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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
黒騎士
27/51

3

 メイドさんに連れられて、今の体型に合う子供服に着替え終えてから皆が待っている客間に移動した私は、精神的に疲れ切っていた。

 なぜなら───。




 衣裳部屋みたいな部屋に入り、そこで私を降ろしたメイドさんは、クローゼットの中に沢山ある子供服の中から可愛いスカートを取り出す。

 ふりふりのレースが付いた薄ピンク色の可愛らしいスカートを見て、それから私をチラリと見た彼女は「これは似合いませんね」と言って、スカートをポイッと投げた。似合わないのは分かっているけど、ポトリとソファーの上に落ちるスカートを見て悲しくなる。

 メイドさんは衣裳タンスの中をガサゴソと漁り、ズボンを取り出して「ここに置いてある女物の服は、貴女には全く似合いませんのでこれを着て下さい」と言ったのだ。(その時も、彼女の顔は無表情)

 服を買いに行くと、よく男と間違われて男物の服を進められた事なら何度もあった。だけど、こうもハッキリ「女物の服は似合わない」と言われて、男物の服を勧められるのは初めてである。

 この人、私の事が嫌いなのかな……?

 とか思いもしたが、メイドさんの顔を見ても、その表情からは何も読み取ることが出来なかった。




 皆が座っているテーブルまでメイドさんに案内される。空いている席があったからそこに座ろうとしたら、「お待ちください」と言われた。

 少し背の高い椅子によじ登ろうとしている私を止めたメイドさんは、私を椅子から離すとその椅子を他のメイドに渡し、代わりに違う椅子を手にしてやって来た。

 ……あ、あれはっ!!

 私はメイドが持っている椅子に目が釘付けになった。



 ファミレスとかでよく見かける、お子様用の椅子じゃんっ!?



 その椅子は今まで置かれていた椅子をよけて出来た空間に、トンッと置かれた。

「どうぞお座り下さい」

 メイドさんの無機質な声が耳に入る。

「え? あ、やっ、あのぉ~……出来れば普通の椅子……うわぁ!?」

 それに座りたくないと拒否ろうとしたら、急にメイドさんに抱きあげられた。そして。



 ちょこんと子供用椅子に座る私。



 それを見た零に「ぷっ!」と笑われた。

 ハッと周りを見ると、皆の視線が私に集まっている。

「…………っ」

 屈辱である。しかもめっちゃ恥ずかしい。顔から火が出るんじゃないかと思うぐらい、恥ずかしい。

「どうぞ」

 私を強制的に子供用椅子に座らせたメイドさんは、飲み物を持って来てくれた。

「あ、ありがとうございます」

 コトンッと、オレンジジュースが入った小さなグラス(ストロー付き)が目の前に置かれた。

 頭を下げると、メイドさんは恭しく頭を下げてから離れて行った。

 机の上を眺めると、私以外は温かい紅茶が入ったカップが置かれている。

「………………」

 あのメイドさんは、私が見た目通りの子供ではない事をリュシーさんとの会話で気付いているはずなのに、なにゆえこの仕打なのか……。


 

 …………イジメ?



 そう思いたくなるが、頭を振る。だって、彼女とは今初めて会ったのだ。嫌われる様な事はしていない。

 もしかしたら、子供に変わってしまった私の口に合うように、ジュースを選んだのかもしれない。



 うん、そうだ。そう思う事にしよう。



 オレンジジュースを一口飲む。

 それに、皆と同じ椅子に座っても、椅子が大き過ぎて結局はこの椅子のお世話になっていたかもしれない。

 ふぅ~っと諦めに似た溜息をついていたら、そんな私を見ていたジークさんが苦笑した。

「まさか、ルルの魔法薬を食べて、その姿で帰って来るなんて思いもしなかったよ」

「私もこんな事になるなんて思いもしませんでした」

 両手でコップを弄りながらガックリと俯く。

「最初に見た時なんか、エドが迷子になった子供でも連れて来たのかと思ったよ」

「俺なんかエドにベッタリくっついていたから、こいつの隠し子かと思った」

 などと言って笑い合うジークとカーリィー。

 エドはそれらの言葉を綺麗に聞き流していたが、私はその話はもう止めてくれと叫びたくなった。






 ジュースを半分飲んで一息吐いた時、向かいに座っていた人が飲んでいたカップをソーサーに戻すのが目に入った。

 あれって地毛かな? 薄紫色の髪ってこちの世界に来てから初めて見たかも……。

 薄紫色の少し長い髪を黒い紐で結び、同色の瞳を零に向けて優しく笑っている青年を私はチラッと盗み見た。

 最初に見た時は女の人だと思ったくらい綺麗な人だと思った。だけど、話した時の低い声や広い肩幅を見れば、その人が男性であるのが分かる。

 見た感じ、リュシーさん達と同じくらいの年齢だろうか?

 そんな事を思っていたら、薄紫色の綺麗な瞳と目が会う。

「貴女が、トオルさんですね?」

「え? あ、はい。そうですが……」

 突然話し掛けられ、続く言葉が出て来ない。

 そんな私を見たその人は、そう言えば挨拶がまだでしたねと言った。

「私はゼイファー国の黒騎士、ギィース・エルディグルと申します」

 ギィースさんが頭を下げると、彼の両隣りにいた人も後に続く。

「ゼイファー国黒騎士、シェイス・グレッドセンです」

「同じく、ゼイファー国黒騎士、スタン・ロックといいます」

「あ、私は零の従姉妹の瑞輝透です。よろしくお願いします」

 ペコッと頭を下げてから、あれ? と首を傾げる。



 今、彼らは黒騎士と言った?



 こちらの世界に来てからよく聞く『黒騎士』という言葉。さっき、エドも黒騎士になったとか言っていたよね?

 一体、『黒騎士』とはどういったものなんだろうか。

「あの、黒騎士って一体何なんですか?」

 分からないものは聞いた方が早い。そう思ってリュシーさんに聞いてみたら、彼女は持っていたカップを静かに置く。

「そうですね、黒騎士とは……」

 少し言葉を区切ると、リュシーさんは私を見て微笑んだ。



「“紋様を持つ者”───王よりも貴い存在である、その方を護る者を……黒騎士と言います」

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