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拝啓、電車へ Pt.1

自殺

… 自らの意志と行為によって自分の命を絶つこと


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 よし、死のう。


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 僕はお金持ちの両親のもとに生まれた。家は大きくて庭も広い。テーブルには温かい紅茶と甘いチョコレートが並んでいて、そこで暮らせることがすごく幸せだった。幸せだった。


 僕が小さい頃、お父さんとお母さんは僕におもちゃをいっぱい買ってくれた。これが欲しい、あれが食べたい、ここに行きたい、と言えばすぐに大きい車に乗せて連れていってくれた。


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 小学校に入るとその幸せな生活はなくなった。お父さんとお母さんはまるで人が変わったかのように僕に「勉強をしなさい」と怒鳴りつけてくる。テストで99点を取って皆から褒められても、帰ったらその紙はゴミ箱に入れられていた。


 外に遊びに行く時間なんてなく、学校以外はずっと部屋で勉強をしていた。お父さんは家庭教師を何人も呼んで僕を見張らせた。僕は怒られるのが怖くて勉強を頑張っていたら、テストで簡単に満点が取れるようになって、点数について怒られることは減った。


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 中学生になっても、親からの支配は緩まなかった。家庭教師からの視線を背中で感じながら問題を解いていた。悲しみや怒りが混ざって、式を書く手が震えることもあった。でも僕は静かにその手で答えを書いた。


 クラスメイトはみんな休日に電車に乗って友達と遊びに行っていた。それが本当に羨ましかった。僕は電車に乗ったことがない。「あそこに行きたい」といえば、お父さんがすぐに車で連れていってくれたから電車に乗る機会がなかった。僕は一度でいいから電車に乗ってみたいと思った。


 僕はお父さんに「塾に行きたい」と言った。なるべく遠くて、お父さんが仕事の時間に通える塾を選んだ。でもお父さんは「家庭教師がいる」と言って塾に行かせてくれなかった。


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 高校生の時、進路を決める必要があった。僕は内心早く自立をしたかったが、お父さんは「東大に行きなさい」としか言わなかった。お母さんもそれに賛同して僕の進路は「東大志望」になった。


 僕は死ぬ気で勉強をした。もし受験に落ちれば何をされるかわからないから。寝る時間を削ってでも勉強をした。それなのに、落ちた。


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 お父さんとお母さんは合否を聞いたあと僕に優しくなった。お菓子やおもちゃをいっぱい買ってくれた。


 僕は家から飛び出した。見捨てられたと感じたかもしれないし、こんな親こっちから逃げてやると思ったのかもしれない。僕はとにかく、もう二度と会わないように走り続けた。


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 よし、死のう。


僕は駅のホームに立っていた。大学に落ち、親に見捨てられ、こんな人生に価値はないと分かった。僕がずっと夢見ていた電車に殺されたいと思った。電車はカタルシスだと信じた。だから僕はここに立った。


「拝啓、電車へ


僕はあなたを尊敬しています。

あなたは人を運ぶという役目を果たすことができるからです。

僕はあなたに乗りたいと思っても、その夢は叶いませんでした。

だから、最後に僕のお願いを聞いてください。」


電車が来る合図が聞こえた。僕はそっと、一歩を踏み出した。


「僕を殺してください。


僕はあなたに殺されたいです。

僕の夢を叶えてください。」


真横にくる電車のブレーキ音がうるさく響いて、誰かの叫び声がうっすら聞こえる。


「自殺を決めたとき、生きてると実感しました。」


僕の体は物凄い衝撃で空へ打ち上げられた。


「そして神様、お願いです。」


線路に僕の体が強く打ち付けられる。


「来世では、田舎で静かに生まれたいです。」

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