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プロローグ

「ようこそおいで下さいました我等が王よ」



紅い月に照らされた『魔王城』と呼ばれるその城を背景に

少年と少女はぶつかった

「・・・ッツ、如何して貴方は魔族の『王』なんて!?」

純白の鎧に身を包み光輝く聖剣を少女は振るう

「『王』なんて、と言うのは随分な言い様じゃないか?

それに『魔族』と言うのは人間が勝手に付けた呼称だろう?

我らにとっては侮辱でしかない」

少女とは対極の漆黒の装束に身を包んだだけの少年はその手に持つ

少女の聖剣とは真逆の剣を振るい少女の聖剣を弾く

「魔族は人間の暮らしを脅かす存在だ!! 貴方は人間だろう!?

だから私は誓ったんだ、魔王を倒して世界を平和にすると!!」

少女は聖剣に魔法を纏わせ直線状に放った

「『誓った』? たった1年しかこの世界に居ないお前が

一体何を見て、何を聞いて何を感じて何を『誓った』と言うんだ?〈小賢しいっ!!〉」

少年の口から発せられたのは何処までも低く思い声、

たった其れだけで少女の放った魔法は霧散され少年には傷所か汚れすら着かない

「第一にこの世界の住人で無いお前が何故この世界の人間を救おうとする?」

「それは・・・・・・・・・・」

少女は魔法を霧散させられた事自体には驚いていないのか

直ぐにきりかかるが、少年に尋ねられ言葉に詰まる

「言えないのか?」

「くっ、私は・・・・私は!! たった1年でもこの世界を見て

私に親切にしてくれた人たちが魔族に苦しめられているのを知って、

彼らを救いたいと心から思ったんだ!!」

少女の心の底からの叫び、しかし少年は

「ふンッ、何とも笑えるな」

笑った、可笑しなモノを見たような顔で・・・・・

「何故笑うっ!?」

其の笑いに少女は怒りを覚え吠える

「何故笑うだと? ・・・・・・良いだろう。

第一に、そもそも魔族と言うのは穏やかな連中だ。

自ら争う事をしようとしないそんな連中だ、そんな魔族の領域に新たな土地を

求め侵略してきたのは貴様ら人間だ。先に手を出したのは人間だろう」

「なんだ・・・と」

少年の言葉に戸惑いを隠せないと言う顔をする

「勇者様っ!! 魔王の言葉になど耳を傾けてはいけません!!」

そんな少女に後ろに控えていた鎧を纏った青年が声をかける

「〈貴様は黙っていろ〉」

少年から再び低く重い声が発せられる、其れだけで青年は身を固くし

肌で感じる圧倒的な力に恐怖する

「〈魔族とは心優しく、他を疑う事を嫌う誇り高い存在だ。

故に、人の言葉を信じ人の事を信じ・・・・そして裏切られた。

其れでも、心優しい彼らは其れでも尚人間を信じ、また裏切られた。

其れでも、其れでも尚彼らは人間を信じようとする、信じたいと願う

だが裏切られる事を、また騙され殺される事を彼らは恐れ悲しんだ。

其の悲しみから、もう誰にも騙されず信じて裏切られる事のない

・・・そんな世界を望んだ。その願いが、其の悲願が、

俺を誘い(まおう)を呼んだ〉」

少年の説明とも独白ともつかないそんな言葉に、少女も青年も呑まれる

「でも、何故人間の貴方が!!」

辛うじて口を開けか少女が尋ねる

「〈世界には、決して交わらないモノがある。『白と黒』『光と闇』『陰と陽』『表と裏』

其れから『俺とお(まおうとゆうしゃ)』〉」

「何が、言いたいんだ・・・・・?」

少女の戸惑いに少年は苦笑すると

「確かに・・な、こんな台詞じゃ何が言いたいのかは分からんか・・・・・・

単純な話だ、様は素質の話だよ。元々この世界の住人ではなかったお前が

この世界に召喚(よばれ)力を得たように、俺もこの世界に招かれ

見て、聞いて、感じて、そして・・・・・誓った。

〈心優しき彼らに、彼らの望む安住の地を!! もう人間に裏切られる事のない

彼らだけの『理想郷』を!! 彼らに勝ち取らせようと!!〉」

少年の宣言、低く重く何処までも響く声、少女は・・・・否、この世界に住む人間は

全てが知った、魔王が何をしようとしているのか、魔族が何を望んでいるのか、

何のための魔族による侵略なのかを

「な・・ん、だと?」

少女は疑う自らの耳を、自らの考えた結末を、

「魔王は魔族のために人間を滅ぼそうとしている」と

そんな、災厄の末来を回避するため振るえる手で聖剣を強く握る

その時


――魔王陛下万歳!!――


世界が振るえた。

『魔王城』の敷地内、いつの間にか所狭しと並んだ

大勢の魔族たちの声


――魔王陛下万歳!! 魔王陛下万歳!!――


「〈進め弱き者達よ!! 振り上げた拳は汝らの道を切り開かん!!〉」


――我らの悲願に確かな光を!!――


「〈我に続け!! 我が心優しき友達よ!!〉」


――我等の道に強き光を!!――


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