タフネスが合言葉?!
たぬきにとって、最重要な餌のパンを小脇に挟んで扉へ向かうと笑顔の女性に止められたぞ!
首を傾げると、女性が暴挙に出た!!
やめろよ!
身体を撫で回すとは、人権蹂躙だ!!
あ、間違えた…たぬき蹂躙だ、だった。
「ゼル。
この子は、変わった魂の色をしているわ。
ちょっと、弄っても良い?」
ええーー!!
ナニサレルノ、俺。
まさか、セク…。
「リリラル様。
手荒な事は、おやめください。それよりも見解を知りたいのです」
オヤジ…疲れた表情で。
分かった!!
喧嘩したんだな、恋人と…。
『聖なる魂に、力を与え給え』
女性がそう叫んだその時!!
ビビビッ!!!
雷が降ったのか?(家の中なのに…)
俺、もうダメなのか。
せっかく、恩返ししたかったのに…。
「パパラヌ…恩返しって…」
は!
気がつけば、いつの間にかオヤジが俺を抱き留めていた?!
やっぱり、雷が落ちたか。
よく、無事だったな。
タフネスが合言葉か?
「ぷっ。
パパラヌの癖にやっぱり、変わってるわ。
でも、後は貴方で何とかなるでしょ!
じゃあね!」
あー、女性の姿が消えた…。
何だよ、仲直りは?
「パパラヌよ。
最初にはっきりと訂正しておくが、絶対、絶対にあの人と俺は恋仲ではない!!
絶対だ。」
何だよ、照れ隠しか?
「だから、違う。
はぁ。
まあ、こっちの問題は後から時間をかけても晴らしてみせるとして。
言葉が通じててるのは、理解してるのか?
俺にもお前の言葉が分かってるんだぞ?」
。。。
ガーン!!!!!!
なんと。
垂れ流し?
今まで、俺のセリフは垂れ流しか?
恥ずい。
「そこ?
気にする位置すら、予測不能だな。
とにかく、パパラヌよ。
お前の名はなんだ?」
パパラヌ、パパラヌ言うけどさ。
俺の種族は『たぬき』ですから!!
「タヌキだな。
変わった響きの名だな。
それより、パン齧ってる途中だろ。
食べながら、聞いてくれ」
なんと。
パンが転がってるではないか。
ぱっぱと、埃を払って。
(3秒ルール適応…と言う事にする!!)
ウマッ、モグモグ。
「とにかく、色々気にしてたら始まらん。
『傷薬』について、聞きたいんだ。
何処から取ってきたんだ?」
あーーー。
そうだよ。
葉っぱは?
オヤジが指差す先には、葉っぱが積まれてた。
オヤジ毎晩、熱が出てるぞ。
それに、身体中が傷だらけだ。
昨日は一晩中薬を塗り込んだから、今は元気そうだけどちゃんとお医者さんに診てもらった方が良いぞ!
ん?
「やっぱり、あの薬を知っていて付けたのか。
じゃあ。
あの薬の取ってきた場所を…あ!
待ってくれ…」
仕方ない。オヤジの願いだ。
パンを一気に口に詰め込んで、ひとっ走り。
既に夜になってたから、全然OK。
やっぱり、傷が痛むんだな。
沢山摘むぞ!!
え?
オヤジ??
「はぁはぁ…。
思ってたより、素早いな。
さすがパパラヌ。あ、タヌキか。
こんな雑草だらけで良く見分けがつくな」
オヤジ。
光ってるから、簡単じゃないか?
目も悪いのか?
うーん。
歳を取るとこうなるのか。
「はぁ。
ツッコミどころしかない。
スキルのない俺でも、ツッコめる内容だらけで。
とにかく、薬草はもう充分だし寒いから帰ろう」
オヤジが急に抱えて上げると
目の前に、陽炎が?!
『転移』
陽炎からの、暖炉前???
何という不思議。
オヤジの秘密の技なのか?
とにかく、濡れた身体を乾かそうと暖炉前にいるとオヤジがタオルでガシガシ拭いてきた。
痛いよ。
そっと頼むよ。
「タヌキ。
聞きたい事は山盛りあるが、大事な事を一点。
ここから森へ帰りたいか?
家族はいるのか?」
2点だよ!
まあ、オヤジだし仕方ないな。
帰らないよ。
たぬきは、恩返しを大切にする生き物なんだ。
そして、俺は一人で生きるアウトローさ。
(捨てられたとかじゃないから!!)
それより、オヤジ。
たぬき汁好きか?
食っちゃうか…。
ゴクン。
緊張の一瞬だぜ!!
「ハハハ。
やっぱり、それを聞く辺りがパパラヌだな。
俺は、お前を食べない。
それ以前に、そんな不安の中で良くココに居たな…やっぱり変わってる」
オヤジよ。
男と生まれたからは、恩返しに危険の一つも乗り越えなきゃな。
オヤジは、一瞬苦い表情を浮かべて頷いた。
その晩は、そのまま寝た。
寝る前にオヤジは、変な事を繰り返しだけど。
「タヌキよ、
有り難い。有り難いけどな。
絶対に、あの傷薬は塗らないでくれ。
もう、すっかり傷は大丈夫だから。
約束してくれ。頼むよ…」
半泣きでのお願いとは。
恐らく…子供時代のトラウマだな。
アレ?
半笑いとか。
とにかく。
その晩は、ふわっふわ毛布に寝た。
この毛布見るたびに、ニヤけるんだよな。
だから。
オヤジがソレをジッと見てたのは知らなかった。
その後の、怒涛の展開も…。