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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
黒騎士
32/51

8

「守護者かぁー。なんか響きはカッコイイね。……でもさぁ、その“紋様を持つ者”って凄く強いんでしょ? だったら、護られる必要ないんじゃない?」

 零の言葉に、そんな事は無いと王子が首を振る。

「どうして?」

「確かに、“紋様を持つ者”は魔力や使える魔法に関して右に出る者はいないと言われています。しかし、“紋様を持つ者”も一人の人間。弱点があります」

「弱点?」

 目をパチパチ瞬きながら、王子を見詰める零が首を傾げる。

 そんな零を真剣な表情をしながら、王子がこう言った。

「“紋様を持つ者”は、治癒魔法で自らを治す事が出来ないんですよ」

「それのどこが弱点なの?」



 魔法で自分の傷を治せないのが、なんで弱点になるんだろう?



 今まで生きて来た24年間、怪我なら傷薬をつけたりして治していた。

 魔法が使えなくても、それが弱点なんて思えない――そう言うと、ジークさんが「今朝話した事を覚えてる?」と聞いてくる。

「今朝の話ですか?」

「そっ、腕の紋様を見ようと包帯を取ろうとしたトオルを、俺とリュシーが止めただろ? その止めた理由、覚えてる?」



 あの白い家で肩の怪我をジークさんに魔法で治してもらった時、痣も消えたと思って包帯を取ろうとしたら、二人に慌てて止めたられた事を思い出す。



 確か、包帯を何故取ってはいけないのかと聞き返した私に、ジークさんはこう言ったのだ。

「えっと、確か……“紋様を持つ者”が誰なのか知れると、いろんな人らから狙われて、最悪殺される場合がある――ですよね」

「そう。“紋様を持つ者”が狙われる理由は沢山ある。まぁ、それはまた今度話すとして……どんなに強力な魔法を使える人間であっても、隙は出来るもんだ。その隙を狙われて攻撃されるとどうなる?」

「敵は殺すつもりで攻撃して来ます。致命的な傷を負った時、自分で自分の怪我を治せない場合――それは死に繋がります」

 ジークさんと王子の言葉に、何も言えなくなる私達。



 自分の事だけど、そんなの今までの生活から考えると想像が出来なかったから、すっかり忘れていましたよ。



 そこへ、トドメとばかりに、私の胴に両手を回したカーリィーが口を開く。

「それにさー、“紋様を持つ者”は『自分を治せない』他に、もう一つ弱点があるんだ」

「……それって何?」

 えぇーまだあるのぉ? と思いながら、顔を上げてカーリィーの顔を見ると――私の顔を見返したカーリィーは、にっと笑ってこう言った。



「『紅い月』の時期が来ると、“紋様を持つ者”は魔力が無くなるんだ」



「ふ~ん?」

 だから? っと見返すと、私がよく理解していないと気付いたカーリィーは、「あぁ……」と言いながら付け足した。

「トールは、さっきギィースさんがレイさんの魔力を強制的に止めたのを見ただろ?」

 その言葉に、グッタリとギィースさんに凭れ掛かる零の姿を思い出し、コクッと頷く。

 零はあの時の事を思い出しているのか、眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしている。

「あそこまで酷くは無いと思うけど、魔力が無くなる『紅い月』の時期になると、魔法を使えなくなるどころか、動けなくなるんだ」

 零と重なる様にマジで? と聞き返すと、うん。マジで、と言われてしまった。

 今まで魔法なんて使った事なかったし、別に使えなくてもいいやと思っていた。

 えぇ~、動けなくなるってどういう事?



 って言うか、紅い月ってなんですか?



 そう聞くと、リュシーさんが言うには――。

“紋様を持つ者”だけが、月が紅く見える時期があるらしい。

 そしてその時になると、何故か身体中の魔力が無くなってしまうらしく、魔法を使うどころか思うようにも動けなくなってしまうとの事。

 しかも、その『紅い月』は年に一度の時もあれば、数か月に一度と言う時もあり、いつそうなるのか分からないのだと言われてしまった。



 まとめると。


 一、“紋様を持つ者”(私と零)は大勢の人間から狙われる存在である。

 二、敵の攻撃を受けて怪我をしても、自分で魔法を使って治す事が出来ない。

 三、“紋様を持つ者”だけが見える紅い月。その時は魔力が無くなって、動けなくなる。

 結果、誰よりも巨大な魔力を持ち、高度な魔法を使う事が出来る『最強』の存在らしが、時と場合によっては『最弱』にもなるらしい。



「だから、大人しく俺達に護られてて」



 そう言って、私を見下ろしながらニコッと笑うカーリィー。

 ……あぁ、カーリィーのお尻から、見えるはずのない尻尾がパタパタと動いている様に見える。

 周りを見ると、皆真剣な表情で私を見ていた。



『護られてて』



 皆、思う事は同じらしい。

 零を見ると、少し困った様な表情をしていたが、ギィースさんに頭を撫でられながら「私達が付いています」と言う言葉に、ちょっと照れている様子。

 私は皆の顔をもう一度見てから、ぺこりと頭を下げる。

「あの、色々とご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「まっかせとけ!」

 満面の笑顔でギューッと抱き締められた。

 ちょっと苦しくて恥ずかしかったけど……でも、その腕はとても温かくて――安心できた。

次は25日の0時過ぎ頃の更新予定。

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