金色の小鳥?!
ーオヤジ視点ー
「こんな奥の手があったとは…」
タヌキのお握りに、先祖返りと言う奇跡を成し遂げたカラの驚きの言葉に返事が出来ない。
いや、アレは恐らく奥の手では無い。
真面目に歌ってあのレベルなんだろう。
まぁ、タヌキだしな。
しかし…。
人が失神するレベルの音痴が存在するとは。
街の人々は、あまりの出来事に記憶喪失になっているのか誰も話題にしていない。
「オヤジ…。
この鈴ってば、素敵だな。
仲間たちとの演奏は本当に楽しかったよ!!」
口の周りにご飯粒を大量に付けて嬉しそうなタヌキに生返事を返すと…、
「もう!!
お子様なオヤジだな。
置いてけぼりの店長に袈裟は預けて来ちゃうし…もう、これじゃ坊主頭作戦も延期するしか無い!!
失恋を癒す次の作戦を考えなきゃ…」
ん?
最後の方は声が小さくて聞こえにくかったけど、嫌な予感しかしない。
張り切るタヌキは、要注意!!だからな…。
それにしても、怒涛の展開だった。
駆けつけてみれば、カラは先祖返りで暴れて、ジャンセ達は完全に熨されていたし。
一人だけ離れた場所に伸びていて、その周りをタヌキと精霊一行がぐるぐる踊りながら回っている。
カオス…。
まさにその言葉以外、見当たらない。
賢明なる街の人々は遠くから眺めるのみに留めていた。
やっぱり、ここまで案内してくれた小鳥たちの行き先は、あの輪なのか?
そうか…。
鳴き声も高らかに、小鳥とタヌキと精霊の出すエネルギーに当てられて人々は徐々に後ずさっていた。
そう。それが功を奏したのだ。
気分上々のタヌキの独唱が始まったのだから。
(気絶組は、俺たちだけで済んだのだ…)
一瞬だった。
一瞬でノックアウト!!
全員が倒れた後の事をタヌキに聞けば…。
俺の隣に座ってお握りの続きを食べていたらしい。
で!!
当然ながら、小鳥に餌をやり続けた結果がコレだ!!
タヌキの周りを囲む金色に輝く小鳥。
歩けば頭の上でぐるぐる回る。
そう。
そりゃ金の輪っかがタヌキの頭上に登場!!となる。
カラなど感激で泣き出したくらいだ。
だが。
俺は疑問でいっぱいだ!!
単なるお握りだったはずだ。。。
どうしてこうなる?
タヌキの言う通り何かのオトメとか言う奴らがいるのか?
そもそも…オトメとは?と聞けば…。
「もう!!
これだから、純情な男心はなぁ。
勉強も大事だよ!
。。。
そうか!!
勉強だ!それこそ、オヤジに足りないモノ。
乙女を知る。
それには、今以上に米粒の勉強がいるな。
なんと言っても一粒に7人も詰まってるんだから…」
ふぅ。
このパターンは覚えがある。
とにかく、とにかくカラの国『巨人族の国』へ向かわねばな。
『世界のヘソ』を目指すには…。
ん?
「オヤジ!!
店長を置き去りだから、ちょっと手紙出すね。きっと袈裟を織る人のとこへ着いた所だろうから!」
タヌキ、いったい何を…あ!!!
金色の小鳥のうち二羽だけが、窓の外へと飛び出した。
「伝言頼んだから!」
グラセルよ。
今は、今は同情しよう。
健闘を祈る…よ。。。