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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
ルルの魔法薬
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1

 商店街から少し離れたあまり目立たない場所に、ルルの家はあった。

「ちょっと散らかってるけど、気にしないでねぇ」

 家の中に案内をされ、客間に通された私達はキョロキョロと部屋の中を見回していた。

 色々な物が溢れる室内には、涙形や星形、丸いビー玉の様な物が色々入った小さなガラス瓶が、棚やショーケースみたいな物の中に置かれていた。

 客間と言うより、まるでどこかの店の中にいるような感じだ。

「……俺、先に帰ってるから」

 凄いなぁーと思いながら見ていたら、誰かの呟く声が聞こえ、後ろを見るとエドが玄関のノブに手を掛けている所だった。



「今朝、数種類の魔法薬と染料粉と、グルヅルルの毒消しをリュシーに頼まれて……持ち物がいーっぱいあるのよね」



 ルルがにっこりと笑いながらエドに声を掛けると、エドはノブを掴んだ状態で固まった。

 私は目をぱちくりさせながらルルを見る。にっこりと笑っているが、その顔には「逃がさん!」と書いてあるのが私には見えた。

「分かった。手伝う」

「ホント? わぁ~い。助かるよ、エド♪」

「…………はぁ」

 帰れなかった事に、何故かガックリとするエド。

 何が彼をそんな風にさせるのか。

 首を傾げながらルルとエドを見ていた私であったが、直ぐにその理由を知る事になる。






「それじゃあ、ちょっとこのコを置いて来るね。エド、ハーシェル、ついて来て」

 ルルはミュミュットが入った籠を持ってそう言うと、室内の1番端にある本棚の前に立って何かを呟いた。

 すると、本棚の真ん中に亀裂が入ると両側に分かれ、そこから地下に続く階段が現れた。

 隠し通路を初めて見た私と零は感嘆の声を上げた。だって、そんなの未だかつて見たことも無かったし。

 まじまじと見ていたら、そこへルルが足を1歩踏み入れ、「それじゃあ、ちょっと待っててね」とこちらに向かってヒラヒラと手を振り地下へと走り去る。そんなルルに走ると転ぶぞと


声を掛けながら後ろを追うエド。

「直ぐに戻って来ます」

 無駄に綺麗な顔に微笑みをプラスした王子が、地下へ降りて行った。

「なんか、王子様みたいな外見の人だね、あの人。金髪碧眼だし」

「あ、やっぱ零もそう思う? なんかハーシェルって外見や言動、身のこなしなんかが『王子様』なんだよね」

「ホントにねぇ~。───誰かと違って」



 零がチラリと横目で見るのは、フィード君。



 なんか含みがある言葉だとは思いつつ、零と2人でフィード君を見れば。

「え? えぇっと、……あっ!! こんな所に美味しそうな飴玉が!」

 彼はなぜか突然慌てだした。そして、テーブルの上に置いてある、ワイングラスに入った飴玉を私達に差し出す。

「ほ、ほら、まだ彼らも戻って来ないし、これでも食べて待っていようよ?」

「あぁ、うん」

「私はこれが食べたい」

 強引に飴を食べさせようとするフィード君に、私と零は押されるように飴玉を手に取る。



 そして、3人一緒にパクッと口に入れる。



「甘くて美味しぃ~」

「甘いの? 私のは何か苦い……」

 美味しい美味しいと言いながら、飴玉を口の中で転がす零であるが、私が食べている飴玉は少し苦い。何か漢方薬の様な味がする。

 そんな事を思っていると。



「───っ!? 飴を直ぐに吐き出せ!!」



 がりっと飴玉を囓った瞬間、目の前にいるフィード君が飴をペッと吐き出した。床の上をコロコロ転がるあめ玉と、彼の行動に私と零は目を丸くする。

 何事!? と思っていると。

「何をしてる、早く捨てろ!」

 かなり焦った様子のフィード君に、零は慌てて手の上に飴を出した。しかし私は……。



「た……食べちゃった」



「え゛っ!?」

 ギョッと振り向き、今口の中に入れたばかりなのに? と言われてしまう。

 や、気持ちは分かるよ? でもね、私は飴なんかを口の中に入れたら、ガリッゴリッガリッと直ぐに噛み砕いちゃうのよ。癖で。

「うぅわぁ~っ!? どうしよう……これ、絶対魔法薬なのに」

 吐き出した飴を見詰めながら、そう呟くフィード君の言葉に私は固まる。

「……魔法薬」

 その時、私は頭の中で『ルルは毒薬師』だって王子が言っていたのを思いだしていたんだけど。



 魔法薬───毒薬と魔法薬の違いは何なんだっ!?



 背中に、嫌な汗が伝い落ちる。そんな時。

「うっひゃぁ!?」

 これからどんな事が起こるか分からず、どうしようと考えていたら、突然零が頭とお尻を押さえ出した。

「ど、どうしたの?」

「うわぁ~ん。なんか、頭とお尻がムズムズするぅ~」

「……は?」

 かゆいよーとポリポリ頭を掻く零をポカーンと見ていたら、フィード君が急に胸を押さえながら呻き出した。

「う……ぐぅ。……うあぁ……」

「ちょ、ちょっと。大丈夫?」

「大、丈夫……じゃな、い」

「うわあぁ……どうしよう……本当にどうしたら」

 フィード君の尋常じゃない様子に、私はどうする事も出来ずにオロオロするしか出来無かった。が、ふと、視線の端に地下室に続く階段が見えた。



 あそこは───。



 私は地下へと続く階段を見ながら立ち上がり、2人に声を掛ける。

「2人共、ちょっとだけ待ってて。今助けを呼んで来るか───うぎゃっ!?」

 ルル達がいる地下室に行こうと駆けだした瞬間、足に何かが絡まってバタリと倒れてしまった。

「いったぁー。顔ぶった……」

 涙目になりつつ顔を擦っていると、違和感に気付く。



 服が肩からずり落ちる。それに、視界の高さが……低い???



 じんじんする顔の痛さに耐えながらそんな事を思っていると、後方で歓声とも奇声とも言えない声を上げた零に何事かと顔を向け、固まった。

 とんでもない姿をした2人が目に入ってきたかである。

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