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翌日。
零と二人で話し合い、ギルドに行く事に決めた私達。
今日はちょうど魔法の訓練が無い日なので 朝食を食べ終えた後、デュレインさんの前で変なボロが出る前に仕事を探してくると言って、急いで家を出た。
家を出ると、晴れ渡る青空が目に入る。
就職日和なり。
零と二人でいざ行かん! と歩み出す。
そして、私達は商業街へ来ていた。
人を見れば威嚇ばかりしやがるミュミュットを買った店の前を通った時、零がそう言えばと口を開く。
「ギルドって何処にあるの?」
「ここから直ぐ近くだよ。……ほら、あそこに人が沢山並んでるの見える?」
私達がいる場所よりも少し先にある大きな建物を教えると、そこへ目を向けた見た零が結構人が並んでるねと呟いた。
結構早めに家を出て来たつもりだったんだけど、ギルドの前にはかなりの人が既に並んでいる状況だった。
並んでいる列にまで歩いて行くと、いかにも魔法使いっぽい人や、顔に傷が幾つもある厳つい傭兵みたいな人が大勢いるのを目にする。
どうやらこの列は、初めてギルドに登録する人達が並んでいるらしく、私達もここに並ぶ必要があるみたいだった。
「透ちゃん、ちょっとあれ見て」
ん? と思いながら零が見詰める先――列の最後尾を見てみると。
昨日フィードから教えてもらった獣人――『エルゲード』がそこにいた。
確かに、獣人はそこら辺にいるとは言っていたけど、今まで一度も出会わなかったのに、何で話題に出るとこうも早く出会えるのか。
不思議である。
「透ちゃん、凄いね! 獣人だよ獣人!」
零がその獣人を見ながら興奮した様に指を指す。
コラコラ、指を指すな。
そう思いつつも、私も興味本位でチラリと盗み見る。
人間のような体つきをしているが、顔はまんま狼だった。
人と同様に服を着て靴を履き、腰には長い剣を佩いていて、身長は私でも見上げないといけないくらい高い。
細身だが、がっしりとした身体つきを見ると、『戦士』と言った感じだろうか。
列に並ぶ為に更に近づき、最後尾にいる獣人の後ろに立つ。
後ろ姿は人間が立っているようにも見える。
組んでいる腕や手に視線を落とせば、手は人間と同じ形で五本の指があるが、全て毛に覆われていて人の肌のようなところは一つも無い。
暫く後ろに立ちながら観察していたら、青黒の毛並みをした獣人が急に動き出して目の前からいなくなった。
どうやら、観察している内にどんどん前に進んでいたらしい。
「おい、そこの坊主二人。お前ら、本気でギルドに登録しようと思っているのか?」
気付くと、目の前にはギルドの職員らしき人が立っていた。
青黒の毛並の獣人は、職員らしき人の後ろにある扉を押して、建物の中に入って行った。
「おいコラ。人の話を聞いてんのか?」
職員らしき人――顔の半分に刺青を施した青年が、半眼でこちらを睨む。
「あぁ、すみません。もちろん登録希望です」
「同じく登録希望!」
私と零がそう言うと、目の前にいる青年はやる気の無さそうな感じでスッと右手を差し出して来た。
差し出される右手の意味が分からず戸惑っていると、握手しろと言われる。
聞けばこの青年、他人と握手する事によってその人の中にある魔力の量が分かるんだとか。
「ギルドは年齢性別問わず、強ければ入れる。が、入るには条件があるんだ」
「条件?」
「あぁ。弱かったり、魔力の量が低ければ……ここには入れない」
その言葉に私達は、それなら大丈夫と笑顔で答えておいた。
自分達の魔力など、感知する事も量がどれほどあるかも全く分からない。
だけど、私達の魔法の練習を見ていたジークさんから「お前らの魔力は底無しだな」とのお褒めの言葉を貰っているのだ。
私は差し出された手をギュッと握りしめた。
握りしめた瞬間――。
「んなっ!?」
刺青君(勝手に命名)は細かった目をカッと見開き、握られた手を凝視。
そして、私の顔を化け物でも見る様な目で見詰める。
私と手を繋いだ状態で固まる刺青君に、零は空いている彼の左手を握る。
「はぁぁ!?」
顎が外れるんじゃないかと思えるぐらい、口をポカーンと開ける刺青君。
「どう? ここで雇ってもらえそう?」
右手を私と繋ぎ、左手を零と繋いだ状態で固まっている刺青君に、零が不敵に笑ってそう言うと。
「もももも、もちろんだ! ちょ、ちょっと待ってろ」
彼はそう言うと、パッと私達から手を離し、懐からメモ帳を取り出して目にも止まらぬ速さで何かを書きだした。
果たして、人が読める字が書けているのだろうか?
そんな事を思っていると、青年は書き終わった紙をメモ帳からピッと剥がし、私達に差し出す。
「おい、これを持って中へ入れ。中に入ったら、モヒカン頭の男を見つけてそのメモを渡せ」
私に渡したメモに指さしてそう言うと、私達の背中を押して「おら、さっさと行け」と言って扉の中へ突き飛ばした。
次は21時に投稿。




