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顔をグイッと引っ張られるようにして口付けをされていた私は、首だけを伸ばした状態で固まっていた。
やはり、私の感は正しかった……。
もう離してくれと訴えるようにバシバシとデュレインさんの腕を叩いていたら、左腕の痣が急にズキズキと痛み出した。
「んい゛っ!?」
腕が燃えるように熱くなり出し、痣の部分が針を刺されている様な痛みが走る。
痛みで眉間に力が入り、ギュッと目を瞑った時───。
頭の中で、何かが砕け散った様な音がした。
えっ? と思って目を開けた時には、今まで感じていた痛みが一瞬で消え去っていた。
何が起きたのか分からずに瞬きしていると、デュレインさんの唇と少し冷たい細い手がそっと離れる。
「終わりました」
感情のこもらない声で彼女がそう言った瞬間。
「私の透ちゃんになんて事すんのよぉーっ!!」
猫耳をピンッと前に立たせ、尻尾を倍以上に膨らませた零が叫んだ。
椅子を後ろに倒しながら立ち上がると、私の胴を両手で掴み、スポーン! と椅子から私を引っこ抜いた。
そして、私を抱いたまま体を少し捻り、ヒュッと口から息を吐き出しながら鋭い蹴りを放つ。
空手有段者の零が本気を出した蹴りがデュレインさんの顔を蹴りそうになり、私は顔面蒼白になりながら零に止めるように声を掛けようとしたのだが……。
彼女は零の足をひょいっと軽ーく避けると、何事もなかったかの様に元の位置へ戻って行った。
「ちょっと、私のマジ蹴りを避けるなんて……あのメイドって何者なの」
「や、空手有段者が一般の人に蹴りを入れようとしたらダメだからね?」
チッと舌打ちをする零に注意しながらも、私も同じことを考えていた。
しかし、この数十分で彼女について分かった事と言えば。
無表情で余り喋らず、口を開けばちょっと嫌味を言うメイドさん。
だけど、魔法も使えても反射神経がかなりいい。
私が見たところ、試合すれば同等か……デュレインさんの方が強いかもしれない。
と、いうものであった。
「大丈夫? 透ちゃん」
「ん? あぁ、大丈夫」
デュレインさんの事を考えて黙っていたら、心配した感じで私の顔を覗き込んで来る零に顔を上げながら頷く。
「大丈夫。……だから離してくんない?」
救出してくれたのはありがたい。
そして、両腕で私を抱き締めるのはいいんだけど、ガッチリ胸の所を押さえられていて苦しいんだよね。
零の腕を外そうと手を掛けた時、ルルとカーリィー君の叫び声が聞こえた。
「ちょっと、デュレイン。トールになぁーんて事をしてくれるのよ!」
「そうだ! キスする必要はなかっただろうが!!」
「………………」
顔を上げれば、何故かルルとカーリィー君がデュレインさんに抗議していて、その隣でエド君がウンウンと頷いていた。
どうやら、デュレインさんが私にキスした事を怒っているらしい。
怖い顔をした3人に詰め寄られるも、デュレインは表情を変える事なく必要ならあったと言った。
「トオル様に触れながら詠唱していて気付いたのです。思っていた以上に強力な封印が施されていると。ですから、私の魔力を直接トオル様の体内に入れて封印を解く必要があったんですが、体内に直接私の魔力を入れるには、あれ以外の方法がなかったんです。───それが何か?」
常にない饒舌な彼女に3人が黙る。
いや、これは驚いている顔か?
「『封環師長』のデュレインが、あれ以外では出来なかったと言ってるんだ。許してやれよ」
ルル達とデュレインさんの睨み合い(や、デュレインさんは涼しい顔をしている)に、ジークさんの苦笑した声が割って入って来た。
そして私にも、デュレインを許してやってくれないと聞いて来る。
申し訳なさそうにそう言うもんだから、私は肩を竦める様にして答えた。
「それしか方法が無かったのなら、別にいいですよ。別にファーストキスだったって言う訳じゃないし、キスの1つや2つで騒ぐ程の年齢でもないし。それに、それしか方法が無かったんでしょ? まぁ確かに、突然でビックリはしたけど」
する前に一言言ってほしかったって言うのが本音かな?
って言うか、キスの1つでそんなに怒る事でもなかろう。ちゃんとした理由があるんだし。
1人でうんうんと頷きながらそう言ったら、フィード君が首を傾げる。
「一言あったらいいのか?」
「んー……いいと言うか、心の準備が出来るっしょ? それに、同性の綺麗な女の人だからまだ許せる」
どっかのオッサンに突然されたら、キレて半殺しにしてたかもだけど。
笑いながらそう言ったら、何故かフィード君の顔は引き攣っていた。
そして彼は一言、「…………そう」と呟いて、この話は終わった。




