ関係ない。あのおっさんは俺と主を侮った。万死に値する」

 「お前、それ口癖になってないか?物騒な癖つけたな」

 「それだけ世の中、クソが多いって事だ。今日はサモンの部屋に泊まる。あの馬鹿、『紅鴉の爪』をいじるかもしれんから、言ってた鍵の掛かる長櫃貸してくれ」


 マシロはしばしクロムを見て、そして、がくりと肩を落とし、頷く。

 

 「方向はともかく、成長したなあ…クロム」

 「真っすぐすくすくと成長してるだろうが」


 代わりにクロムは、これ以上ないほどの会心の笑みを浮かべた。


***


 「工房長」


 硬い、愛想というものを放り投げた声に、第一工房の工房長…ボルドクはにんまりと笑みを浮かべた。


 工房にある、ボルドクの部屋には壁と言う壁に彼が鍛えた刃が飾られ、そのすぐ下には鑑定された値段が書かれた札が止められていた。

 それを悪趣味と言うか、彼に仕事を頼む際、どれくらいのものが出来て値段はどの程度かすぐにわかって効率的だとみるかは、人に寄るだろう。


 だが、少なくともクロムは悪趣味だと思ったし、マシロも同じ意見に違いない。


 「こ、これは、守護者殿…わざわざ足をお運び頂けるとは!」


 一瞬、マシロを殴りそうな顔をしたものの、すぐにボルドクは満面の笑みを浮かべた。

 クロムが背負う布包の中身が何か、一瞬で判断したようだ。


 「おお、この私めに、『紅鴉の爪』を預けていただけるのですね!!」

 「このマシロから、あんたが腕のいい鍛冶師と聞いた」

 「いやあ、光栄です!ささ、どうぞこちらへ!!」


 座っていた高価そうな座布団から腰を浮かし、揉み手せんばかりの勢いで近付いてくる。

 それを見るクロムが無表情ながら、双眸に嫌悪感を宿しているのに気付いた様子はまったくない。


 「ああ、だが、ひとつ。先に言っておこうと思う」

 「はい、なんでしょう!」


 分厚い掌を差し出しながら、ボルドクは愛想よく答えた。

 その顔に蹴りを入れたくなるのを我慢しつつ、クロムは背負う包みを降ろし、中身を守り…そして、『紅鴉の爪(なかみ)』から周辺の人々を守る無爪紅鴉旗をはがしていく。


 「『紅鴉の爪』は今、その真の姿を顕している。それでも触れられるものならな」


 剥がし終えた無爪紅鴉旗を肩にかけ、クロムは至宝の宝刀を構えた。

 月なき夜天の色をした、『紅鴉の爪(ナランハル・ホロウ)』を。


 「あ…わ…あ、あああ…」


 その磨き上げられた表面は、通常の金属のように向かい合うものを映し出すことはない。ただ、深く深い黒を宿すのみである。


 それはボルドクにとっては、幸運だったかもしれない。

 眼を剥き、舌を突きだし、気がふれたようになった己の顔を見なくて済んだのだから。


 「ま、さか…」


 横に立つマシロからも、息を呑む気配がする。

 しまった、マシロにも言っていなかったな、と思ったが、まさかマシロが欲望に負けて手を出すこともあるまいと、楽観的に考えることにした。


 「で?研いでくれるのか?大鍛人ですら不可能と言い切った、『真の鋼』を」

 「そ、そそ…それ…」

 「あ゛ン?」

 「それを…それを…それを寄越せえええええ!!!」


 突然、恐水症の犬のように涎を垂らしながら飛びかかってきたボルドクに、一瞬クロムの動きは遅れた。

 何とか身を捻り、突進を躱すことには成功したが、体勢が崩れる。


 「逃げろマシロ!!」


 だが、それでも口から最低限必要な言葉は放り出せた。

 明らかに正気を失ったボルドクは、何をするかわからない。

 狙っているのは『紅鴉の爪』でも、突進する直線状にマシロがいれば、容赦なく跳ね飛ばすだろう。

 以前のマシロなら、そんな素人丸出しの動きは余裕で避けられた。だが、今のマシロにできるかどうかはわからない。


 それに、最悪ボルドクを斬ることになる。殺すこと自体はクロムにとってはどうでも良いし、そもそも生かす気はなかった男だから痛痒も感じない。

 だが、その光景をマシロが見れば、自分が下手を打ったせいだと気に病むかもしれず、それは嫌だった。


 そしてもうひとつ。

 この男は、『紅鴉の爪』が納得する「敵」だろうか。

 ちらりと『紅鴉の爪』に視線を向けると「見りゃわかるだろうが」と答えられたような気がする。

 つまり、絶対に斬れば不興を買う。


 「あ…」


 なのに。

 マシロは呆けたように『紅鴉の爪』を見つめたままで、動こうとしなかった。

 

 「チィ!!」

 

 ボルドクは突進の勢いを殺せずに床に倒れこんだが、分厚い冬用の絨毯のおかげか大した衝撃を受けていない。すぐに起き上がってこちらに向き直る。

 体勢さえ崩していなければ、追い討ちが出来て終わっていたと臍を噛むが、過ぎた事を悔やむより次の刹那に備えるべきだ。


 「ヨコセ…それ、を、俺様に、寄越せぇええええ!!俺様のものだ!!俺様だけのものだああああ!!!」

 「クソほざくな!これはファンのものだ!!」


 そして、その守護者たる自分に預けられたもの。

 ファンの名に、僅かだがボルドクの動きが止った。己がどれほど不敬なことを喚いたか、狂った思考の端に閃いたのかもしれない。

 だが、その一瞬の正気は、悪い方に作用した。


 ボルドクが再び床を蹴る。

 だが、その視線の先にいるのは。


 「マシロ!」


 人質にしようというのか、呆けるマシロに向けて手が延ばされる。

 距離はボルドクの方がマシロに近い。崩れた態勢は戻したが、体術で片を付ける前に奴の手が届いてしまう。


 どうする?どうすればいい?


 刹那の惑いは、だが、すぐに行動に取って代わった。

 こういう時。ファンならきっと、躊躇わない。


 「『砦』よ!」


 クロムの声に応え、淡い光が奔る。

 それはマシロを包み込み、伸ばされたボルドクの手をあらぬ方向に弾き飛ばした。


 「おい、しっかりしろ!」

 「…クロム、頼むから、それ、しまって…」


 視線をはがすこともできないまま、呻くようにマシロは懇願した。

 すぐにその頼みを実行に移したいが、『砦』を維持しながら他の事を…と言うのは無理だ。

 ボルドクはおそらく折れたであろう腕を抱えて呻いているが、正気を失っている分まだ動けている。『砦』が消えれば、再び襲い掛かってくるだろう。


 『砦』を消し、瞬間、此方から仕掛けて仕留める。


 額から垂れてきた血を舐め乍ら、それしかないと双眸を細める。

 か細い声を上げるマシロは心配だが、もう少し頑張ってくれと内心に呟き、『砦』を解除するべく神経を額の刻印に集中した。


 「う、ぐッ…」

 「マシロ!?」


 だが、その解除の瞬間。

 マシロが顔を覆って蹲る。その手の隙間から赤い血が垂れるのを見て、クロムの集中が大きく乱れた。


 『砦』が揺らぎ、弾けるように消える。

 その衝撃がクロムの魂を揺らし、精神を直撃した。


 「ク、ソ…!!」


 視界がぼやける。思考が曖昧になる。

 「敵」はまだいるのに、その姿を捉えられない。


 だが、気配は猛然とこちらに向かっている。

 早く、意識を戻せ。集中しろ。もう一度、『砦』を…!!


 魂そのものが軋む。激痛に意識が再び歪み、声を出すことも、明確な思考を以て騎士神に呼びかけることも、失敗した。


 だが、それがなんだ。

 『紅鴉の爪』は、無双の至宝。

 それを預けてくれた、主の信頼の証。


 例え魂が砕け、血反吐どころか心臓を吐いたとしても、誰にも渡せない―!!


 「良い。クロム。落ち着け」


 その声と共に、不快な気配は動きを止めた。

 

 「ゆっくり、息を吐いて、吸え。見えないだろうが、腰を下ろして座るのだ。安心せよ。お前が今立っている場所は、一歩ずれれば転落する崖ではない。ただの部屋だ」


 言われた通り、息を吐き出しながら腰を下ろしていく。

 絨毯の感触が伝わり、真っ白な視界に少しだけ色が戻った。


 息を吸う。吐く。


 それだけを繰り返しているうちに、視界は徐々に明瞭さを取り戻していき、やがてその姿を捉えた。

 

 「トール…」

 「すまぬ。遅くなった」


 いつの間にやってきていたのか。

 すくりと立つその足元には、ボルドクが転がっていた。時折痙攣しているのは、おそらくトールの雷により麻痺させられているのだろう。


 「はやく『紅鴉の爪』を仕舞え。俺が見てもなんともないが…鍛冶師だけを狂わす何かがあるのだろうか?」

 「わからん。マシロもなんか大変なことに…」


 急いで無爪紅鴉旗を巻き付けて刀身を隠す。トールも足早にマシロに寄り、蹲る肩に手を掛けた。


 「マシロ、俺の声が聞こえるか?」

 「…オドンナルガ」


 ゆっくりと、手が離れていく。

 その下から現れたマシロの双眸。

 

 その右側だけが、生来の色ではなく、淡い翠に染まり…そして、血を頬に伝わせていた。

 ファンが「鷹の眼」を使いすぎた時に起こる血涙に似ている。だが、眼の色まで変わることは今までに見たことがない。

 そもそも、マシロにも「鷹の眼」があるという事も、聞いたことがない。


 「マシロもしばし、休んでいろ。クロム、見ていてやれ。必要あらば飲ませろ」

 「わかった」

 

 トールが投げてよこしたのは、魔法薬の小瓶だ。治癒薬のようだが、今のマシロの症状に聞くかどうかは心もとない。


 「痛むか?」

 「めちゃくちゃ痛い。でも、それだけだ。いや、怖いな。『紅鴉の爪』。大鍛人が研ぎを断ったのも納得だ」


 血を拭うと、それ以上垂れては来なかった。瞬きを繰り返せば、瞳の色も元に戻っている。

 あれは見間違いか、一瞬、眼が何かにやられたせいかと考えるが、当然答えは出ない。


 「大丈夫ならいいけどよ。って言うか、お前…トールのこと、オドンナルガなんて改まって呼ぶようになったのか?」

 「時と場合による。すまん、肩貸してくれ」

 「おう」


 クロムの足も震えるが、ずいぶん回復している。軽くなったマシロを支えるくらい、なんでもない。


 「さて、ボルドク工房長。お前の罪を咎めに来た」

 「お、オドンナルガ…いや、これは、その…」

 「何やら乱心しておるようだが、まあいい」

 

 ボルドクの顔には、先ほどまでの狂気はない。

 だが、表情はめまぐるしく変わる。媚びた笑みを浮かべたかと思えば困惑し、そして今は、焦りに焦っていた。

 その焦りが、トールの言葉に不安へと変わっていく。


 『紅鴉の爪』を奪おうと、紅鴉の守護者(ナランハル・スレン)に襲い掛かったのは、当然大きな罪だ。

 だが、一太子はそれを罪に問うわけではないと言う。

 

 「まず。お前は我が星龍親衛隊に所属する鍛冶師を、第三工房長と共謀して監禁した。その罪、どう申し開く?」

 「し、親衛隊の鍛冶師を?それは、それはオドンナルガ!何かの間違いです!」


 どうも、麻痺は四肢だけのようだ。歪んだ笑みを顔に乗せ、背中と尻を動かしながら、ボルドクは喚き散らした。


 「今、懲罰房に入れているのは、酒に酔って同輩を殴り、大暴れした、第三工房所属の鏃工で…!!」

 「第三工房所属?何を言っている。それは一月前の話だ」

 「…は?」


 ごそりとポケットからトールが取り出したのは、一枚の紙。

 そこには「星龍親衛隊に以下のものを配属する」と書かれ、トールのサインと印章が押され、さらにその下には、当人の名と血判があった。


 日付は一月前。つまり、懲罰房に入れられた時には、星龍親衛隊に所属していたことになる。


 「この鏃工…シンクロウは、我が家の矢を代々作成する一族からの推薦でな。やっと本人も首を縦に振ってくれたと言うわけだ」

 「そんな…それは、その、違う、おかしいです、そんな、そんな…」

 「当人の血判も押してあるだろうが。それに、お前が認可するような事ではあるまい」


 一太子が望み、本人も承諾したのならば、元々所属していた工房長でもないボルドクに口をはさむ権利はない。

 それは、書類がありえないものであったとしても変わることはない。


 「まあ、それだけではないがな」

 「ご報告申し上げます。オドンナルガ。このような無様な体で申し訳ございませんが…」

 「構わぬ」


 クロムは驚いて、肩を貸す幼馴染を凝視した。

 その視線をかるく無視し、マシロは言葉を続ける。


 「ボルドクの行っている横流しにつきまして、証拠は既に押さえてあります」

 「ついでにその証拠は、すでに我ら御史台が貰ってますよ☆」

 「うわ!?!」


 急に横からした声に、クロムは文字通り飛び上がった。マシロが引き摺られて呻くが、それに気を遣う余裕がない。


 「なんだアンタ!!どっから湧いて出てきた!!」

 「オドンナルガと一緒に入ってきてたんだけどね☆まだまだだなあ。守護者君は。ナランハルなら、なんか見つけてたよ。なんで気付くのかって聞くと、擬態している虫とかを見つけるの得意だから!ってドヤられるんだけど、ちょっとどうかと思うよね☆」

 「何を言うか!弟の観察眼は素晴らしいという事ではないか!!やはり弟は世界の宝であることよ…」

 「情緒が追いつかないから、ちょっと待て。どこに突っ込めばいいかわからん」


 にこにこと笑う大男は、見たことがある。

 確か鈴屋で。シンクロウの兄弟子、とか聞いたような。


 「あ、名乗ろうか。俺はフタミ。御史台所属の諜報官だよ☆」

 

 ばちり☆と片目を閉じて見せる。

 その動作はともかくとして、クロムは「ああ」と納得した。

 御史台の諜報官の中には、全く違う職業に就いて市井に紛れ情報を探るものがいる。

 このフタミと言う諜報官もその口なのだろう。表向きの顔が、シンクロウの兄弟子という事だ。


 「うむ。工房に納品される鉄鉱石などの量と、搬出される完成品の量が釣り合わなくてな。一年ほど前から、内偵を入れていた。ずいぶん時間がかかってしまったが」

 

 大工廠で作成される武具は、すべてアスラン軍のものだ。

 それが横流しされているとすると、どこかの敵がアスラン軍と同程度の兵装を手に入れている、という事になる。


 「一回一回の量が少なかったですからね☆まあ、最近は馴れて緩んだのか、証拠を掴みやすくなりましたけど☆」

 「どの職人が絡んでいて、誰が無実なのか、慎重に見極める必要もありましたから」

 「そうだな。よくやってくれた、マシロ。ご苦労だった」

 「有難きお言葉にございます。星龍君わがきみ

 「は…?」


 そうトールを呼ぶのは、あの胡散臭い軍師ではあるが、星龍親衛隊に所属する騎士たちは、好んでこの呼び名を使う。


 「マシロ…?」

 「私も、改めて名乗るな。星龍親衛隊騎士、マシロだ。主な任務は、諜報」


 肩を貸す幼馴染は、顔の前に手を立たせ、申し訳なさそうに眉を寄せた。


 「騙してごめんな。クロム」

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[一言] ふぁー! マシロ、なんからしくないなー澱み…?と思ってヒヤヒヤしてましたが… 侮ってごめんなさいっと土下座したくなると同時にそっち?!という驚きで情緒が乱れまくりました。 もうトールがどんな…
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