花咲か爺さんは、誰だ?
ーオヤジ視点ー
気付いてはいないだろう…。
ま、タヌキだしな。
それにしても…凄いの一言だ。
タヌキよ…。
ドワーフの言う恩返しの意味も。
いや、人外が頭を下げて礼を言う意味も俺だとてハッキリは分からんのだから。
だが、前代未聞だと言う事は理解した。
俺なりにだが…。
タヌキのあの顔…。
妖精族の謎の変化。それはパパラヌの仲間が増える嬉しいモノだ。
ニヤけてる。
珍しいタヌキの表情に俺も嬉しくなる。
次々と述べられる謝辞の返事をしていたら…また油断した…。
いや、タヌキが大人しく何かを熱心に書いていたから大丈夫だと思ったのだ。
ものすごーーく熱心だったしな。
「モテ期とくれば…サインだな。
これだけの人数だ…ちょっと大変だなぁ人気者は!!」
ぶつぶつ言うタヌキは通常運転だから気にして無くて。
だから…だ。
突然ソワソワしたタヌキがあそこまで急いで窓へ向かった時は、こんな事態になるとは思わなかった。
慌てて側に寄った俺の目は、とんでもないモノを映していたのだ…。
まさか伝説の馬『ガンゼル』の大群とは!!
思わず目の前にいたタヌキを抱き寄せるしか出来なくて。
だから、先頭のガンゼルが俺を咥えて背中に投げ飛ばした時にできたのは受け身だけで…。
態勢を整えた時には遥か空の上で…。
更に言えばこのガンゼルの大群はとんでもないモノに向かっていた。
空の歪み…。
聞いた事はある。
それは、恐らく『ダラ』への入り口で。
人間で『ダラ』へ行く者は必ず通る『世界のヘソ』で。それには理由がある。
歪みの利用を耐えられる人間がいないのだ。
。。。
不味いだろう!!
なんとか脱出しなくては…。
ガンゼルの鬣を必死に掴んで止める為に引っ張るも…。
間に合わなかった…。
ボス。。、
手応えもなく、突入した歪みは空気に白い色を持った空間を持つおかしな空間で。
でも、通過も一瞬で。
落ち着いて辺りを見たら目の前に広がる枯れ野。
まぁ、荒野と言えば良いのだろうか?
焼畑の後始末に失敗した場所に見えるが…ここは何処だ?
妖精族の故郷は桃源郷の様な美しさだとか。
だとすればココは?
あ、タヌキ!!!
ん?目の前にいるのもパパラヌ。
腕の中にもタヌキはいる。
二匹となれば…あそこにいるのは元妖精族のパパラヌに決まりだな。
動かないがな。
故郷のこの有り様に自失呆然の状態で魂すら抜け出した様だ。
「むにゃむにゃ…オヤジ…もう食べれない…
??
は!!ここは?」
危険地帯などお構いなしに、腕の中にいれば即完眠するタヌキが寝ぼけていたら。
「オヤジってば隅におけないなぁ。
足りないのか?
嫁候補は1人じゃダメなんだな?
よーし!!
いいよ、皆んな呼んで嫁選びとするか?」
オカシナ事を言い出したぞ?
うーん。
よほど、この荒野がショックだったのだろうな。
言ってる意味がいつもより更に分からん。
手元に熱さを感じて見たらなんと…。
魔法棒が光り出したぞ?!
こんな事って…。
「あ、ライバルが来るらしいよ。
急がなきゃ!」
!!!!
何か強烈なモノが近づいて来る!!!
更に言えばそれは味方じゃない事も確信してる。。。
と、なれば逃げるしか無い!!
しかし、タヌキは腕の中から飛び出して変化パパラヌの側へ。
ま、タヌキならば、責任感から変化パパラヌを見捨てられないのだな。。。
と、なれば…。
今度こそ、戦うしか無いな。
魔法棒に、力を集めながらもタヌキをチラ見する。
未だ呆然とするパパラヌの背中をさすっていた。
「大丈夫だよ。
これから花咲か爺さんをするから。
ほーら。
コレで大丈夫だろ?」
それから起こった事は夢の様に美しい出来事で(何故か俺も参加していたしな…)
生涯忘れえぬ体験だった…。
ーたぬき視点ー
もう!!
押しかけ嫁ってば、枯れ野がショックらしいよ。
あのね。
冬の後には必ず春が来るから!、
ふぅ。。。。
前に集めておいて良かった…。
花咲か爺さんが撒いてたのは確かにタンポポの綿毛だったよな?
ふぅ。。。。
一陣の風が吹いて広がってゆく綿毛が、地面につくたびに緑が湧き上がるぞ!!
おー。
花咲か爺さんすっげー!!!
あ、今は俺か?
とにかくあるったけの綿毛を飛ばして、辺り一面が緑になるのが面白いぞ!!
花咲か爺さんは、花も咲かせたけど俺には難しいなぁ。
と、思ったら良いところはやっぱりオヤジが、さらってゆくよ。
魔法棒から光が溢れて、辺りの草花が咲き誇り樹々もグングン大きくなるよーー!!
オヤジ!!
やるなぁ…。
さすが俺の家族だーー!!