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六十三話・遥かなるダンジョン

  

 一行は連結トンネルに入り、アテンの園を目指す。


 「お祖父様、本殿で何があったのか教えて頂けるかしら?」

 道中、ヒロコは昨夜の出来事を尋ねた。


 「人類救済の使命と宇宙の真実を垣間見た」

 「宇宙の真実ですって?」

 「宇宙には始まりも終わりも無く、永遠の過去から始まり、未来永劫果てしなく続く。そして、全宇宙はシンプルに遍くプラズマから構成されており、ミクロからマクロまで全てが統一されたマトリックス上にある言うこと」


 興味ありげに耳を傾けていた玲が話しに入ってきた。

 「この際、バリバリの科学者であるヒロコさんとライオンさんの宗教観を是非に拝聴したいっす?」


 「サムセィング・グレートはダルマ(宇宙律)を創造した根源的なもので、数理の中にのみ憶測されるの。万物の根源は数であり、実在はイデアの影にしか過ぎなく、イデアは数理そのものであるって。純粋無垢の普遍な数学。精妙な宇宙その物を創造した意識。何と言ったら良いのかしら…」


 カーニャが口を挟んだ。

 「それって、ピタゴラス数理教じゃなくって?」

 「ピタゴラス?カーニャさんが古代ギリシャの哲学者を御存知だなんて!」


 「ガイアとテラは元々同一なんや。二つの惑星は同一の遺伝子を有し、相似の歴史を有している」と、牧野が言葉を挟む。


 「ヒロコは蚕豆(そら豆)が嫌いかしら?」

 「いいえ。特に好きでもないけど……?」


  カーニャはくすりと笑った。「古代のピタゴラス数理教徒はビンラーポンと呼ばれたの。意味は【蚕豆を嫌う人たち】って。当時の学者たちは俗語で虚数を蚕豆と呼んでいたけど、彼らは異常なほど虚数を忌み嫌ったそうよ」


 バキ老師が「乞う御期待。知の殿堂であるテラのムセイオン大図書館大学院に行けば、求める物が見つけれるでしょう」と、締め括った。

       

            … …    …  …


 迷路のように幾重にも分かれた途を、モルモネの導きで迷うことなく突き進む。

 やがて、一行は困難に突き当たった。大量の土砂が前途を塞いでいたのだ。

 モルモネはピノマントと共に小さな輪の器具を使い各所に当てては計測し、徐に告げた。

 「如何しょうもみゃあネ。ばっちり向こうまでが埋まってらー」


 一旦、五キロほど戻ってから狭めの途に入り込んで半キロ、再び進行を止める。

 大きな岩が行く手に立ち塞がっていた。


 するとモルモネは緑人の頭頂に止まり、得意そうに羽ばたき「我が力を!」と、見得を切る。


 上半身の緑衣を剥いだピノマントが隆々とした筋肉を誇示してから、大岩に両手を当てて怪鳥の如き気合を発した。

 大岩はゆっくりと前方に転がり、道を開いた。


 モルモネは「畏れ入ったか、この力!見たか我が威力!」と、喚きながら騒がしく飛び回った。



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