着陸地点を探せ?!
ーオヤジ視点ー
『聖者の塔』
この国にはその名にある通り、大きな塔がある。
それは、遥か昔出来たもの。
出来た経緯は分からないが、この塔が魔法使いにとって重要なものだと言う事を知らない者はいない。
迫害から逃す為に隠したとも。
魔力の元々とも。
様々に言われるも、分かる事は一つ。
『塔に異変ありし時、この世界から魔力そのものが消える』
言い伝えは強烈だ。
生まれた時から身のうちにある魔力。
それを失った時、俺はどうなるのだろうか?
邪魔に思った事も何度もある。
コイツの為に誤解も受けた。
だが、多くの人を救う事も出来た。
ラクスゥの背中に乗ったまま、暫し考える。
俺とたぬきのみしか乗れなかった。
カラは拒否されたのだ。
ま、カラはかえって喜んでいたが…。
ラクスゥの背に乗る…それは冒涜的な意味合いを持つらしい。
そう言えば、あの国にはラクスゥの壁画が残っていたな。独特な国なのを忘れていた。
塔は、この国の中心地にある。
いや、昔は違う場所が中心地だったのが移動したのだ。
そう。
魔法使い。
それを守る事こそがこの国の国是。
沢山の魔法使いの暮らす国には、便利な魔法道具も多く他国への輸出も盛んだ。
それ故にどの国も逆らわない。
この国の道具無しで暮らせる人間は、今はいない。
便利な道具とは、そう言う力を持つのだ。
で…
俺は忘れていた。
この国で俺がどうされるかを。
そして、ラクスゥに乗って現れたら、どうなるか…
焦るあまりに完全に忘れていたのだ…。
ーたぬき視点ー
いやぁ、楽しい夜だった。
仲間たちも集まっての演奏会は最高だった。
ちょっと興奮して強く叩き過ぎたけど…。
花嫁御料を運ぶ素敵な馬も手に入れたし!!
嬉しいお知らせです!!
なんと…
たぬきって、馬語が喋れたんだよ!
たぬきは、バイリンガルなんだなぁ。
お喋りな馬に付き合って喋ったら仲良くなって、背中に乗せて運んでくれた。
楽ちんで、うっかり寝入ってたら…目の前にびっくりする情景が?!
オヤジ…。
嬉しいからって、こりゃ無いよ。
こんなに沢山の人々を集めているとは…。
ちょっとやり過ぎな気もするけどな。
馬から下を見たら…人・人・人。
とにかく、着陸地点に埋め尽くす人々の出迎えに度肝を抜かれたよ。
これじゃ、降りれないよ。
オヤジってば、どんだけ張り切ってるんだ?!
こうなりゃ、頑張るしか無いな、俺が!!
つい、「凄い人の波に目が廻るよ〜」と言ったら馬の奴が聞きつけて。
『蹴散らすか?
それとも姿を見えなくするか?』って。
。。?
ええーー!!
姿を見えなくするって何?!
『コイツらに見えなくする方法もある。
ただ、さすがにココには着陸出来ないが』
なんと、透明人間になれる日が来るとは…。
男の夢。
果てない夢が今、現実に?!
うーん。、
感慨深いなぁ。
おぉ、本当だ!
下の方で大騒ぎになってるし。
透明人間成功!だな。
ん?
オヤジ、なんだ?
「いや。
少しばかり…この後の説明とか事態とか考えただけだよ。しかし、タヌキと暮らすならばコレぐらい…」
そうか!!
お嫁さんにドッキリを仕掛けたかったんだな。
サプライズとかは、定番になりつつあるからなぁ。
まぁ、ここまで騒ぎが大きくなると困るよな。
しかも、透明人間までだとな。
よーし!!
アレを買うしか無い。
挽回するぞー!!
「馬!
頼むよ。
コッソリ下ろしてくれよ。俺とオヤジで買い物してくるから」張り切って頼むと。
透明になった馬は、快く町外れに下ろしてくれた。
ん?
ついでに姿も変化させるって?!
透明人間のオマケらしい。
馬のサービス品なんだって、さ!
おぉ?!
おおおおーー!!!
まさかの…。