手紙の中身は?!
ーカラ視点ー
俺とパパラヌ。
組み合わせの謎よりも、この場所が問題だ。
こんな事なら、子供の姿に変化しなければ良かった。
魔封じのこの馬車の中で、変化を解くのは命懸けになる。
戦士と生まれたからは、惜しむ命ではないが。
無益な使い方は出来ぬ。
これでも、王国の一員。
更に…。
パパラヌを守らねばならぬ。
ゼルグフの初めての最愛の家族。
それをこの様な形で、危険に晒す意味を恐らく分かってはいまい。
昔、一緒に冒険していた頃のゼルグフではもうないのに…、
この無謀な真似は、自暴自棄に近いのか?
それほど、他国も此奴らを匿う事をしなかったのだな。
ジャンセ。
お前たちは、何処へ向かう?
勇者と言われた、お前たちは…
ーグラセル視点ー
ぬかった…。
でなくば、失神など。
数百年生きてきて、今更恥をかく日が来るとは思わなかった。
たった一枚の布に?!
しかし、アレは卑怯だ。
我々の手には完全に余るお手上げ品。
それを加工せよ。いや、加工出来る者を紹介せよと??
ゼルグフよ。
お前たち…ザリ様を味方につけるとは…。
いや。
ザリ様とは、という問いは諦めた。
かの方は、我々の範疇にないのだから。
でも。
あの布を加工出来ると言ったら、アイツしか。
うーん。
アイツに会うのは、嫌だ。
嫌だが、会わねば絶対に引き受けだ途端に布をネコババする。
アイツは。そんな男。
我々は、山奥にあるアイツの住処に向かう事になった。
とにかく!!
あの布は俺には、キツすぎる。
持つだけでも、人を選ぶ。
だからこそ、ゼルグフと共に向かう事になったのだ。
だが…。
パパラヌは、連れて行けぬ険しい山道。
馬も入らない道の上、魔獣も多く出る。
そう。
パパラヌは留守番だ。
都合よく、俺の店を訪ねて来たカラを付き添いに置いて出発する。
パパラヌとカラ…。
カラの真剣な表情に安堵して出発した。
山の中程に到着し、岩場で腰掛けて休んでいた俺たちの頭上を一羽の鳥がやってきた。
「おい、ザリ様からの緊急連絡だ!!」
空の鳥は口に加えた1通の便りをゼルグフへと落として飛び去ってゆく。
中身を広げた途端!!
ゼルグフが駆け出したのだ。
反対方向だぞ?!
手紙にいったい何が??
奴が落としていった手紙を拾い集めると、そのまま固まった。
『勇者一行にパパラヌが攫われた』
手紙の中身には、そう書かれていた…。